
トクだ値で駅弁の値札がやわらかく見えた日の朝
東京駅の改札を入り、まっすぐ崎陽軒のシウマイ弁当を目指した。
看板が見えてきて、数多く並ぶ中で正面左手に今日の主役が配置されている。
これだと歩み寄る。
しかし、ショーケース越しに目に飛び込んできたのは 「入荷は7:30」 の表示。
現在 6:40。乗る新幹線は 7:12 発。
どう計算しても間に合わない。
「期待が大きすぎた」
食べたかったシウマイ弁当、数日前から新幹線で弁当を開く自分を想像していたので、周囲に山ほどある駅弁がまったく選択肢に入らない。
ならば、と地下へ降りスタバへ向かう。
しかし見えてきたのはシャッター。
開店を調べると 7:00。待てば間に合うかもしれないが、少し不安なのでそのまま新幹線改札へ戻り、ホームへ向かう。ここまでで 2ダウン。
ホームの自販機で「ミル挽き珈琲」を見つける。
しかし価格は 400円超。
会社ビルの 100円台を知っている身には、どうしても迷いが生まれる。
「まーいいか、車内販売で飲もう」
そう思って着席したが、東京→上野→大宮を過ぎても販売員が来ない。
検索すると、「やまびこ」号は車内販売終了という冷静な事実が表示された。
今日乗っているのは、まさにそのやまびこ。
いつも選ぶのは、「はやぶさ」で車内販売あり。
今回はトクだ値でお得に予約した結果、思い込みが見事に裏目に出た。
まるで真正面のゴロをトンネルするようなエラーで 3ダウンで負の連鎖。
テーブル上にはメガネだけ。

食べない・飲めないとなると、余計に何か欲しくなる。宇都宮付近を通過しながら、ただ窓の外を眺め、寂しくつばをのみ込む。
幸い前後は空席で、グリーン車のリクライニングを遠慮なく使い倒して目を閉じる。
諦めの静けさの中でアナウンス。
「郡山駅停車では、在来線接続待ちのため2分停車します」
「なに!」
駅に滑り込む車窓から、ホームに自販機が背中合わせに2台。しかも9号車からは10歩圏内。
「やるしかない」
軽くダッシュして向かった1台目は、こんなときにタッチパネルも小銭入れもガムテープで封印され故障のようだ。
「まずいぞ」
焦りながら裏側のもう1台を見ると正常。
急いでSuicaをタッチし、ワンダ深煎り焙煎BLACKを購入して小走りで席へ戻る。
もし乗り遅れていたら漫画のような話になっていたが、なんとか 4ダウンを回避。
ホットではなかったが、深煎りの香りがふわりと鼻に抜けた瞬間、ようやく気持ちに余裕が戻ってきた。

残り45分ほど、やまびこの静かな車内で、深煎りブラックをゆっくり楽しむ。
期待していた駅弁も、スタバも、車内販売も手に入らなかった朝。
それでも、先程のわずか2分のチャンスが、“うまくいかない朝”を整えてくれた。
自販機も新幹線チケットもSuicaでタッチの便利さをいまさら実感できた。
目的地の仙台では用事よりも、一つ美味しいものを食べて挽回といきたい。