メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【創作童話】メーソン教授とりすのチェリー② (全10話)


    ①はこちらです♪



    ゆうびん屋は、部屋中をきょろきょろと見回さずにはいられませんでした。

    部屋には、思っていたよりもたくさんの電化製品があったからです。
    冷蔵庫が3台、電子レンジは5台もならんでいます。
    それにまだ暑いというのに、こたつが2台、ストーブが4台、部屋に入りきらずに柱をまがったところには、そうじきが6台。

    天じょうには蛍光灯がいくつもついているし、足もとには歩くのもやっとというほど、ドライヤーだの、ラジカセだの、カメラだの、さまざまなものが並んでいるのですから、これじゃあまるで、電器店の倉庫にでも入ってきたとしか思えないほどでした。

    「こんなにたくさんのストーブとこたつを出して‥‥。メーソンさん、風邪でもひいたんですか?さっき、りんごも食べていたでしょう?」
    ゆうびん屋がききました。
    「風邪などではない。オレは元気だ」
    「ではなぜ‥‥?」
    「これは発明のためだ。何度も失敗を重ねたが、ようやくできあがったのだ」

    実は、メーソンが発明したのは、
    【絵に描いたものを本物にする機械】
    でした。

    部屋にたくさんある電化製品は、どれもメーソンがイラストを描いて、それを発明品の機械に入れて、出てきたものだったのです。

    ところがそのことを、メーソンは本当はだれにも言いたくありませんでした。
    他人に知られてしまっては、この機械をほしがる人が、たくさんおしかけてくるに決まっているからです。

    そんなことになったら、メーソンは何人もの人を相手にしなくてはならなくなります。
    落ちついて眠るひまさえ、なくなってしまうかもしれません。
    それだけは、どうしてもイヤでした。

    どんなにいい発明でも、他人には使わせずに、自分だけが使うことにこだわるのは、そんな理由もあるからなのです。

    「それにしても、電器屋さんを始められるほどたくさんありますね。冷蔵庫にそうじきも‥‥‥。そうか、メーソンさんの発明は、古いものを新しくつくりかえる発明ってわけですか!これはきっと、だれかからたのまれたんでしょう?」

    ゆうびん屋は言いましたが、メーソンは
    いちいち説明するのがめんどうだと思いました。

    そこでメーソンは、コホンとせきばらいをしただけで、機械の前に立ちました。

    「まあ、これを見なさい」
    メーソンは、てっとり早く自まんがしたいので、ゆうびん屋の前で、やってみせることにしたのです。

    まず、りんごのイラストをゆうびん屋に見せました。
    絵に描いたりんごを、本物のりんごにかえるのです。
    これなら、何度も成功しているので自信がありました。

    他人の前でやるのは初めてなので、メーソンは少しドキドキしました。
    コピー機を改造した機械に、りんごのイラストをセットすると、あっという間に本物のりんごが出てきました。

    そして出てきたりんごを、ゆうびん屋の目の前でおいしそうに食べてみせました。

    『描いた絵が本物になる』というすごい発明が、ゆうびん屋に伝わると思いました。

    「どうだ、本物のりんごだぞ!まちがいない。それがこんな機械から出てくるのは、不思議だと思わないか?」
    「ええ、不思議ですね、メーソンさん」
    「そうだろう?」

    メーソンは、ゆうびん屋がこの発明品を、
    「すごい!」
    と、ほめてくれるものだと思っていました。

    ところが、ゆうびん屋の口から出た言葉は意外なものでした。
    「メーソンさんは、すばらしい手品ができるんですね」
    「なに⁈ 手品だと!」
    「ええ、たくさんの粗大ゴミをりんごにかえる手品なんでしょ?すばらしい手品ですとも。今日は見せていただけて、本当にうれしいですよ。しかけを知りたいなぁ。あっ、そうだ。今度はりんごじゃなくて、トランプやハトも出してくださいよ。こんなにすごい手品ですからね。きっとできますよ」
    ゆうびん屋は、どうにかしてメーソンと仲良くなろうと、ほめたつもりだったのです。

    けれども、メーソンにとっては、手品なんかじゃありません。
    メーソンは、ゆうびん屋にバカにされたと思って腹を立てました。
    「出ていけ!」
    とすごい声でどなって、ゆうびん屋を家から追い出してしまいました。

    「まったく、オレの発明を、その辺の手品といっしょにするとはなにごとだ!」
    「そうですとも」
    そう答えたのは、小さなしまりすでした。
    しまりすはチェリーという名前でした。

    ゆうびん屋が帰ったあと、しまりすのチェリーは、メーソンのお茶をもって部屋に入りました。
    「メーソン教授の発明はとてもすばらしいものです。それはわたしが保証いたします。わたしのどんぐりもたくさん出せるんですもの」
    「おお、チェリー。お前は信じてくれるんだな」
    メーソンは、満足そうにうなずきました。


    つづく

     
     
    40代の主婦。2006年に、童話「なんでも屋のみけねこ」を出版。2021年から、インスタと童話ブログで、絵本のあらすじと感想を紹介しています。

    あなたへのおすすめ