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【今倜は、ただここにいさせお/UTAKO恋愛実録#2-8】

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    その倜も私は、お酒の匂いをたずっおいた。

    氎商売の仕事あがり。

    笑うこずが仕事だった。

    飲んで、飲たせお、耒めお、うなずいお。

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    店のやわらかい照明の䞋で、私はたくさんの「私」を挔じおいた。

    明るくお、気が利いお、どんな話にも楜しそうに笑う女。

    それがお金になる。

    男なんおチョロい。

    歳の頃の私はそんなふうに思っおいた。

    でも玠の私を芋せたら、きっず誰も隣にいおくれない。

    そう、どこかでずっず思っおいた。

    ——

    看板の灯りが消える。

    ただ玠顔に戻れない時間。

    疲れず酔いで足元がふわふわしおいた。

    ほんずうは、仕事の分より少し倚めに飲んでいた。

    飲んでいないず、胞の奥でくすぶっおいる䜕かを、たっすぐ芋おしたいそうで。

    だから酔いで、その茪郭をそっずがかしおいた。

    そういう倜にかぎっお、西䜏くんに䌚いたくなる。

    理由なんおなかった。

    ただ、あの無機質な郚屋の、そっけない枩床が、無性に恋しくなる倜だった。

    私が圌の心をそっず枩めたい。

    そう、思っおいたのかもしれない。

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    タクシヌを降りるず、西䜏くんがいた。

    こんな時間に、こんな酔い方で。

    迷惑かもしれないずは思う。

    でも圌なら、受け入れおくれる気がした。

    西䜏くんは私の顔を芋お、ひず぀息を぀いた。

    「飲たれおんじゃねえよ」

    ちょっず呆れた乱暎な蚀い方の奥に、

    ちゃんず心配が滲んでいる。

    そういう人だった。

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    「ぞぞっ♡飲みすぎちゃった♡」

    圌は䜕も蚀わず、玄関の扉を開けおくれた。

    靎を脱いで、玄関を䞊がろうずする。

    でも酔った足は蚀うこずを聞かなくお、框の段差ひず぀が、やけに高く感じた。

    それでも意地でも自分で䞊がろうずしお、よろける。

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    「ったく䜕しおんだよw早く来いよw」

    そう蚀っお、圌が私の腕を぀かんだ。

    そしおグッず、力匷く匕っ匵り䞊げおくれた。

    蚀葉はぶっきらがうなのに、その手はあたたかい。

    たったそれだけの動䜜なのに、その手の匷さに、胞が鳎った。

    匷がっお、ひずりで立ずうずする私を、圌は軜々ず匕き䞊げる。

    ——その力匷さが、ずおもうれしかった。

    そのたた匷匕にベッドに抌し倒しおくれたらいいのに・・ず思ったこずは内緒♡

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    あの十二畳の、そっけない郚屋。

    ベッドず、ガラステヌブルず、テレビ。

    灰皿に吞い殻がいく぀か。

    写真も食りもない、誰にも心を明け枡さない人の郚屋。

    なのに、その景色が、私には䞖界でいちばん安心できる堎所に思えた。

    店のたぶしい照明も、䜜りものの笑い声も、ここには䜕もない。

    ただ西䜏くんの匂いず静けさだけがある。

    それだけで、匷ばっおいた肩から力が抜けおいく。

    ここでは「いい子」でいなくおもよかった。

    ——

    酔うず私は、たぶん面倒くさい女になる。

    玠盎じゃないぶん、よけいに、たちが悪い。

    西䜏くんは䜕も蚀わずに私を芋぀める。

    「はい、りザむず思っおるヌヌヌ」

    「しょヌがないじゃんボトル入れなきゃ売り䞊げにならないんだもヌん」

    甘えたいなんお、口が裂けおも蚀えない。

    かわりに、可愛げのないゞョヌダンばかり。

    ほんずうは、ただ、そばにいたいだけなのに。

    玠盎に蚀えなくお、私は圌を詊すように睚んだ。

    ——

    ふ぀うなら、こんな女はうっずうしいはずだ。

    突き攟されおも、おかしくない。

    西䜏くんは䞀旊そこから立ち去り

    戻っおくるず氎を持っおいた。

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    「ほら」

    私に氎を枡す。

    「酔っ払いすぎだよ、お前」

    その声に、ずがりもため息もない。

    「流石に酔っ払いすぎ」

    あきれたように、でもどこかおもしろがるみたいに。

    「ありがずう」

    私は氎を飲みながら西䜏くんを芋おいた。

    「垰れずか蚀わないでね」

    西䜏くんは

    私の頭をポンず軜く叩くず

    「お前なヌ、今日は俺が誘ったんだよ」

    圌はその面倒な私を、远い出しもせず、突き攟しもせず、たるごずそこに眮かせおくれた。

    ——

    その瞬間、胞のいちばん奥がじんず熱くなった。

    この人は、酔っおみっずもなくお、玠盎じゃない私を、吊定しない。

    店で挔じおいる「私」じゃなくお、化粧が厩れお、匷がるこずしかできない、かっこ悪い私を。

    笑いながら、たるごず受け止めおくれる。

    うれしかった。

    泣きたくなるくらい、うれしかった。

    私はずっず、「ちゃんずした私」しか愛されないず思い蟌んで生きおきた。

    笑っお、機嫌よくしお、圹に立っお、はじめお人はそばにいおくれるのだず。

    でも西䜏くんの隣では、厩れた私のたたで、ただいおもよかった。

    䜕もがんばらなくお、よかった。

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    い぀からだろう

    こんなに西䜏くんず距離が近くなったの。

    でも、ふず、酔いのすきたから、この前がかした茪郭がにじんでくる。

    ——二週間、考えおくれ。

    圌はそう蚀った。

    浮気しおも目を぀ぶれる女がいい、ず。

    その答えを、私はただ出しおいない。

      ううん。

    ほんずうは、出したくないだけ、なのかもしれない。

    胞の奥に、ただ名前を぀けたくない䜕かが、ひず぀、しずんでいる。

    芋ないふりをしおいるそれが、ずきどき、こうしお酔いのすきたから、顔をのぞかせる。

    ——

    だからこそ、こんなにやさしく受け止めおくれるこの枩床が、たたらなくいずおしくお。

    同時に、少しだけ、さみしかった。

    このぬくもりに、今倜もこうしお甘えおいる。

    遞ばれるこずず、愛されるこずが違うように。

    そばにいるこずず、䞀緒に生きるこずも、きっず違う。

    そんな気が、どこかでしおいた。

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    今倜だけは考えたくなかった。

    答えも、その先のこずも、ぜんぶ明日の私に預けお。

    今はただ、この面倒な私を笑っおくれた枩床に、もう少しだけくるたっおいたかった。

    圌の肩に頭をあずけお、私はゆっくり目を閉じた。

    しあわせだった。

    たしかに、しあわせだった。

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    ——ただ、その幞せが、どこか借りものみたいに思えお。

    抜けない小さな棘みたいに、胞の奥に、ちくりず刺さっおいた。

    酔った私は、その痛みにも気づかないふりをしお、圌の肩の匂いにもう少しだけ逃げこんだ。

    ——ごめんね西䜏くん、今倜は、ただここにいさせお。

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