メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【R18短編小説】夢の中なら

※残虐表現・暴力表現・性描写があります。
18歳未満の方のご購入は固くお断りさせていただきます。


 
いつ、どこから来たのか分からない。
気づいたら、ここにいた。

緑に囲まれ、色とりどりの花の香りを含んだ空気が、胸を満たしている。
暖かな陽光が木々の間からこぼれ、あたりには生命の息吹が満ちていた。
裸足で踏みしめる足元は、柔らかな土。

男は、周囲を見回した。

(ここは――楽園か?)

少し歩くと、開けた場所に出た。
そこには泉が湧いていた。

陽の光を受けてきらきらと輝く、透明な水面。
奥の方では、緩やかに流れ落ちる滝が、陽光を受けて虹を作っていた。

急に喉の渇きを覚え、男は水際に膝をつき、水面を覗き込んだ。

(これが、俺の顔……)

少し伸びた黒髪。
頬はわずかにこけ、どこかやつれている。

自分がどこの誰なのかも、思い出せない。

(俺は……死人なのかな)

生気のない黒い瞳を見つめ、そう思う。

(じゃあ、ここは天国なのかもな)

気を取り直すように手で水を掬い、ざぶざぶと口に運んで喉を潤す。

――美味い。

冷たく清らかな水が、渇きを癒していく。

夢中で水を飲んでいると、近くで小枝を踏み折る音がした。

男が顔を上げる。

すると、すぐそばの木立から、一人の女が現れた。

栗色の髪には花飾り。
白いキャミソールワンピースをまとい、軽やかな足取りでこちらへ歩いてくる。

男は、その姿に目を奪われた。

甘く、可愛らしい顔立ち。

(天使が迎えに来た?)

そう思った直後、別の考えが浮かんだ。

(いや……でも、この顔。どこか見覚えが……)

男は何度か瞬きをし、女を凝視した。

女も男の存在に気づくと、にこっと笑った。

「こんにちは」

その笑顔を向けられた瞬間、男の胸が疼いた。

(思い出せない……でも、この女性は……)

愕然とする。

(初恋の人だ。間違いない)

ぼやけた記憶の中で、その女性の姿だけが、鮮明な輪郭を取り戻していく。

「あの……」

男は、おずおずと声をかけた。

「名前は?」
「リマ」

女は、ためらうことなく答えた。

男の記憶が、一気につながった。

リマ――。

間違いない。
聞き覚えがある。

彼女だ。

男は興奮したように立ち上がった。

「リマ。リマ……。
俺だ。覚えていないか?」

胸に手を当てながら、彼女へ近づいていく。
逸る気持ちを抑えきれない。

リマはおっとりと微笑みながら、彼を見つめていた。

「ええ。覚えているわ」

その言葉に、男は救いを見出した。

「教えてくれ。ここはどこなんだ?
そして、俺は誰なんだ?」

一縷の望みを手放すまいと、縋るように問いかける。

男が目の前まで迫っても、リマは表情を変えなかった。
ただ、彼の胸にそっと手を置く。

「慌てないで」
「あ……」

そこで初めて、冷静さを失っていた自分に気づいた。
男は、わずかに恥じ入る。

「せっかくの再会を喜びましょうよ。
ほら、こっち」

リマが男の手を引いた。

「お……おい」

戸惑う男の声をよそに、リマは泉へ足を踏み入れ、そのまま水の中を進んでいく。


画像


スカート部分が水に浮き、水面にふわりと広がった。

腰まで浸かると、濡れたズボンの重みが煩わしい。

リマは男の手を放すと、頭からザブンと水に潜った。
だが、それもほんの一瞬だった。

「ぷはっ」

煌めく水滴を弾きながら、彼女は再び水面から顔を出した。
白のキャミソールワンピースが濡れて、透けた。

薄い布地を通して、白く瑞々しい肌と、紅い木の実のような乳頭がはっきりと見えた。
濡れた髪についている花飾りは、形を崩していない。

陽光の下で、無邪気に笑う裸婦。
一枚の絵画を見ているようで、男は呆然としながら目を奪われていた。

「服なんて、邪魔よね?」

じっと男を見つめるリマの笑顔に、妖艶さが混ざる。

彼女は指先をワンピースの肩口へ持っていき――ゆっくりと袖を抜く。


 
 
映画の感想を中心につぶやいています。 名前の「カプリ」はcapricious(気まま)から。 Kindleで電子書籍を出しています。 https://amzn.to/4tzaYNU (ポムりんご名義) ※Amazonのアソシエイトとして、カプリは適格販売により収入を得ています。

あなたへのおすすめ