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おしゃれも、おいしさも、誰かのためじゃない。たった160バーツの魔法。

    この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
    題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


    タイ北部の小さな町、パイ。
    長い旅の途中で出会った旅人たちが、みんな「あそこはアーティスティックで、ほんとうに素敵な町だよ」と教えてくれた場所。タイを訪れるまでその地名すら全く知らなかったところ。

    山々に囲まれたその町は、どこか懐かしい空気がそよそよと漂っている。朝は鳥のさえずりで目が覚め、昼間はのんびりとカフェで時間を過ごす。夜は屋台の灯りがともり、旅人たちのざわざわとした声が聞こえてくる。そんな穏やかな時間が流れる町で、わたしはふたつの、ささやかな宝物を見つけた。

    ひとつは、町のちいさな露店で、何日かお店に通って悩んだ末に、ついに手に入れた、鮮やかな花柄のサブリナパンツ。長い旅で荷物を増やしたくなかったけれど、どうしても一緒に連れていきたくなった。160バーツという値段も、少しだけ迷う理由だった。
    軽いコットン素材が肌にここちよく、歩くたびに裾がふわっと揺れる。見慣れない柄だけど、なぜかこの町の風景にすんなりと馴染んでしまう。

    もうひとつは、毎朝、宿の近くのちいさな店で焼かれる、香ばしいパン。まだほんのり温かく、ふかふかとしたそのパンを頬張ると、じんわりと幸せが広がる。むぎゅっと噛みしめると、小麦の甘みが口いっぱいに広がる。そのパン屋では、新鮮なヤギのミルクも売られていて、濃厚でほんのり甘いそのミルクが、喉を優しく潤してくれる。焼き立てパンのあたたかさと、ミルクの冷たさ。そのコントラストがたまらない。

    日本にいるときは、おしゃれも食事も、どこか気ぜわしい。流行を追いかけたり、栄養バランスを気にしたり。無意識のうちに、たくさんのルールに縛られているのかもしれない。

    けれど、ここパイでは、そんなルールから解放される。
    花柄のサブリナパンツは、だれの目を気にするわけでもなく、ただ自分がここちよいから履く。焼き立てのパンは、特別なものではないけれど、その温かさと素朴な味わいが、何よりも美味しいと感じる。新鮮なヤギのミルクが、喉を優しく潤してくれる。

    ある朝、そのサブリナパンツを履いて、焼き立てのパンとヤギのミルクを買いに出かけた。朝日が山々をオレンジ色に染め、空気はまだひんやりとしている。しとしとと、やわらかい朝の光が肌に触れる。店のおねえさんは、いつもの笑顔で「コクプンカー」と声をかけてくれた。こんがりと焼けたパンの、甘く香ばしい匂いが、鼻をくすぐる。

    そのとき、ふと思った。旅の喜びって、こういうちいさな瞬間の積み重ねなのかもしれない。見知らぬ土地で出会った、ここちよい服と、温かい食べ物、そして新鮮なミルク。それらが、わたしの心に、ささやかな安らぎを与えてくれる。

    パイの景色は、今日も穏やかに流れている。鮮やかなサブリナパンツを履いて、焼き立てのパンをかじり、ほんのり甘いヤギのミルクを飲む。そんなありふれた朝が、わたしにとって、かけがえのない宝物になった。

    ―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。

    Google Geminiと相談しながら創作しました。
    文体にいくつかこんなエピソードを加えてとかお願いしました。カバーイラストも「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。


     
     
    異文化ライター / AI対戦会主催 / 年間マンガ500冊レビュー / SF短編小説家 / プロいく一期生 スターバックス勤務20年。ゲーム実況15年。シェアハウス10年。 ヘッダ画像はタプローム遺跡(本人撮影)。木の根が寺院を包み込む様子が神秘的。 amazonアソシエイト参加