
イスラエルの日常をつづった『乳と蜜の流れる地から』めちゃ面白い
先日のニー仏さんと山森みかさんの対談がとても面白かった。山森さんはもとは旧約聖書学の専門家であり、1986年からほとんどの期間をイスラエルで過ごし、その間にイスラエル人と結婚し二人のお子さんをもうけておられて、テルアビブ大学東アジア学科で日本語講師をされている。
内容は山森さんの『「乳と蜜の流れる」から』を主題にイスラエルの日常、宗教のあり方を語るというもので、山森さんのお話が非常に興味深く矢も盾もたまらずポチってしまったのである。電子書籍とは便利なもので対談キャスを聞いている間にダウンロードして終わるやいなや読み始めることができた。
このところ一部界隈で話題になっているのは、イスラエルはすでに一人あたりGDPでは日本を上回るほどの先進国(これは近年の円安のせいでもあるけど)であるにもかかわらず出生率が3越えをキープしているからである。その答えは本書でたくさん見つけることができた。以下は著者の意見というわけではなく、私の主観も込みということに留意しつつ読んでいただきたい。もし少しでも気になるなら本書を手にとって確認してほしいと思う。
一つには宗教的規範が確立されていることである。私にとっては意外なことに現在はイスラエルではあまりユダヤ教に関心のない世俗派が主流とのことである。しかし社会にユダヤ教の価値観が根付いていてそれは世俗派といえど無視できないか、内面化されているようだ。だから人生に光をもたらすのは子供であって、子供を持つのは当然すぎてそこに疑問をもたいないようだ。
またユダヤ教では女子は12歳、男子は13歳で成人して皆でこれを祝うという。世俗派も、キリスト教に興味のない日本人がクリスマスを祝うがごとく、お祝いするそうである。さらに驚くべきことに小学校高学年にもなると異性のパートナーがいるべきという風潮があり多くの子供たちがそれを実践しているというのである。こうした規範というか風習は出生率に大いに影響を与えていると考えられる。
またほとんどのイスラエル人は18歳になると兵役につく。これは第二の成人式ともいうもので、兵役を終えると見違えるほどおとなになって戻ってくるらしい。成人というか共同体の成員としての自覚を促す効果は相当高いものと思われる。
また予備役の招集を含む兵役が共同体の強化に役立っているという。兵士がヒッチハイクしようとしていたら乗せてあげる、残された家族への隣人らの気遣い、子供たちと兵士の交流、予備役で呼ばれた年配者と若い兵隊の共同生活などなど、共同体意識がいやでも高まる仕組みが用意されているのだ。
こういった宗教的規範と共同体意識が出生率の維持に貢献しているということが随所から読み取れた。また共同体の感覚をもたらす軍務は、周辺諸国との緊張関係からくるものであり、それは人口が減ると滅ぼされるという意識にもつながっていると思われる。
というような出生率云々のことを置いてもイスラエルについての読み物として単純に面白い。ユダヤ教の慣習についての大衆の認識、アラブ系の人々のこと、イスラエルの大学生の生活、1990年代のパレスチナとの和解ムードと2000年以降のその反転、国家と国民のあり方の日本とイスラエルの違い、、など勉強になることはたくさんあった。というわけで多くの人に本書をおすすめしたいのである。
そしてこれは勝手なお願いであるが、本書の続編的なものを読んでみたいものである。