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レジリエンス

    企業活動の国際化、ICT技術の発達、物流・航空網の充実、労働者・観光客・資本の国際移動が加速する現代において、優れた投資プロジェクトに光が当たることは避けられない。それはワイン産業であっても例外ではない。

    既に、ワイン生産の現場においては、世界の産地やワイナリーを股にかけて活動することで、一年間に複数の収穫や醸造を経験しつつ、異なるワイナリーでの生産・醸造技術を学ぶことにより、限られた時間の中で迅速に生産・製造技術を身につけることが当然の時代になっている。

    世界の美食家を相手に鎬を削るファイン・ダイニングの世界のように、有名ワイナリーの現場に様々な国々から栽培・醸造を学ぶ人々が集うようになるのは、自然な帰結だろう。

    同様に、ワイン産地の分類の上で「新世界」「旧世界」という呼称が意味を持たない時代に突入した今、優れたワインを作る産地やワイナリーを求めて、新興産地や新進のワイナリーを対象に投資や買収が進むことも想像に難くない。

    実際、気候変動への対応やより優れた畑を入手するために、また、ビジネスの拡大や自社ブランドの構築のために、フランスの大手ワイナリーがカリフォルニアを対象にグリーンフィールド投資を行ってきているだけでなく、仏資本によるワイナリー買収を目的としたブラウン・フィールド投資も増加してきている。

    Diamond Creekはそんな投資の対象となった生産者の一つだ。1968年にアル&ブーツ・ブラウンシュタイン夫妻が創業したこのワイナリーは、カリフォルニアで初めてカベルネ・ソーヴィニヨンのワインに特化した生産者だ。NapaでもOakvilleのようなヴァレーフロアでの栽培が当然だった時代に、Diamond Mountainに畑を切り開き、微気候や土壌の違いを意識した自社畑から作られるテロワールを表現し、時を経るとともに次第に評価を確立していった。

    しかし、古豪であるが故に創業者の老いは避けられない。アル氏が2006年に、そしてブーツ氏が2019年にこの世を去った。結果的に、ワイナリーの未来は創業家とも関わりの深いシャンパーニュの大手メゾンであるLouis Roderer家に託されることとなった。

    VinousのAntonio Galloni氏は、経営が継承された後の2021vtgを高く評価している。特に、Volcanic Hill 2021については、「これまでにDiamond Creekが作り出した中でも最高のもの」と評している。

    今回、運良く、このワインを入手することができた。

    グラスから立ち上る赤スグリ、ブラックチェリー、カシス、ブルーベリー、オリーブ、イチジク、ブラッドオレンジ、コーヒー、僅かに甘草の香り。飲み始めはタンニンと樽由来の味わいがやや荒い印象だったが、時間と共に気にならなくなっていった。充実した果実味とそれに負けない酸が相まって非常に洗練されたこのワインは、口に含んだ後、その多層的な味わいが徐々に変化していく。欠点がなく、品格を感じる傑出したカベルネ・ソーヴィニヨンだ。Napaを敬遠するワイン愛好家も少なくないだろうが、そういう人達をも納得させてしまう力がある。

    創業者が去り、新しい経営体制の下で再出発したこのワイナリーは、良きにつけ悪しきにつけ、今後、変化を余儀なくされるだろう。良い面を挙げれば、先のVinous誌の評価をはじめ品質向上の兆しが見られつつあるが、反面、既に価格の上昇は始まっており顧客の忍耐を試し始めている。

    しかし、世の中、不変のものなど存在しない。盛者必衰、諸行無常である。全てが変わっていく中で人にできることは、より良く変化していくために努力することだけだ。ならば、固定観念や過去への囚われを捨てて、前向きにより良い変化のあり方を模索することが重要ではないか。

    世界で急速に地位を向上させてきたカリフォルニアのワイン産業が、開明的で柔軟な発想を活かして、避けられない変化の波に対してどのように適応していくのか。そうしたレジリエンスにこそ、カリフォルニアの気質と気骨が表現されるのだと思う。


    本日のワイン:
    Diamond Creek Volcanic Hill Cabernet Sauvignon 2021
    97pts
    https://diamondcreekvineyards.com

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