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悪に優しきこの国で −裁かれぬ悪と、救われる悪−【第5話】未成年犯罪者

    俺の名は不知火遥斗しらぬいはると。高校1年。とりあえず、県立の普通校に通う、真面目な高校生。

    ……なんて言うのは嘘。
    クラスの陰キャからお小遣い貰って、ゲーセン通い。煙草や酒なんて当たり前じゃん。知らね〜のは親と先公だけさ。学校じゃ真面目で通してるからな。

    あ〜、女子ともヤッてるよ。勿論同意の上さ。最初はビビってたけど、最近じゃ覚醒したんじゃね? すげ〜ヨガるからさ。

    ところでさ、流行りの闇バイトな。学生の中にも序列があって、闇バイトに応募して、実行犯で捕まるのは下っ端なんだよね。俺らは、仕事を斡旋してるだけ。当然上納金は頂く。

    最近じゃ、未成年でも逆送されて、厳しい判決がでるらしいが、何やかんや言ってもプライバシーは保護されるし、『脅されました』で押し通せは、初犯ならなんとかなるだろ? なんせ、少年A だからさ。処罰より更生が優先なんだろ?

    テレビの解説も庶民派弁護士も、馬鹿ばかりだからな。

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    ​【以下法律的解説として】

    本話で描かれた少年の独白は、少年法や刑事司法の「理念」と「運用の隙間」を巧妙に悪用する加害者のリアルな思考回路を反映している。

    ​1. 「指示役・斡旋役」に対する立証の壁
    近年社会問題化している闇バイトにおいて、実行犯ではなく「斡旋・仲介」に留まる者は、自ら直接手を下さないことで発覚のリスクを減らそうとする。 裁判において共謀共同正犯(共同正犯)として厳罰を科すには、指示や利害関係の客観的証拠(暗号化アプリの解析など)が不可欠である。証拠が不十分な場合、加害者の「ただ相談に乗っただけ」「脅されて従っただけ」という主張を切り崩せず、組織の根幹に迫れないまま処罰が軽減される構造的課題が存在する。

    ​2. 「健全育成」の理念と内面の不透明性
    少年法は「処罰」ではなく「保護と更生(健全育成)」を第一の目的としている。そのため家庭裁判所の審判では、本人の反省の態度や家庭・学校環境が重視される。 しかし、学校で「真面目な生徒」を演じ、審判の場で形式的な反省と「自分も被害者(脅されていた)だ」というポーズを貫かれた場合、その仮面の下にある冷酷な損得勘定を調査官や審判官が完全に見抜くことは極めて難しい。

    ​3. 「推知報道の禁止」と匿名の壁
    少年法第61条は、少年の実名や顔写真など個人が特定できる報道(推知報道)を厳しく禁止している。2022年の改正少年法により18・19歳(特定少年)の起訴後の実名報道は解禁されたものの、17歳以下の少年においては、どれほど悪質かつ組織的な犯罪に関与していたとしても、法的な匿名報道のバリアによって守られる。 加害者側はこの「少年A」という匿名の庇護を利用し、社会的なペナルティを最小限に抑え込みながら出所後の再起を企てる。 ​「更生」という国家の善意と「若年者の保護」という制度の枠組み——。 少年犯罪における最大の不条理は、その優しい制度設計そのものが、悪知恵の働く少年たちにとって「ローリスクで逃げ切るための最強のシールド」として機能してしまう点にある。

    但し、以下のような判断と法律の運用もある。だが、闇バイトの指示役は中々捕まらないのも実情である。

    ​1. 闇バイトにおける「指示役・斡旋役(仲介者)」の厳罰

    「直接実行に移さず、仕事を斡旋して上納金を得ていただけ」「自分は手を出していない」という主張は、刑事裁判において免罪符にはならない。

    判例上、犯罪の計画・勧誘・収益の分配に関与していた場合、共謀共同正犯(共同正犯)として実行犯と同等、あるいは指示・統率していた立場として実行犯以上に重い刑事責任が科される。

    ​2. 少年法の改正と「特定少年(18歳・19歳)」の厳罰化

    2022年の改正少年法施行により、18歳および19歳は「特定少年」として位置づけられた。

    特定少年が犯した事件のうち、原則逆送(家庭裁判所から検察官へ送致され、通常の刑事裁判にかける手続き)の対象となる犯罪の範囲が拡大され、組織的詐欺(闇バイト等)や強盗、不同意性行等などの重大事件については大人と同様の刑事罰を受ける確率が大幅に高まっている。

    ​3. 「特定少年」における実名報道の解禁

    少年法61条により、少年の事件における実名や顔写真などの推知報道は禁止されているが、「特定少年」の段階で犯した事件について検察官に逆送され、公判請求(起訴)された場合には、この報道規制が解除される(略式手続きを除く)。

    そのため、「少年Aとしてプライバシーが守られる」という前提は、18歳・19歳の重大犯罪や組織犯罪においては必ずしも当てはまらない。

    ​4. 少年審判における「脅された」という主張の限界

    闇バイト等において「上の人間に脅されていた」「断れなかった」と主張するケースは多いが、主体的に関与して利益(上納金等)を得ていた実態がある場合、緊急避難や脅迫による意思抑圧とは認められず、情状の酌量要素としては極めて限定的な評価にとどまる。


    本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。
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    noteに登録したのは、2025年1月です。 主に手がけているのは短編小説です。人間の機微を描く『恋愛』『不倫』、思考を揺さぶる『社会派』、想像力を広げる『ファンタジー』など、ジャンルにとらわれず多岐にわたるテーマを描いています。

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