
記憶と香り
良いことがあると美味い酒を飲みたくなるものだが、そこでワインを選ぶのは華やかさを求めているからではないか。
セラーの魔除けという言い訳で、おいそれと開ける訳にはいかない一本を隠し持っているのがワイン愛好家というものだ。筆者もその例外に漏れない。応援している球団の優勝を理由に、いそいそとセラーの中からとっておきを発掘してきた。
KodoはKinsman EadesがOakvilleに位置するM-Bar ranchから作っているCaberbet Sauvignonだ。この畑は、Araujo夫妻のAccendo Cellarsが果実を調達している他、VinousでAntonio Galloni氏が「Oakvilleでも選りすぐりの畑」と評している。実際、Kodo 2021はVinousで100ptsを獲得している。
Kinsman Eadesのラインナップの中でも販売量は極小のため、日本へに輸入は実現していない。
まだまだ若いことは承知の上で、抜栓してグラスに注いでみる。赤黒系の果実、オリーブ、イチジク、グラファイト、ブラッドオレンジ、スミレの豊かな香り。猛烈に凝縮されているのに余裕すら感じる果実味を感じるが、それ以上に鮮烈な酸が印象深い。OakvilleのCabernet Sauvignonがここまで躍動的に感じられるものか。驚く他無い。
それに、酸が強いからといって、表面的にエレガンスを気取っているワインではない。ミッドパレットからフィニッシュにかけて、複雑で層を感じる味わいが変化し続けていく。ワインも中身があってこそ、口当たりの価値が上がるというものだ。
そして、これほど若いワインにも関わらず、頑強なタンニンがある訳でもなく、味わいに突出したところもない。極めて洗練されて、完成度の高いワインだ。 Vinousの満点評価は伊達ではないといったところだ。
個性と洗練が同居したワインの華やかな香りと味わいは、記憶に残りやすい。後々まで、その味わいを思い出して楽しむことができる。まして、それが祝い事に飲んだワインであれば、その時の楽しい記憶と共に長く忘れずにいられるだろう。
もっとも、酔いが覚めたあとで、今日のワインに勝るとも劣らないセラーの魔除けを再び探すという厄介な問題と向き合うことになるのだが、それを言い訳にまた探求の日々が始まることも、愛好家にとっては歓迎すべきことなんだろう。
本日の一本:
Kinsman Eades Kodo Oakville Cabernet Sauvignon 2021
97pts
https://www.kinsmaneades.com

