和田一郎さんの「大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方」をおすすめします

生きづらさを感じながら人生を送ってきたこともあって生き方に関する書物をよく手にするのですが、実に久しぶりに良い本に出会うことができました。
自分の生きづらさの原因が青少年期にあることはなんとなく分かっていました。家庭の貧困、親による支配、それらに起因する学校や地域、親族などの無理解や虐待の記憶に長年苦しめられてきました。
今回、この本でACEs(逆境的小児期体験)という言葉を初めて知りました。自身のACEsスコアは4ですからそれほど高いとはいえなくとも青少年期の経験が心の傷となって生きづらさを生んでいることは確かだと確信しました。
和田さんはACEsを持つ人にどうすれば生きづらさを解消へと向かわせることができるのか具体的に対処法を提案されています。その一つ一つが納得いくものなのです。これまでACEsという概念を知らず、対処療法的に心の傷に対処しながら50代後半になってしまった人間にとってはうなずける提案ばかり、ACEsに苦しむ若い人たちにぜひ読んで実践していただけばと思います。
まずは本当に苦しいときは専門家のアドバイスを受けた方がよいと言うことです。私は高校時代が苦しさのピークで何とか大学に入ったものの色々苦しい状況が続いて、ついには眠れなくなり、大学のカウンセリング室を訪ねました。心理療法の専門教員が対応してくれ、話を聞いてくれ何とか落ち着くことができました。「まだ眠れないようなら薬を出すよ」と言われましたが、結局処方してもらうことなく改善しました。
あの時、中途半端にサークルや自助グループなどに逃げ込まないでよかった。当時はメンタルヘルスという言葉も一般には知られておらず、精神的な不調を訴えると「甘え」とみなす風潮がありました。そうしたところに行けばより状況が悪化していたかもしれません。
和田さんは、SNSやマスコミに実名で登場して自身のACEsについて話すことにも反対されています。これもその通りだと思います。自分のことを話すことで一時的に快方に向かうかもしれませんが、長続きしないでしょう。和田さんの指摘なさっているように、むしろ実名が出ることによるマイナス面が大きいと思います。
まずは自身の生活基盤をきちんと確立することだという提案もその通りです。貧困はACEsの主要因ですが、ここから抜け出さないことには何も始まりません。それも自身のACEsとは関係ないところで職を得たり、事業をするなどして生活を形作っていくことが大切でしょう。私は大学卒業後幸いにして職を得て今までやっていけています。とはいえ貧困からは抜け出ることができたものの青少年期の記憶はトラウマのようにつきまとい、若い時には周囲の人にだいぶ迷惑をかけてしまいました。それでも何とか続けてこれたのは妻や友人らの助けがあったからです。本当に感謝しかありません。 親の精神的な支配も長く続き、最終的に逃れられたのは結婚したときでした。最近〝毒親〟という言葉が一般的になってきましたが、もっと早くこの言葉を知っていれば苦しめられ続けた束縛から早期に脱することができたのにと思います。
自分のことをACEsで苦しめられていると少しでも考える方はこの本を読まれることを強くおすすめします。必ず光が見えるはずです。
(了)