
書かない人の休日
10月18日(日)18時10分。
山田太一『冬の蜃気楼』を読了。
薄めの文庫本なので、この週末、つまみ食いするように読んで、今、読み終えた。
こういう人が「書く人」なんだろうな、と納得した。物語としての完成度以上に、描写力や表現力がすさまじい。
解説は久世光彦。その中で、山田太一と寺山修司が親友である事実に触れていた。
そういえば、数年前、書店でこのふたりの書簡集が出ているのを見て、うれしくなったのを覚えている。どちらも自分の好きな作家だが、個性はまったく異なる。そんなふたりが実は仲良しだったというのは、なんだか得をしたような気持ちになる。
この文庫も含めて、先日、実家に帰った際、僕は、中学から大学時代に読んでいた本や雑誌の一部を持ち帰った。
例えば、ナース姿の椎名林檎が表紙の『ロッキング・オン・ジャパン』(撮影は荒木経惟)。
小説の合間に読んでいたら、サニーデイ・サービスが『MUGEN』というニューアルバムを「100万枚〜200万枚」は売りたいと話していて、当時のCD市場の勢いを感じさせた。
残念ながら『MUGEN』は100万枚も売れなかった。しかし、読書のBGMとして聴いてみたら、やはりいぶし銀の名盤だった。
ジャケットデザインは小田島等。革新的で野心的でPOP魂あふれるデザイナー(ウォーホル好き)で僕も大好きだけど、分かりやすく売れセンのデザインを作るタイプの人ではない。そんな彼とずっと二人三脚でいまだに大ヒット曲を出す夢をあきらめないサニーデイは、やはりカッコいい。
今日は読書のほかに、部屋の大掃除や食材の買い出しなどをしていたら、あっという間に一日が過ぎていった。
今回、実家から持ち帰った本は、ほかに、荒俣宏『漫画と人生』、小林信彦『中年探偵団』『時代観察者の冒険』、つげ義春『ねじ式』、宮武外骨『新編 予は危険人物なり』、C.G.ユング『変容の象徴(上下)』。
なんというか、我ながら「自閉的読書のススメ」とでも言うべきラインナップである。
おかげで、当時とまったく色褪せることなく"それなり"に感動できている。自閉や独善には、時間や年齢を超越した普遍性があるような気がする。モラトリアム学生御用達のヴィレッジヴァンガードで、小説やエッセイのラインナップがなかなか変わらないのも頷ける。
これからカレーを食べて、風呂に入って、寝る前にスマホでTVerの『デザイナー渋井直人の休日』の第8話を観る予定だ。若者から見たオジサンはどこまでもキモいんだろうけど、どうせなら彼みたいにキモかわいく生きたいものだ。
最近、こんな具合に、別に書かなくてもいいのにやたらと書いていた人から、ただの書かない人の日常に戻りつつある。
さみしくないわけではない。
けれど、鮭が産卵のために川を逆流していたのが、川の流れに身を任せるようになったような、エントロピー増大の法則に素直に従っている妙な納得感もある。
書くのは、書く人たちにまかせればいい。
僕は、たまに「これなら自分しか書けない」と思ったときに、きまぐれに書けばいいのだ。
そう自分自身に言い聞かせていた日の夜に限って、あんな歌に出くわす。僕はスパナで後頭部をぶん殴られ、消火寸前の焚き火がまた静かに燻り始めた。