
職人気質
「職人気質」という敬称があるが、真にその名に値する生産者は少ない。
Dunn Vineyardsは、カリフォルニアの中でもつとに知られた職人的生産者だ。Randy Dunn夫妻は1978年にHowell Mountainの土地を購入し、既に植樹されていたカベルネ・ソーヴィニヨンを元に1979年に初めてのワインをリリースした。それ以来、畑を拡張しつつも、数十年の熟成を経て飲み頃を迎えるとされるワインを現代まで作り続けている。現在、創業者のRandy氏は引退し、ワイナリーは家族のMike Dunn氏に任せている。
そんなDunn Vineyardsの看板ワインであるHowell Mountainの2008年のカベルネ・ソーヴィニヨンを飲む機会があった。厳しい天候で収量が大幅に減少した年にも関わらず、評論家からは高い評価を受けている。
ブラックベリー、ブルーベリー、グラファイト、中深煎りのコーヒー、ドライイチジク、スミレの豊かな香り。15年以上が経過しても、まだまだタンニンが強固だ。あと20年はゆうに熟成し発展するだろう。
飲み口はあくまで瑞々しく、強い酸が全体を引き締めている。例年のビンテージに比べれば、僅かにボディは控えめだが、十分な凝縮感がある。長いアフターと美しいフィニッシュが印象的な、極めて優れたカベルネ・ソーヴィニヨンだ。
ボルドーの歴史あるシャトーでもない、小さなNapaの生産者が、創業時から数十年の熟成を必要とするワインを作ることは、どう考えても経済合理的ではない。たとえ、長熟のワインだけが可能にする表現を追い求めたいと考えても、その代償に尻込みすることになるのが普通だろう。
Dunn Vineyardsは、寡黙にそうした先入観を打ち破り続けている。この生産者がそうした矜持を持つだけでなく、現在までその姿勢を保ち続けることは、まさに職人気質のなせる技という他ない。
本日のワイン
Dunn Howell Mountain Cabernet Sauvignon 2008
95pts
https://www.dunnvineyards.com

