
【マヨイガー民俗学芸員の夜話】第三十四夜 夜がこわい
「秋は夕暮れ」と言われるほど、この時期は夕日が美しく照り映え、夜の到来が早くなりますね。
私は、昔から暗いところが苦手でした。何が出てくるのか分からない、姿が見えないことが何よりも不安だったのです。
それは、昔の人も同じだったようです。
日本には、様々な時間帯が存在します。
暁、朝、昼、夕方、黄昏時、夜、深夜
これらは、グラデーションのようになっていて、それぞれの時間の微妙な光や空気の違いがあり、日本人がいかに自然をよく見てきたかが分かる文化だと思います。

ここで注目したいのが、夕方以降の世界です。
映画『君の名は』でも登場した「黄昏時」。
名前だけ聞けばのんびりと黄昏れる時間帯とか、映画のように不思議なことが起こる時間帯というイメージがあります。
しかし本来、黄昏時とは「逢魔時(おおまがとき)」
魔に遭遇する不気味で不吉な時間でした。そして、その不気味な時間は、闇が深まる夜につれて黒い霧のように、どんどん濃く深くなっていきます。幽霊や異形の魔が出るのも、だいたい夕闇から夜が多いですよね。

実際に妖怪や魔物が出たかどうかは分かりませんが、それに近い化け物は確実に存在していました。
闇に紛れる ニンゲン です。
昔は、今よりも誘拐や暗殺が堂々と行なわれていました。信州では、フクロカツギという大きな袋を持って歩く化物が子どもをつかまえに来る という言い伝えがあるそうです。親たちは「魔」の恐ろしさを言い聞かせ、子どもたちを犯罪から守っていました。
日暮れと共に現れ、恐ろしい夜を連れてくる魔。
その一部を生み出したのは、紛れもなく人間自身なのです。
今日のお話はここまで。
日が落ちるのが早まってきましたので、どうぞお気をつけて。
皆さまの帰路が安全なものになるよう、1つマヨイガからお守りを贈ります。
また逢魔時、遊びに来て下さいね。

【出典】
ラジオ関西 『兵庫県高齢者放送大学』
2010年6月5日6時30分-7時00分放送
変と普通の境界線 斗鬼正一
https://www1.edogawa-u.ac.jp/~tokim/hentofutsunokyokaisen.html
イラスト:Yokai.jp HP
https://yokai.jp/yokai/oumaga-toki