
バンビーノ よどぅんだそっ。
借りた本だから、汚しちゃダメなんだ。
おれは本を丁寧にカバンに入れた。
あー、ドロボーがいる。その本学校のじゃないのかよ、黙って持って帰るのはドロボーだ。ドロボーの孫はドロボーなんだなあ。
こいつキライだ。
ちゃんと図書室で借りてきたんだ。ドロボーなんかしてない。
へえ、ドロボーの孫なのに?
おれはドロボーじゃないし、じいちゃんもドロボーなんかじゃない。おまえみたいなヤツのことウソつきって言うんだ。ウソつきウソつきー、ウソつきヤロー、ウソつきヤロー。
ウソつきなんかじゃない、って叫んで飛びかかってきておれの髪を掴みやがった。となるとおれだってやられっぱなしなわけにいかない。思いっきり伸ばした手がヤツの顔に当たって、そしたらさ、ジニに殴られたーって泣きながら逃げていったんだ。バカなのか?
結局さ、他の子が見てたからおれは悪くないってことにはなったんだけど、じいちゃんが学校に呼ばれたりして帰りが遅くなった。せっかく早く帰って借りた本をビーノに見せてやろうって思ってたのに。
大丈夫?
ビーノが心配そうな顔で玄関で待ってた。
大丈夫。ちょっと髪引っ張られただけだ。ちょっと待て、いいもん見せてやる。アイルランドの本、すごくきれいなんだ。
ビーノはおれから受け取った本を広げるとそのまま床にぺたんと座り込んだ。
ビーノが見入っているのは、古い灯台が波しぶきをかぶってる瞬間のやつだ。
ビーノの隣に座ってページをめくった。
他にもきれいなのいっぱいあるぞ。
きれいだねえ。
海にかかる二重の虹の写真のところで、ビーノがほおって息を吐いた。
図書室で本を見つけた時のこととか話そうとおもってたんだけど、どうでもよくなってきた。アイルランドの写真もきれいだけど、ビーノの横顔のほうがさ。