
半歩後ろの夫
夫とイオンに行った。
私は乾物店で販売されている酢が買いたかったのだが、夫もいっしょについて来た。
いや、いつもそんな感じだ。だいたいはついてくる、というより車で連れて行ってくれる。
お目当ての酢を買い、お腹もすいたし何か食べようということで、フードコートできつねうどんを二人ですする。
会話は特にない。
「うまっ」
「……うん」
まぁ、そんな程度。
食事が終わり、
「私は本屋に行きたいから」
と、本屋へ向かう。
文庫本の前でときめいていると、目の端に夫の姿がちらつく。
いつもこうだ。
ちなみに夫は読書が苦手で、小学生時代の夏休みの読書感想文は、ずっとエジソンの感想文を書いていたという強者である。
しかも、本の巻末に載っていた、誰かの読書感想文を丸写しし、少しずつ文章を組み替えて提出し続けたという、なかなかの強者だ。
「なに? 夫も何か見てきなよ」
「……うん」
そう言うと、夫は静かに私の視界から消えた。
……すぐに戻った。
「もう~、待ってられると選べないじゃんっ!」
そう夫に言い放ち、「もういいよ、行こう」と歩き出す。
そして、夫はいつものように私の半歩後ろを歩いている。
いつもそうだ。
昔々、「女は男の三歩後ろを歩くのが常識よ」みたいな時代があった。
おしとやかであることが、女性としての魅力のように伝えられていたこともあったが、でも今、私の半歩後ろをついて来るのは夫だ。
「ねぇ、なんなん? 私の背後を守ってるの?」
「……そうそう」
そうか。私が背後からいきなり切りつけられないように守ってくれているのね。
って、江戸時代ちゃいますよ~。
夫はもごもごと、さらにこう言った。
「いや、ちゃこに先陣を切ってもらってる」
なんでだー。
私はあなたのための特攻隊とちゃいますよ~。
そんなしょうもない会話をしながらも、夫は私に半歩前を譲り続けた。
男の愛情は、夜道に買い物に出かける彼女や妻を、心配というわけでもなく、なんとなくついてくるものだという話を聞いたことがある。
たぶん、それなのかもしれないな。
いや、私の性格上、特攻隊の方か。