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この長い船旅で、わたしは「暇」と友だちになった。

    この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
    題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


    インドネシア、カリマンタン島のポンティアナクからシンガポール南のビンタン島へ。

    50時間におよぶ、長い船旅が始まった。この船に、外国人旅行者はわたしだけのようだ。甲板に出ると、潮風がふわりと頬をなでる。きらきらと輝く海をただ見つめていると、時間がゆっくりと流れていくのを感じる。
    やることがない。ただただ、暇だ。

    最初は、時間をもてあまし、そわそわしていた。
    本を読んだり、音楽を聴いたりするけれど、すぐに飽きてしまう。この長い旅をどう過ごそうか。そんなふうに考えていたけれど、次第に、この「暇」を受け入れ、むしろ楽しむようになっていった。

    船の中を、あてもなく散歩する。狭い通路、けたたましい音を立てるエンジンルーム、そして、多くの乗客がひしめき合う雑魚寝スペース。それぞれの場所に、それぞれの人の生活があった。
    子どもたちはきゃっきゃと声を上げ、カードゲームに夢中になっている。大人たちは、たばこの煙をくゆらせ、おしゃべりに興じている。

    船の奥にあるキッチンをのぞき込んだ。
    そこで働いているのは、いかつい顔つきの男性たちだ。目が合うと、にこっと笑って手招きしてくれた。

    「ダリマナ?(どこから?)」

    彼がそう尋ねるので、「ダリジャパン(日本から)」とわたしは答えた。すると、彼らは驚いた顔でおー、ジャパン!と歓声を上げた。

    「クマナ?(どこへ行く?)」

    再び彼が尋ねる。わたしは、少し照れながら、「ジャランジャラン(ぶらぶら旅する)」と答えた。わたしの言葉に、彼らは楽しそうに笑って、そのままわたしを中に招き入れてくれた。

    彼らが作っているのは、米と魚の素朴な料理だ。何百人かぶんの大窯の前で汗を垂らして働いていた。
    その日の夕食が配られる時間になると、キッチンクルーの一人が、わたしを呼び止めた。そして、自分の皿に盛られたおかずを、どさっとわたしに分けてくれた。香ばしい魚の匂いが食欲をそそる。その温かさに、胸がじわんと熱くなった。

    日が沈み、空はゆっくりとオレンジ色に染まっていく。
    甲板に出て、水平線に沈む夕日を眺めていると、また別のキッチンクルーが、わたしにコーヒーを差し出してくれた。そのコーヒーを一口飲むと、甘ったるくて香ばしい味が、乾いた喉を潤してくれる。

    50時間という長い旅路は、やることがない退屈な時間ではなかった。それは、見知らぬ人々と心を通わせ、温かい気持ちを分かち合う、かけがえのない時間だった。

    ―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。

    Google Geminiと相談しながら創作しました。
    カバーイラストは「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。


     
     
    異文化ライター / AI対戦会主催 / 年間マンガ500冊レビュー / SF短編小説家 / プロいく一期生 スターバックス勤務20年。ゲーム実況15年。シェアハウス10年。 ヘッダ画像はタプローム遺跡(本人撮影)。木の根が寺院を包み込む様子が神秘的。 amazonアソシエイト参加