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ワイン愛好家の責任

    愛好家は、しばしば、苦労して高級ワインを買うのが大変だと愚痴をこぼすものの、つまるところは消費者に過ぎない。他方で、多くの生産者は文字通りワイン作りに人生を懸けている。どちらがテーブルの上に多くチップを積んだかと言えば、比べるまでもない。

    それでも、限られた資金を割り当てるなら、飲み手に刺激と興奮を与えてくれるワインの方が良い。そう考えると、つい、飲んだワインが美味しいのか、自分の好みに合うのか、もっと他に選択肢があったのではないかと、言わなくて良いことに言葉を費やしたくなるというのがワイン愛好家というものなんだろう。

    われわれは、ワインにどこまで求めることができるのか。ふとそんなことを考えてしまった。

    先日、知人と贅沢なワインを会を催した。その際に持参したKinsman Eades Anjeaは、今、Napaで最も評価の高い生産者が手がているワインの一つだ。果実の供給源であるRutherfordのSleeping Lady Vineyardは、JF winesがVinous 100ptsを達成した畑でもある。細部にまで配慮したワイン作りに余念がないNigel Kinsman氏の手腕を楽しむには、うってつけのワインだ。

    黒系の果実、オリーブ、浅煎りのコーヒー、グラファイト、シダーの豊かな香り。Napaらしい大らかさを感じさせつつも、全く重さを感じさせない。味わい深いタンニン。長く洗練されたアフターは、料理の油を綺麗に流してくれた。

    傑出したNapaのカベルネ・ソーヴィニヨンだ。Napaのカベルネ・ソーヴィニヨンに求めるべき点は、全て高い水準でクリアされている。単体でも、食事と合わせても、相応の魅力を発揮してくれるこのワインは、どんな食卓でも空になるのに時間は掛からないだろう。この日は、知人が持参した希少なシャンパーニュやロワールに続いて、見事にその日のトリを飾ってくれた。

    価格に見合う価値を持った、極めて優れたカベルネ・ソーヴィニヨンが欲しいのであれば、このワインを買えばその目的は満足できる。もう十分だと考えて、飽くなきワインの探求から「降りる」ことになったとしても、後悔はないだろう。

    一方で、こうしたワインと出会ってしまったことで、新たなワインを探求する情熱が湧いてきてしまう。

    生産者が人生を懸けて作ったワインを、自身の刺激と興奮を得るために、あれこれと批評しながら次々と消費し、探求する営みは度し難い。しかし、こうした情熱があるからこそ、生産者が消費者の期待に応えようと努力する側面もあると、内心、自己弁護したい気持ちもある。

    「そこまで言うなら、自身が求める価値を体現したワインが見つかるまでは、『降りる』とは言うまいな?」

    誰に言われた訳でもないが、それが愛好家の責任とも言うべきものなのだろうか。まだ自身の中で答えは出ていない。

    本日のワイン:
    Kinsman Eades Anjea Cabernet Sauvignon 2019
    96+pts
    https://www.kinsmaneades.com/

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