
料理の才能がない僕が、先祖に料理を学ぶことにした【第3回:焼き魚】
第2回でご飯がなんとか炊けるようになった僕に、先祖は次の課題を出した。
「次は焼き魚だ。魚ひとつ焼けなきゃ、飯のおかずは語れん」
正直、僕にとって焼き魚といえば、グリルの中で煙を上げて黒焦げになるものだった。火加減? 返すタイミング? そんなもの、グリルの向こう側の話だと思っていた。
ところが先祖は、グリルの前で腕を組んでこう言った。
「魚を怖がる奴は、魚に逃げられる。向き合え」
……というわけで、第3回は焼き魚。グリルが怖い僕が、皮パリ・身ふっくらの焼き方を教わります。
先祖の教え その1「魚は、触るな」
「ひっくり返しすぎる奴は、身を崩す」
先祖いわく、魚を焼くときに大事なのは、むやみに触らないこと。箸でつついて確認したくなる気持ちは分かるが、触れば触るほど身が崩れる。返すのは一度だけ。それが鉄則だ。
僕は最初、気になって3回もひっくり返した。先祖はため息をついた。「魚は観察するものだ。いじるものではない」
先祖の教え その2「皮から焼け」
「皮目から焼いて、パリッとさせろ」
皮をパリパリにするには、皮目から焼くのが正解。焼く前にキッチンペーパーで表面の水気をしっかり拭き取ることも忘れるな。水気が残っていると、蒸し焼きになって皮がしんなりする。
火加減は中火。強火で一気にやろうとすると、外だけ焦げて中が生焼けになる。焦らず、皮がきつね色になるまで待つ。待てない奴に、パリッとした皮は来ない。
先祖の教え その3「焼けたら、すぐ食え」
「焼きたてが命だ。置くな」
これが一番意外だった。焼き上がったら、すぐに食卓に出すこと。置いておくと、自分の蒸気で皮がしんなりしてしまう。焼きたての香りと音を楽しむのも、料理のうちだ。
皿に移して、箸を入れた瞬間のパリッという音。グリルが怖かった僕でも、その音を聞いたら、もう怖くなくなった。
実践レシピ:先祖公認・基本の塩鮭の焼き方(2切れ分・グリル使用)
材料
・塩鮭の切り身 2切れ
・塩 少々(甘塩の場合は不要)
・大根おろし・レモン 適量(お好みで)
手順
切り身の表面の水気をキッチンペーパーでしっかり拭き取る
塩辛くない甘塩の場合は、そのまま。塩をふる場合は両面に軽くふって10分置き、浮いてきた水気をもう一度拭く
グリルを中火で1分ほど予熱する
皮目を上にして並べ、中火で7〜8分焼く(皮がきつね色になるまで触らない)
一度だけひっくり返し、身側を3〜4分焼く
焼き上がったらすぐに皿に移し、大根おろしやレモンを添える
まとめ
触らない、皮から焼く、焼けたらすぐ食う。どれも地味なコツだけど、全部に理由があった。
第1回の味噌汁、第2回のご飯と同じで、先祖の教えは「理由のある厳しさ」だ。才能がなくても、理由さえ分かれば、魚はちゃんと美味しく焼ける。
次回、第4回は「煮物」。火加減と時間の勝負になりそうです。落し蓋の使い方ひとつで、また怒られそうです。
(シリーズ:「料理の才能がない僕が、先祖に料理を学ぶ」/ 看板タイトル案「先祖めし」)