
「秘密結社八咫烏」陰謀論について分かっていること
陰謀論観察用のTLで、時折流れてくる秘密結社がある。その名を「八咫烏」という。


例によって様々な陰謀論に結合されてしまい複雑怪奇な様相を呈しているが、流れている情報の基本的なところを要約すると「8世紀に設立された世界最古の秘密結社で、日本を影から操ってきた存在。特に最上位に君臨する『三羽烏』(3名で1つの存在として金鵄とも称される)は、その絶対的な権力から裏天皇とも称される」秘密結社である。果たしてそのような秘密結社は実在するのだろうか。筆者は情報を追った。
ムー・スーパーミステリー・ブックスの内容がネットに記載され流通
この言説に関する投稿を辿っていくと、どこかで爆発的に流行したというよりは、徐々に広がってきて定着したように見受けられる。Xの投稿でも引用されているブログ記事群を確認すると、いずれも飛鳥昭雄氏が関わったムー・スーパーミステリー・ブックスや、飛鳥氏のコンテンツを参照しているように見受けられた。
『失われたキリストの聖十字架「心御柱」の謎』『失われたイエスの12使徒「八咫烏」の謎』といったムー・スーパーミステリー・ブックスには、秘密結社「八咫烏」についての以下のような記載があり、現在も出回っている説と共通している。
八咫烏の構成員には戸籍がなく、公的には存在しない人物として一生を送る(どうやって運転免許証やパスポートを作るのだろうか?)。
八咫烏の活動資金は内閣府の機密資金で、宮内庁を経由して提供されている。
絶対神から与えられた奥義「カッバーラ」をイエス・キリストから伝授されたユダヤ人原始キリスト教徒たちは日本に辿り着き、カッバーラの使い手=「漢波羅」として日本を操ってきた。これこそ秘密結社「八咫烏」である。
八咫烏には特に重要な「十二烏」が存在し、これは原始キリスト教における十二使徒である。
さらに、十二使徒の上には「三羽烏」という3名が君臨しており、3名を一体として「金鵄」として扱われている。これはキリスト教における三位一体に対応している。そして、この金鵄こそが裏天皇なのだ。


特に、企業向けの海外研修を請け負っていたインテック・ジャパンという企業(2012年にリンクアンドモチベーションの子会社となり、現在はリンクグローバルソリューション)のブログで何故か2006年に八咫烏の記事が連載されており、その内容は上述の飛鳥氏系書籍群を要約したようなものであった。
これが2010年代のブログ記事でも引用されており、書籍からネットに移された情報が、引用やコピーの繰り返しで流通し続けているものと推察される。

『失われたキリストの聖十字架「心御柱」の謎』や『失われたイエスの12使徒「八咫烏」の謎』では飛鳥昭雄氏が様々な情報を接続して理論を展開し、その末に八咫烏のトップである「大烏」にも対面したという筋立てになっているが、その真偽については確かめようがない。
何故か代表者の名前が出回っている
ところが、長年日本を牛耳ってきた極秘組織にもかかわらず、現在の八咫烏について検索すると、代表者の名前が書かれた記事がいくつもヒットする。

あくまで「自称」と注意されているものの、どの記事でも「林」という人物が代表とされており、Wikipediaでも2012年の『ムー』を出典として、林なる人物が新たに作ったであろう団体や、公式サイトのURLが掲載されていた。

果たしてムーでは、八咫烏や林氏についてどのようなことが書かれているのか。気になった筆者は、出典となっていた『月刊ムー』の2012年2,3,6,7月号を確認した。 そして、わざわざ手元に取り寄せてページを開いた筆者は驚いた。
林氏へのインタビューや、氏が代表する「八咫烏」についての解説など、どこにも存在しないのである。
筆者が確認した結果を以下に記載する。

2012年2月号:「肉を喰らう神々と魑魅魍魎がうごめく“日本神話”、真実の姿・本当は怖い古事記」という特集はあるものの、秘密結社「八咫烏」への言及はなし。
2012年3月号:「八咫烏代表者・林裕之への衝撃インタビュー」なるコラムがあるかのようにWikipediaには記載されているが、そのような記事は見当たらない。
2012年6月号:「編纂1300周年を迎え、ついに解読された日本神話の秘密とは!!神々の暗号と「古事記」の大予言2012」という特集はあるが、秘密結社「八咫烏」への言及はない。
2012年7月号:「八咫烏の実像を語る」なるコラムがあるかのようにWikipediaには記載されているが、そのような記事は見当たらない。特集「知られざる天皇の忍者と黒幕の秘密結社」で「この国の歴史は古くから、彼ら秦氏=ユダヤ系の忍者集団=秘密結社によって操られていた可能性もある」と秘密結社「八咫烏」を思わせる記述があるが、明確に名指しされているわけではない。勿論林なる人物への言及はない。