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Photo bykohrogi

【連続小説】ただ、友達として1(2/全3回)「決着をつけるために」

     商店街から脇道に入り少し歩いた所に、そのカフェはあった。感じのいい洒落た外観で、入口の扉には「本日11:00~12:30 貸切」という札がかけてある。

     同窓会の案内状を受け取った私は、出席するかどうかかなり迷った。
     それでも、西井が実行委員を務める以上、どうしても私に来てほしくないと思うなら、投函した振りをして私への案内状を廃棄し、届かないように手を回すことは可能だったはずだ。
     もちろん、「俺が出席する以上、避けられているお前は出席を遠慮しておけよ」という言外の思いがあるのかもしれないけれど。
     とは言え、同窓会には多くの出席者がいるのだろうし、顔を合わせたからと言って2人きりで深い話をすることにはならないだろう。
     会っても、まるで知人の知人くらいの態度で、表面的な話題に終始しておけばいいのだ。
     私の中の西井への恋心は、とうの昔に死んだのだから。
     同窓会に出席することを決めた私は、そのように返信し、当日の今日、会場であるカフェの前に来ていた。
     少しの緊張を感じながら、私は扉を開けて店内へと足を踏み入れた。


     店内に入ってすぐの所に受付が設けられており、そこには、よりによって西井と三浜の2人がいた。年を経ても当時の面影はしっかりあり、自己紹介されなくても2人だとすぐにわかった。
     「久しぶり」と私は三浜に声をかける。ぎこちない声にはなっていないはずだ。
     三浜は、「おう、河越、久しぶり」と答えると、隣りの西井に「河越友美、到着」と告げ、西井は出席予定者リストの私の所にチェックを入れた。出席予定者は元担任教諭を入れて16人で、既に3分の2ほどが到着しているようだ。
     私が今日の同窓会費を財布から西井に支払うと、西井からは「これを」と言って折り畳まれた紙片を渡された。
     領収書か何かだろうかと思いながら紙片を開いて見ると、そこには「話したいことがあるから、会が終わったら少し時間を作ってほしい」という言葉が記されていた。
     受付を離れ店の奥へと行く西井。
     明らかに狼狽している私に、紙面を覗き込んだ三浜は勝手に納得した様子で「あいつも決着をつける気になったんだろう」とさらりと言った。
     「決着……?」
     「まぁ、頑張れ」
     ニヤリと笑って言う三浜は、あの頃のようだ。
     「友美!」
     店の奥から、実行委員に名前を連ね、同じ班だったこともある星見乃里子が手を振る。
     私の到着を乃里子に伝えた西井が受付へと戻って来るのを視界に捉えながら、私は複雑な思いを抑えて笑顔を作ると、乃里子へと手を振り返し、店の奥へと歩を進めた。


     実行委員に名前を連ね、当時から美人で存在感のあった坂島富由子が、店員と何か話していた。料理の確認だろうか。
     席は、長いテーブルを囲むように設けられ、誰がどこに座るかは既に決められていた。
     当時仲の良かった者同士が近くになるようにセッティングされたようで、私の隣りには美由紀と乃理子が座った。テーブルの奥の斜め向かい辺りに西井と三浜も並んで座っている。
     出席予定者が全員到着したが若葉の姿はなく、今日は欠席のようだった。
     11年の時の流れを感じさせるくらいには、体つきも顔つきも、成長して大人びた様子を見せてはいたが、みんなそれぞれ当時の面影を残しており、誰かわからないくらいに激変している者はいなかった。
     元担任教諭を含め順に近況を発表し、当時のことを思い返し懐かしみながら、それぞれの今に思いを馳せた。
     運ばれて来た料理はどれもとても美味しく、みんな思い出話に花を咲かせながら舌鼓を打った。

     私は美由紀から、転校後の若葉の話を聞かされた。美由紀が進学した高校の同じクラスに、若葉と同じ中学校に通った若葉の従姉妹がいて、仲良くなった彼女から知らされたのだそうだ。
     両親が離婚し、親権を持った父親に連れられ、弟と共に父方の祖父母宅に転居したことで転校することになった若葉は、毎日のように酒を飲んだ父親から絡まれることが嫌で、近所に住む伯母夫婦の家を訪れ、従姉妹と一緒に勉強するなどして過ごしていたのだそうだ。
     従姉妹とは別の高校に進学した若葉は、卒業後は就職と一人暮らしの生活を決め、現在は祖父母や父親からは離れて暮らしているようだ。
     転校後も会っていた私に、若葉はそのような事情を一切話さずにいたので、私は想像もしていなかったことに驚いた。
     家族の愚痴をこぼす私に、若葉は苛立ちを隠しながら内心憤慨していたのだろう。自分の方が大変な状況にも関わらず明るく笑顔で元気よく振る舞っているのに……! と。絶交もしたくなるというわけだ。
     若葉も話してくれたらよかったのに、と思うが、そのような境遇であることを見せないのが彼女の矜持だったのかもしれない。絶交を撤回された時に追及しなかったのは正解だったのだろう。
     今は、父親などから離れ自立して生きようとする若葉が、幸せであることを願うばかりだ。

     料理の空いた皿が一旦全部下げられると、半分ほどが移動する形で席替えが行われた。私の列の並びで半分より奥に位置する者らが、テーブルを挟んで私の向かい側に移って来た。
     ほぼ対角線上に位置する西井や三浜とは、席が近まることはない。おそらく実行委員である西井があらかじめ意見を出した上で計算されたことなのだろう、と勘繰る。
     そんな西井が私に話したいこととは何だろう。私が西井から惨めに告白を拒まれた例の件に関係しないはずはないだろう。とは言え状況はまるで、きちんと2人だけで話をするまではうやむやに世間話などするわけにはいかない、という西井の意思さえ感じさせる。
     新たな顔合わせとなり、これまでとは違う盛り上がりを見せながら、運ばれて来たデザートと飲み物をいただく。新鮮なフルーツを使った見た目にも美しいスイーツに、うっとりしながら美味を堪能した。
     貸切時間一杯に、それぞれあれやこれやと話し続けた私達は、実行委員である富由子からの「じゃあ、そろそろ時間なのでこの辺で……」という声を受けて、店を出ることにした。
     店外で、店を背景に記念の集合写真を撮った後、みんなそれぞれ連絡先などを交換し合った。私も、美由紀や乃理子と連絡先を交換した。
     解散となり、2次会としてカラオケに行くメンバーは移動して行く。
     西井が私に話したいこととは何だろう。同窓会中も時々考えてしまっていた。また傷つくことになるのではないか、と不安な気持ちが過る。
     それでも……。
     少しずつ閑散として行く中、私は背後の1つの人影に向きを変え、その目を見つめた。
     「話があるんだよね? 西井」


     三浜と挨拶を交わし、西井は「じゃあ、少し歩くけど、この先の公園でいいかな?」と私に尋ねた。
     市民にはよく知られた大きな公園を目指し、前を歩く西井の背中を見ながら、後からついて行く。
     西井は随分背が伸びた。
     それはそうだ。それだけの時が経っているのだから。
     7~8分かけて公園までやって来た私達は、公園の入口にある自動販売機でそれぞれ飲み物を買い、広い公園の片隅にあるベンチに並んで腰かけた。
     そして、しばらくの沈黙の後、西井が口火を切った。



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     【連続小説】ただ、友達として1(3/全3回)へ続く。



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