
『劇場版モノノ怪』考察① 「蛇神」とは何か
本日もお疲れ様です。緋星です。
『劇場版モノノ怪』三部作が完結したということで、しばらくこの作品について考察してみようかと思います。
今回は『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』に登場する「蛇神」について。
あくまでも私個人の意見ですので悪しからず。
公式設定資料集が発売されたら答え合わせをしようかと思います。
凡例
作中に登場するモノノ怪を指す場合は括弧で表記する(例:「蛇神」)
劇場版の各章を指す場合は二重括弧と章の番号で表記する(例:『第三章』)
モノノ怪「蛇神」とは
「蛇神」は『第三章』の副題であり、作中に登場するモノノ怪です。
「蛇神」の特徴
「蛇神」の特徴として、以下のことが挙げられます。
三角の鱗のような物がある
11代目天子の御台所である幸子の男児出産を期に、大奥に姿を現す
大奥に対して強い憎しみがある
御水様の水を超えることはできない
「蛇神」の核(真)
「蛇神」の核となったのは3代目天子の御台所。
彼女は150年前に天子の跡継ぎを産んだと伝わっています。
しかし、「蛇神」が見せた過去の映像では全く異なる様子を見せます。
彼女は天子との間に男児どころか、子を産むことはありませんでした。
また、天子に側室を宛てがい跡継ぎを産ませる“大奥”というシステムそのものに否定的な態度であり、それを提唱する天局とも対立しています。
すなわち、3代目天子の御台所に関する話は嘘、カバーストーリーだったのです。
「蛇神」の元ネタを考える
鑑賞後、私は「蛇神」に関して“安珍・清姫伝説”の清姫だと思いました。
その理由を纏めてみます。
①三角の鱗
三角を連ねた模様を魚や龍蛇の鱗に似ているとして鱗紋と呼びます。
能では鬼女や蛇を表現する際にこの模様の衣装を纏うそうで、『道成寺』ではシテ(主役)側の役者は鱗紋の衣装と般若の面をつけるとのことです。
②嘘と偽り
作中、「蛇神」が姿を現すタイミングには共通点があります。
それは“御台所が嘘により蔑ろにされている”場面です。
常磐井とカワは幸子に「取り替え子を実子と認知しろ」と強要してきます。どれだけ2人が幸子を思い考えていたとしても、当の幸子からすれば自分の意見を無視され嘘を強いられている状況に他なりません。
藤巻は「娘も取り替え子ではないか」と幸子を尋問します。今回が嘘なのだから、関係者が同じ前回も嘘ではないか、という理屈です。そして、跡継ぎをフキの娘に変更するよう進言します。
幸子はありもしない嘘を疑われ、天子の子である娘すらも大事にされないという屈辱的な立場に立たされます。
3代目天子の御台所も嘘に苦しみました。
「己のみを愛して欲しい」という本心を偽り、大奥の営みから目を逸らし続けました。
しかし天子は子どもを儲けることなく、病で亡くなりました。
それで天子の血筋が絶えただけならまだしも、天局は天子と無関係の赤子を跡継ぎとして据えるという決定を下し、その母の役目を御台所に負わせようとします。
御台所の苦痛は無意味なものにされました。天子の実子でなくてもいいのなら、この苦しみは何だったのだろうかと。
彼女の死後、彼女の事蹟も嘘の物語が伝わります。
“安珍・清姫伝説”の清姫は、「必ず帰りには立ち寄る」と安珍に嘘を吐かれます。
それを裏切りと感じた彼女は蛇体に変じ、安珍を鐘ごと焼き殺してしまうのです。
つまり、嘘を吐かれることそのものがこのモノノ怪の発現のトリガーになったとも考えられます。
まとめ
以上のことから、「蛇神」は清姫をモチーフに据えて構築したモノノ怪だと考察します。
そして御台所と偽りの跡継ぎを巡る問題が生じた今回になって、蛇神は大奥を滅ぼさんと姿を現したのだと思います。
ちなみに娘の時には問題はなかったのかと考えましたが、やはり男児ではなかったこと(女児より男児の方が優先的に跡継ぎになるようなので)、御水様が完全な状態だっため「蛇神」が大奥に入れなかったことが要因かなと思います。