
隠れた逸品
カリフォルニア・ワインの入門のために、かつてはシャルドネよりもソーヴィニヨン・ブランが重宝された時期があった。品質が高いにも関わらず価格が穏当で、入門者には有り難い存在だった。
時が経っても、カリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランの魅力は褪せるどころか、いや増すばかりだ。しかし、その存在感は高まりを見せていない。供給が少ない中で値頃な価格を保っているにも関わらず、である。
「ボルドー・ブランの人気が低調だからだ!」と、いい加減な責任転嫁をしないのであれば、その原因はカリフォルニア・ワインの側にあると言う他無い。
謙虚な気持ちになって見れば、原因の一つは、供給の拡大が見られない点にある。新しいワイナリーや畑が増えていかなければ、消費者へのアピールも高まらない。シャルドネに次ぐ人気を誇る白ワイン品種でありながら、その供給が増えないのは、他に優先すべき品種があるか、生産者から見て価格が十分に高くないからだろう。
ソーヴィニヨン・ブランの人気が広く知らしめられれば、その価格も高騰せざるを得ない。そうなれば、供給も増え、消費者の選択肢も増すだろう。ワインの値上がりは消費者にとっては痛ましい出来事だが、カリフォルニアの優れたブドウ品種が日の目を見ないのも忍びない。そこで、今回は、新進の実力派を紹介することで、わずかでもその人気向上に貢献したいと思う。
今やNapaで最も探し求められるワインを作るKinsman Eadesは、かのAraujoを経営していたBart & Daphne Araujo夫妻が所有するRancho Pequeno Vineyardから果実の供給を受けて、Aisanaというソーヴィニヨン・ブランをリリースしている。Nigel Kinsman氏がAraujoやAccendoのワインメーカーである縁も手伝ってのことだろう。なお、Araujo時代からSauvignon Blancは銘酒として有名だったが、Accendoになってからも評価は底堅いものがある。
レモン、洋梨、白い花を中心に、アロマティック系のワインと見紛う万華鏡のように華やかな香り。カリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランはソーヴィニヨン・ムスケと混醸されることが多いが、このワインはセミヨンがブレンドされている。ピュアでクリーンな味わいだが、果実の芯があり、力のあるワインに仕上がっている。心地よい酸を感じながら、長いアフターが続く。緻密に作り込まれた、傑出したソーヴィニヨン・ブランだと言って良い。
動画の中で、Bart Araujo氏がMichel Rolland氏から、「(ソーヴィニヨン・ブランだけでも)良いワインだけどね。セミヨンを入れたら?」とアドバイスを受けてセミヨンを加えたところ、Nigel Kinsman氏らと共に顔を見合わせて驚いた、と言っている場面がある。ソーヴィニヨン・ブランのフレッシュな魅力をセミヨンが打ち消してしまわないか不安に思っていたが杞憂だったとのことで、後日、Michel Rolland氏はご満悦だったそうだ。
カリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランを隠れた逸品にしておくのは、実に惜しい。求めて探す人が増えることを願ってやまない。
本日のワイン:
Kinsman Eades Aisana Sauvignon Blanc 2023
94pts
https://www.kinsmaneades.com
