
【掌編小説】気まぐれな猫|拝啓文芸部
このお題に参加させていただきます。
Mr.Q様、素敵なお題をありがとうございます。
ワタシは真っ黒な体に黄色の目を持つクールガイだ。
「尾なし族」からは「ネコ」と呼ばれている。
今日は、ワタシの縄張りにいる「尾なし族」の紹介をしたい。
まず「尾なし族」のことは知っているだろうか。
一番の特徴は、前足を地面につかずに移動し、尾がないところだと思う。
水中で生活していたり、空を飛んでいるところは見たことがない。
体の模様は様々で、頭に生えている毛の色も様々だ。
しかも、同じ住処から出てきて同じ個体のはずなのに、日によって体の模様が違ったり、頭の毛の色が変わったりする。
不思議な生き物だ。
そうだ、紹介をするんだった!
まずは毎朝会う大きい尾なし族。
体の模様はいつも同じ。背中側と脚は真っ黒。胸元だけ白く、そこに赤い縦線が入っている。頭の毛は黒くて短い。
ワタシに気づくとじっと見てくる。敵意は感じないので、ワタシの方から近づいてみることもある。
少しワタシの頭を撫で、板を取り出してカシャカシャと音をさせると急ぎ足で去っていく。
…そういえば尾なし族は、あのキラッと光る板を持っていることが多い。
前に地面に落ちていたので近づいてみたが、ただの真っ黒な板だった。
なんのためにあれを持っているのか…うーん、不思議だ。
次に紹介する尾なし族は、ワタシの天敵と言っても過言ではない。
ヤツは小さいが素早く、力も強い。しかも声が大きくうるさい。
ワタシを見つけると「ネコだ~~~~!」と猛然と向かってくる。
運悪く捕まってしまうと、強く強く締めあげられる。あそこから隙を見て逃げ出すのが本当に大変なのだ。
柔らかく肉球のない手、キラキラする大きい目、高めの声でいい匂いがして…
いや、かわいいなんて思ってないぞ!
今日も通らないかと、道を監視しているだけだ。決して会えることを期待しているわけではないのだから。
最後に一番お気に入りの尾なし族を紹介しよう。
名前はおそらく「アラスズキサン」。
長くて覚えにくいが、いつも周りの同族にそう声をかけられているから、名前なのだろう。
なぜ気に入っているのか。理由は主に2つある。
1つ目の理由。撫でるのがとても上手なのだ。
「あ~、そこそこ」というところを、撫でてほしいときに撫でてくれる。
もう骨抜きだ。気づいたら喉を鳴らして仰向けになってしまう。
無理に撫でようとしたり、近づいてこないところも好きなところだ。
もう1つの理由は…アラスズキサンが持っている謎のペーストだ。
普段食べているネズミや小鳥ほど噛み応えはないが、何とも言えないおいしさなのだ。
あれは何でできているのだろうか。
わからないが食べたくて食べたくて仕方がない。毎日、アラスズキサンを探して縄張りを巡回するのが習慣になっている。
このように、ワタシは毎日、尾なし族に近づいてみたり逃げたりして過ごしている。これからも尾なし族の観察を続けていこうと思う。
紹介していたらお腹がすいてきたな。アラスズキサンを探しに行こう!