
「見ないで」と言われても
昔話の「鶴の恩返し」では、おじいさんとおばあさんに助けられた鶴が娘の姿となって現れ、布を織って恩返しする。娘は部屋の中を絶対に見ないでと頼むが、おじいさんは覗いてしまう。おじいさんが見たのは布を織る娘ではなく、無残に羽根が抜けた鶴だった。鶴はわけを話し、見られてしまったのでここにいることはできないと言って去っていく。
昔話のおじいさんの場合は、娘が痩せていくのが心配になったために覗いてしまったのだが、そんな心配のない普通の状況だとしても、わざわざ「見ないで」と言われれば、よけいに見たくなっても不思議ではない。
ジェットコースターは恐ろしいけど乗ってみたい、恐怖映画は怖いけど観てみたい。そういう怖いもの見たさに似ている。
クリエイターのかたが読者を気遣い、記事の冒頭などで「残酷な描写があるので、デリケートなかたはスルーをおすすめします」とか「汚い表現が含まれているのでご承知おきください」などといった一文を入れたものを目にしたことがある。
私はそういう注意書きがあっても読み進めるが、ほかの人たちはどうなのだろうと興味がわく。
注意書きを読んだ時点で読むのをやめる人もいるだろう。あるいは、その先を読まなければ、ほんとうに残酷なのか汚いのか、どの程度のレベルなのかといったことがわからないからとりあえず読み進めるという人もいよう。途中でいやだと感じたらその時点でやめればいいのだ。
私もそういう趣旨の一文を添えたことがある。「ぷるんぷるんと」という記事のなかで以下のような一文を添えた。
『下ネタに対して拒否反応があるかたは下の☆☆☆から先を読まないでください(こんなことを書けばよけい読みたくなるかもしれないが)』。
というものだ。これの効果は不明だが、たぶん10人中9人は無視して読み進めただろうと推測している。
括弧内に記したように、こんな一文を添えればなおさら読みたくなってしまうのではないか。ましてや、その記事の内容は怖いものや汚いものではなく、下ネタなのだ。
私はさらに、その一文に続けて次の言葉を添えておいた。
『それでも読むという場合は批判的なコメントを入れないようお願いします』
この一文の効果か、批判的なコメントはなかった。もっとも、下ネタといっても猥褻などとはほど遠いコミカルなもので、しかも私自身を材料にしたものだから当然といえば当然だが。
私は、すました顔の紳士であろうと淑女であろうと、性やそれに準ずるような話には興味があるはずだと思っている。もちろん、表現のしかたや内容によるけれど。
私はこれまでいくつも下ネタを使ってきた。もっとも卑猥なのは『昼さがりの魔女』だが、これをおもしろいと絶賛してくれた人もいれば避けた人もいた。人の好みは十人十色、千差万別だ。
参考までに付記すると、スキをたくさんいただいたばかりでなく、ビューに対する率も高くて好評だった。
ちなみに、『昼さがりの魔女』には注意喚起の一文などは入れなかった。
「ぷるんぷるんと」もそうだが、例にあげたほかのクリエイターさんの場合も含め、注意喚起の一文を入れた効果はどんなぐあいだろうか。入れること自体は読者に対しての親切心なのでいいことだと思う。
その一文から先を読むのをやめた人、かまわず読んだ人の状況を知りたいと、いまだにつきまとう杉花粉を恨みながらそんなことを思う昨日今日。