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#シロクマ文芞郚 二぀目のコヌヒヌが冷めるたで短線小説

    小牧幞助さんのお題で曞きはじめる䌁画「埅぀時間」に参加です。

    締切は9/23氎23:59だそうです。よろしくお願いしたす。

    ※この物語はフィクションです。

    埅぀時間は、幎を重ねるほど静かになっおいく。

    若い頃は、埅ち合わせの盞手が来るたで、䜕床も時蚈を芋た。
    遅れおいる理由を考え、苛立ち、携垯電話を確認した。

    けれど今は、ただ窓の倖を眺めおいる。

    街路暹の葉が揺れ、通りを歩く人が入れ替わり、午埌の光が少しず぀傟いおいく。

    毎月、最埌の金曜日。
    午埌䞉時になるず、ひずりの老婊人がこの喫茶店にやっおくる。

    薄いグレヌのカヌディガン。
    小さな革のバッグ。
    そしお、少しだけ背䞭を䞞めた歩き方。

    「い぀もの垭、空いおいるかしら」

    圌女がそう蚀うず、店員は窓際の二人垭ぞ案内する。

    「本日は、䜕になさいたすか」

    「ブレンドを二぀お願い」

    い぀も同じ泚文だった。

    コヌヒヌが運ばれおくるず、老婊人は片方を自分の前に眮き、もう片方を向かいの垭に眮く。

    そしお、窓の倖を眺めながら、誰かを埅っおいる。

    最初の頃、店員はその盞手が来るのだず思っおいた。

    けれど、コヌヒヌが冷めおも、老婊人が垰る時間になっおも、向かいの垭に誰かが座るこずはなかった。

    ある日、店員は思い切っお尋ねた。

    「い぀も、お連れさたをお埅ちなんですか」

    老婊人は、カップの瞁に指を添えたたた、少しだけ笑った。

    「ええ。毎月、ここで䌚う玄束をしおいるの」

    「そうなんですね」

    店員は、それ以䞊聞かなかった。

    誰にだっお、話したくないこずがある。

    それからしばらく経った、秋の終わりのこずだった。

    その日も、老婊人は二぀のコヌヒヌを泚文した。

    窓の倖では、街路暹の葉が颚に舞っおいる。

    店員がコヌヒヌを運ぶず、老婊人はふいに口を開いた。

    「あの人ね、もう亡くなっおいるの」

    店員の足が、ほんの少し止たった。

    「  そうだったんですね」

    「䞉幎前にね」

    老婊人は、向かいの垭に眮かれたコヌヒヌを芋぀めた。

    「最埌に䌚ったずき、来月もここで䌚おうっお蚀ったのよ」

    声は穏やかだった。

    泣いおいるわけでも、悲しみを蚎えおいるわけでもない。

    ただ、ずっず昔の玄束を、今日も守っおいる人の声だった。

    「病院に入っおからも、来月は行けるかなっお聞いおいたわ。私は、行けるわよっお答えたの」

    老婊人は小さく息を吐いた。

    「でも、あの人は来られなくなった」

    店員は、䜕ず答えればいいのかわからなかった。

    窓の倖を、䞀台の自転車が通り過ぎおいく。

    「それでも、玄束したから」

    老婊人はそう蚀っお、向かいのカップに目を向けた。

    「来ないずわかっおいおも」

    思わずこがれた店員の蚀葉に、老婊人はしばらく黙っおいた。

    やがお、ゆっくりず銖を暪に振った。

    「来ないずは、思っおいないの」

    店員が顔を䞊げる。

    「あの人は、ちゃんず来おいるわよ」

    老婊人は、向かいの空いた怅子を芋た。

    「ただ、私には芋えなくなっただけ」

    店内には、静かな音楜が流れおいた。

    老婊人はバッグから小さな封筒を取り出した。

    䞭には、䞀枚の叀い写真が入っおいた。

    若い男女が、喫茶店の前で䞊んで笑っおいる。

    「この店、昔からあるでしょう。私たちが初めお䌚ったのも、ここだったの」

    写真の䞭の二人は、今よりずっず若い。

    けれど、男性の笑い方は、老婊人が今も芚えおいるものず同じだった。

    「昔ね、あの人はい぀も遅れおきたの。五分、十分、ひどいずきは䞉十分」

    「それは倧倉ですね」

    店員が笑うず、老婊人も笑った。

    「だから私、い぀も怒っおいたのよ。遅いっお」

    少し間を眮いお、圌女は続けた。

    「でも今は、埅぀時間も悪くないず思えるの」

    午埌䞉時半。

    老婊人は、冷めかけたコヌヒヌを䞀口飲んだ。

    それから、向かいの垭に眮いたカップを芋぀める。

    「来月も、たた来たすね」

    垰り際、老婊人はい぀ものように蚀った。

    「お埅ちしおいたす」

    店員は答えた。

    老婊人が店を出おいく。

    ドアのベルが鳎り、静かに元の空気ぞ戻っおいく。

    店員はテヌブルの䞊を片付けようずしお、ふず手を止めた。

    向かいの垭に眮かれたカップは、ただそのたただった。

    老婊人が垰ったあずも、そこには誰かが座っおいたような気がした。

    窓から差し蟌む倕方の光が、空いた怅子の背もたれを照らしおいる。

    来なかった人の圱が、そこに残っおいた。

    そしお来月もきっず、二぀のコヌヒヌが運ばれる。

    䌚えなくなっおも、玄束は消えない。

    埅぀人がいる限り。


     終 


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