
体育祭のテント30張り、その舞台裏
教育者の目線#74
9月上旬。市内の中学校では体育祭・文化祭の真っ最中だ。
実家へ向かう途中、中学校のグラウンドが見える。昨日まで何もなかった場所に、今日は30張り近いテントが並んでいた。
この学校は各学年5クラス。体育祭は5色対抗なので、各色の控え場所だけでも4張りずつ必要になる。それだけで20張り。本部席、来賓席、救護席を合わせると30張り近くになる。
保護者席までテントを用意する余裕はない。
テントは一張り10万円ほどする。学校が備品として持っている数には限りがあるので、不足分は校区の小学校や公民館から借りてくることも珍しくない。
昔は、先生の指導のもとで生徒がテントを組み立てていた。陸上部の生徒は大会のたびに立て慣れているので、作業も手際がよかった。
PTA役員が集まり、生徒や教員と一緒に汗を流していた時代もある。
ところが最近は、「けがをすると危ない」という理由で、生徒には扱わせないようにという要望や指示が増えた。
そうなると、時間を融通しやすい校長先生、教頭先生、施設員さんが中心になって20張り以上を立てることになる。学校によっては丸一日がかりの作業だ。
しかも仕事は立てるだけでは終わらない。
終われば片付けがある。雨にぬれたシートは乾かし、風で曲がった骨組みは修理する。最近のテントは部品が一体化して扱いやすくなったが、それでもパーツをきちんとそろえて保管しなければ、次に立てるときに部品が足りないということも起きる。
これだけ時間をかけて準備しても、使うのは3日か4日。終わればすぐ解体だ。
さらに悩ましいのが天気である。
9月は暑さだけでなく、天気が読めない。体育祭当日は午前6時には実施するかどうかを判断しなければならない。
中止なら文化祭との日程を入れ替えたり、通常授業に切り替えたりする必要がある。給食は止めているので、生徒は弁当持参だ。延期になれば保護者のお弁当作りももう一日増える。
誰もいない教室にエアコンをかけ、弁当を保管する。
ここまで準備をしても、実はテントの中にいる生徒はほんの一部しかいない。
多くの生徒は係の仕事で動き回ったり、競技に出たりしているからだ。
それでも保護者からは「熱中症が心配だからテントを増やしてほしい」という声が届く。
その気持ちはよく分かる。でも、実態と準備の手間、そしてコストを考えると、どこまで応えられるかは本当に難しい。
体育祭が雨で延期になると、「校長先生は雨男ですね」と冗談を言われることもある。
でも、体育祭の日程は3月頃には決まっている。天気だけは校長にもどうすることもできない。
こうした事情もあって、最近は市営体育館や県営体育館で体育祭を行う学校も出てきた。
ただ、それはそれで実施できる種目が限られたり、用具をすべて運搬したり、生徒の移動をどうするかという新しい課題が生まれる。
体育祭は、当日だけを見れば一日の行事だ。
けれど、その一日のために学校では何日も前から準備を重ね、多くの人が裏方として動いている。
保護者のみなさんには、「学校はできる限りのことを考えながら実施している」ということをもうちょっと理解してもらえたらありがたい。