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僕の直感は当たっていた。でも、一つだけ外れた。|ハッピーライティングマラソン #60|神田昌典さんからのお題「直感が当たったとき、外れたとき」

    今日もバイト。

    3ヶ月目に入った。

    だいぶ慣れてきたけど、始めた頃は無能すぎて、自分でも驚いた。

    バイトの先輩って、
    たった一ヶ月しか違わなくても、
    めちゃくちゃ仕事ができる。

    井上先輩は、同学年なのに僕より一ヶ月早く始めただけで、
    レジも接客も、閉店作業までなんでもこなしてしまう。

    どことなくセンスも良さそうだ。

    そんな先輩と、たまたま駅まで一緒に帰る日があった。

    僕は前から気になってたことがあったのできいてみた。

    「井上さんって、音楽すきそうっすよね。
    どんなの聞いてるんっすか?」

    「バイトの外では、さんづけしないでいいよ。
    そしてタメ口な。」

    「俺はKing GnuとかRADWIMPS かな。」

    「おまえは?」

    「オアシスとか、Wunderhorseかな。
    UKロックばっかりですね。」

    「オアシス、ギター買ったばっかりのとき
    コピーしまくってたよ。」

    その一言を聞いた瞬間だった。

    ステージの照明。

    僕が歌い、
    その横で井上がギターをかき鳴らしている。

    フロアでは、
    観客がリズムに合わせて体を揺らしている。

    そんな光景が、一瞬だけ頭をよぎった。

    あとから思えば、
    それが全部の始まりだった。

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    それから、一か月もしないうちに、
    僕らはバンドを組んだ。

    初めてスタジオに入った日のことを、
    今でも覚えている。

    重い扉を開けると、
    井上はもうギターを抱えていた。

    アンプから鳴るリフを聴いた瞬間、
    僕の直感は、間違っていなかった。

    そんな気がした。

    一曲、みんなで合わせてみた。

    曲が終わると、
    誰も何も言わなかった。

    しばらくして井上が、

    「……いけるんじゃね?」

    と笑った。

    みんなも笑った。

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    それから二ヶ月くらい経ったころ、
    僕らはライブデビューした。

    小さなライブハウス。

    観客は、ほとんど友達やバイト仲間だった。

    一曲目が終わる頃には、
    前の方の観客は、
    みんなリズムに合わせて体を揺らしていた。

    あの日、一瞬だけ思い浮かんだ景色と、
    目の前の光景が重なった。

    それから月に一度くらいのペースで、
    ライブハウスに出演するようになった。

    ライブのたびに、
    お客さんは少しずつ増えていった。

    前回は10人だったのが、次は20人。その次は30人。

    「次はもっと大きい箱でやろう。」

    「そろそろ、オリジナルも演りたいよな。」
    そんな話をする時間が、一番楽しかった。

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    ある日の練習帰りだった。

    駅まで歩く道で、
    井上が急に立ち止まった。

    「ごめん。
    俺、このバンド辞めるわ。」

    「そろそろ受験勉強、
    ちゃんとやらないと。」

    静かな声だった。

    誰も責めなかった。

    高校三年の夏休みを前に、
    僕らは解散した。

    それは、あっけなかった。

    僕は、本気でバンドで有名になるつもりだった。

    この4人ならやれるって。

    でも、その景色を最後まで信じていたのは、
    僕だけだった。

    最後まで読んでいただき、
    ありがとうございます。

    感想をコメントしていただけると、とても嬉しいです。

    本田健さんのハッピーライティングマラソンに参加させて頂いています。

    「直感が当たったとき、外れたとき」

    コイツとならバンドをやっていけるという直感は当たったけど、有名になると思っていたのは当たらなかった。
    という、バンドマンのストーリーを書いてみました。

    #ハッピーライティングマラソン
    #本田健
    #神田昌典





     
     

    ちえ

     
     
    エッセイ書いてます。日々の中で心が動いたことや、ふと気になったことなどを綴っています。本業ロンドン在住ナレーター、シンガー、美咲千絵。元番組制作会社ミキサー。言葉、声、音楽が好きです。

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