
Napaはカリフォルニア・ワインの産地における心臓部だが、新規参入が著しく難しい時代になっている。世界的なワイン不況の煽りもあり、新参者に明るい未来が待っているとは言えないということもあるが、何よりも畑を入手しワイナリーを建設することの費用や機会の面で、Napaでのスタートアップは現実的な選択肢ではなくなりつつある。(果実を入手して参入する道はまだ開かれている。)
新規参入が滞れば、産地や業界は衰退の道を辿り始める。新しい企業や人間が新しいアイディアやアプローチを持ち込むからこそ、業界全体が活性化する。今のNapaの状況は、その未来に暗い影を落としている。
とはいえ、ワインのスタートアップを検討する際に、Napaを最初から諦めるにはその魅力は大きすぎる。多くの関係者が様々に知恵を絞って機会をうかがっている。
そうした中で、William & Maryは幸運な事例と言って良い。
William Segui氏は、かのThomas Rivers Brown氏のプライベート・レーベルであるRivers-Marieで醸造に辣腕を振るった後、2014年にMary Segui氏と共にWilliam & Maryを設立する。Mary氏は、1940年代にOak Knollに立地するShifflett Ranchを購入したShifflett家で生まれ育ったことから、果実を得ることができたのだろう。現在は、自社畑のShifflett Ranchのカベルネ・ソーヴィニヨンに加え、OakvilleやMcDougall Ranchの果実を使ったワインをリリースする等、ポートフォリオの拡大に意欲的に取り組んでいる。
William & Maryのように、Napaの第二黄金期と言って良い地今の時代にあって、若手ながらもNapaの良質なカベルネ・ソーヴィニヨンを穏当な価格でリリースすることができる事例は、幸運な例外と言う他ない。
先日、2017年のShifflett Ranch Cabernet Sauvignonを運よく入手することができたので飲んでみることにした。
赤黒系の果実、ザクロやイチジク、カカオの香り。まるでスープのような旨味と複雑味を感じる。ただ、冷涼なOak Knollの影響か、酸は強いため分厚い果実味よりも骨格を感じる作りだ。バランスも優れており、充実したアフターが魅力的だ。とはいえ、まだタンニンが強く新樽の影響が抜けきっていないこともあり、飲み頃は先だろう。今後が楽しみな佳作なNapaのカベルネ・ソーヴィニヨンだ。
Napaは大小さまざまなワイナリーが鎬を削る競争が厳しい産地だ。しかし、William & Maryの他にもGreerやMorisoriのように、有望な新芽が育つ地域でもある。今後も、カリフォルニア・ワイン業界らしく、競争と共存の精神を発揮して持続的な発展を遂げて欲しいと願っている。そのためには、才能のある作り手と優れた畑の持ち主の出会いが鍵となるだろう。とはいえ、William & Maryのように本当に結婚する必要はないだろうが。
本日のワイン:
William & Mary Shifflett Ranch Cabernet Sauvignon 2017
94pts
https://williammarywineco.com

