
好事家の味方
ジンファンデルはワイン好きの味方だと思う。
現在は研究でそのルーツがイタリアやクロアチアにあることが分かっているものの、米国で長く愛されてきたこの品種は、カリフォルニア・ワインの代名詞としての地位を築くに至っている。
他方で、米国外での地位は必ずしも高いとは言えない。例えば、日本国内では、高いアルコール度数とジャミーな味わいが特徴の安ワインという印象が強いようで、よほどカリフォルニア・ワインを贔屓にしている店を除けば、ワインバーやレストランで見かけることはほとんど無いと言って良い。
しかし、ワインに限らずどんなものにも高級品と普及品があるのであって。品種としての可能性を吟味するなら、もう少し色々なジンファンデルを飲み比べてから結論を出しても遅くはないだろう。
そんなジンファンデルの作り手として、最近、国内でTurleyの人気が再燃している。「再燃」と書いたのは、カリフォルニア・ワイン好きの間では、既に古典と言って良いワイナリーなので、その人気の高まりには既視感があるからだ。既存のジンファンデルに対する見方を覆すような、洗練された味わいに気づく消費者が増えてきているらしいが、それは好事家の間では広く知られている。
Turleyは1993年にSt. Helenaで創業されて以来、一貫して古木を持つ畑に注目し、他に類を見ないほど多くの種類のジンファンデルやプティ・シラーのワインをリリースしている。創設者のLarry Turley氏は、Frog's Leapの創設者の一人でもあり、かのHelen Turley氏の弟でもある。当初、Helen Turley氏の弟子であるEhren Jordan氏がワインメーカーを長く務めていたが、その後、SandlandsのオーナーでもあるTegan Passalaqua氏が引き継いでいる。なお、Frog's Leapと同様に有機栽培に力を入れており、自社畑は"California Certified Organic Farmers(CCOF)"の認証を取得している。
今回は自社畑のジンファンデルを入手することができたので、飲んでみることにした。
野苺、カシス、プルーン、プラム、カカオ、イチジク、アニス、セージの複雑な香り。多層的で充実した果実味があるが、酸もしっかりとしているため重たくはない。2016年のビンテージであるためか、タンニンは溶け込んでいて、ちょうど飲み頃と言って良い。Napaの陽性なキャラクターと丁寧な作り込みが相まって、洗練された満足度の高いワインに仕上がっている。初めて飲むジンファンデルがこういうワインなら、先に挙げたようなイメージは生まれないだろう。
ジンファンデルの特徴は、洗練されたワインを作ることができる品種であることにとどまらない。その味わいの多様性も大きな魅力だ。このTurleyのワインは比較的充実した果実味が特徴だが、もっと抑制的なものもあれば、軽い味わいのものも存在する。どんなスタイルに仕上げても破綻せず、それ相応の魅力を見せてくれるところが良い。
そして、ジンファンデルは食事と合わせた時にその力を発揮する点も見逃せない。Pizza & Burgerはもちろん、イタリアンとの好相性はもっと知られる価値がある。例えば、イカスミのパスタに洗練されたジンファンデルを合わせてみて欲しい。
さらに、好事家にとって何よりの朗報は、極めて洗練されたジンファンデルであっても、その価格が非常に穏当な水準にとどまっているという点だ。VinousのAntonio Galloni氏は、Carlisle Carlisle vineyard Zinfandel 2018を「これは真に世界レベルのワインだ・・・50ドルで買える他の産地のワインを考えてみれば良い。」と評した上で98ptsを付けている。
ジンファンデルは、多様な味わいの優れた赤ワインを、穏当な価格で楽しめる唯一の品種と言って良い。人気が再燃している今、そんな好事家の味方であるこの品種がその地位を保てる期間も長くはないのかもしれないが、代わりにジンファンデルの魅力が知られるようになるならば、そう悪くはない話だろう。
本日のワイン:
Turley Napa Valley estate Zinfandel 2016
92+pts
https://www.turleywinecellars.com

