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【映画感想・ネタバレ注意】『mentor』は、変わることを喜べない

    いやー、なかなかクセが強い笑
    どんな感情になったらいいのやら笑
    まずはあらすじを。

    ある日、龍之介と拓海という2人の少年の無邪気な花火遊びが、アパート火災を引き起こした。アパートは全焼し、巻き込まれた住人の埜本は妻子を失い自身も全身に火傷を負った。その日を境に、龍之介と拓海の時間は止まってしまう。15年後、龍之介は罪の意識に蓋をし、アーチェリーのオリンピック日本代表候補として前に進もうとしていた。その一方で、拓海は罪の記憶から抜け出せず、陰鬱な日々を過ごしていた。そんな2人の前に、埜本が突然姿を現す。2人に恨みの言葉をぶつけることもなく優しく接する埜本に、龍之介はどこか違和感を抱き、拓海は救いの光を見いだす。やがて埜本は、拓海にとって心の拠りどころとなるメンターのような存在となっていく。

    映画.com


    謝罪の先に見えた、変わることへの違和感

    吉田恵輔監督の『mentor』を観ました。

    率直に言えば、どういう感情になればいいのか、反応に困る作品でした。

    物語は、観客が「こうなるだろうな」と思う展開を何度も外してきます。ブラックコメディに片足を突っ込んでいるようにも感じられ、笑っていいのか、それとも真剣に受け止めるべきなのか。観ている間も、観終わったあとも、どう反応すればいいのか迷いました。

    特に気になったのが、拓海の謝罪です。

    謝罪すること自体は、悪いことではありません。自分の過ちを認め、相手に向き合うために必要なことです。

    ところが、拓海の謝罪を見ていると、最初は誠実なものに感じられたはずなのに、だんだん違う印象に変わっていきます。土下座の仕方にも、ふざけているのではないかと思ってしまうところがありました。

    もしかすると、拓海は謝罪すること自体を楽しんでいるのではないか。そんな疑念まで浮かんできます。

    謝罪によって状況が変わり、周囲との関係が変わり、さらには本人まで変わってしまう。その変化が、僕には気持ち悪く感じられました。

    社会では、自分の考えを改めたり、過ちを認めて変わったりすることは、成長として前向きに捉えられがちです。でも、変わったという事実だけで、以前より良くなったと言えるのでしょうか。

    僕は『mentor』を観て、『四月の余白』と対になるような作品だと感じました。

    『四月の余白』が、変わることに希望を見いだす作品だとすれば、『mentor』は、変わることのすべてが良いものなのかと疑問を投げかけてくる作品のように思えたからです。

    もちろん、これはあくまで僕の解釈です。監督が最初から二つの作品を対になるものとして作ったのかどうかは分かりません。

    ただ、両方の作品を観たことで、人が変わることには希望がある一方、その変化が必ずしも良い結果につながるとは限らないのだと考えさせられました。

    もう一つ、今回の鑑賞で嬉しかったことがあります。

    それは、吉田監督の映画が、一本ずつ独立した作品でありながら、同じ世界の中につながっているように感じられたことです。

    劇中には、何度か沼津駅のロータリーが登場します。『ミッシング』でも、行方不明になった娘のチラシを配っていた場所です。

    さらに、失礼なことを言う子供に対して、母親が「みらいの里に入れるよ!」と言う場面もあります。『四月の余白』を観ている人なら、ここでも「おっ!」となるのではないでしょうか。

    沼津市出身の磯村勇斗さんが出演していることも、こうしたつながりが生まれる理由の一つなのかもしれません。

    それでも、僕が嬉しかったのは、過去作の小ネタを見つけられたことだけではありません。

    『ミッシング』でチラシを配っていた場所が、別の映画にも登場する。『四月の余白』に出てきた施設の名前が、別の映画では何気ない会話の中に出てくる。

    そう考えると、映画の中で描かれた出来事が終わっても、その街で暮らす人たちの日常は続いているように思えます。僕たちが観ていないだけで、あの映画の登場人物たちは、今もどこかで生活しているのかもしれません。

    僕は、こうしたつながりを「吉田恵輔ユニバース」と呼びたくなりました。

    大がかりな設定や説明があるわけではありません。街の風景や施設の名前が別の作品にも何気なく登場する。それだけで、一本ずつ独立していた映画が、実は地続きだったように感じられるのです。

    これから吉田監督の新作を観るときにも、見覚えのある場所や名前が出てくるのではないか。そんな楽しみが増えました。

    吉田監督の最近の作品を観ていると、物語の終盤に、小さいながらも希望を感じさせるものが置かれているように思います。苦しい状況を描いていても、最後には少しだけ前を向けるような気持ちになる作品がありました。

    ところが、『mentor』では、希望を感じられる部分がありながら、どうにも手放しでは喜べませんでした(笑)。

    人が変わることには希望がある。でも、その変化が本当に良いものなのかは、簡単には判断できない。そんな作品だからこそ、最後に残った希望にも、素直に喜びきれないものがあったのかもしれません。

    ただ、ここで物語の詳しい展開を説明するつもりはありません。この作品は、ネタバレを知らずに観ることも大切だと思うからです。

    これから観る人には、できれば何も知らずに観てほしい。

    そして、僕が感じた戸惑いや、手放しでは喜べない希望を、自分の目で確かめてみてほしいです。


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    シネザートさんにて。結構席は埋まっていました🔥

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