
Day ⑲|ギターStrings of Autumn
日本では昔から、
物や道具にも神様が宿るといわれてきた。
だから、物を大切にしなさい。
子どもの頃から、
そんなふうに言われて育った。
幼い頃は、自分の物そのものが少なかったから、
今思えば、持っている物を
それなりに大切にしていたように思う。
けれど大人になり、
自分で働いてお金を稼ぐようになると、
欲しい物を自分で買えるようになった。
世の中には、
安くて便利な物がたくさんある。
好きな物を見つければ買い、
使わなくなれば手放す。
そんなことを繰り返すうちに、
いつの間にか、子どもの頃ほど
物を大切にしなくなっていた。
そのことに気づいてからは、
何かを買う前に、
「本当に必要なのだろうか」
と、一度立ち止まるようになった。
物との付き合い方を、
少しずつ見直している。
そんなことを考えていると、
家にある楽器のことも気になってきた。
キーボード、鍵盤ハーモニカ、
リコーダー、ハーモニカ、オカリナ、
カスタネット、ギター、エレキギター、
タンバリン、トライアングル、木琴、鈴……。
子ども用の小太鼓やシンバルもある。
以前は、大正琴やオルガンもあった。
どうしてこんなに楽器があるのだろう。
振り返ってみると、
子どもの頃から、
いろいろな楽器に触れる機会があった。
小学生のときには、
なぜか校内の器楽隊のメンバーになっていた。
ピアノを習っていたからかもしれない。
その活動で、
いろいろな楽器に触れたことが、
楽器への興味につながったのだと思う。
学校で使っていたアコーディオンが欲しくなったり、
フルートに憧れて、買ってほしいとねだったこともあった。
中学生になると、
ギターの授業があった。
しばらくの間、
ギターの練習をしていた。
テストもあったので、
真面目に練習した。
いつかギターで弾き語りをするのもいいな、
と思ったこともある。
けれど、その後は運動部の活動に夢中になり、
いつの間にか、その気持ちも薄れていった。
それから数年が経った頃、
バイオリンと、その職人について書かれた
実話を読んだ。
一本の木が、
長い時間をかけて楽器になっていく。
材料となる木を選び、
削り、形を整え、
いくつもの工程を重ねて、
ようやく一つのバイオリンが生まれる。
そこには、
職人の技術だけではなく、
楽器に対する想いや、
長年積み重ねてきた職人魂があった。
その話を読んだとき、
ふと、自宅にあるギターを思い出した。
今ではケースの中で、
すっかり埃をかぶっている。
長い間、
ほとんど触れていない。
でも、そのギターにも、
ここに来るまでの年月があったはずだ。
どんな木だったのだろう。
誰が作ったのだろう。
誰の指に触れ、
どんな音を響かせてきたのだろう。
弦を張られ、
音を鳴らし、
誰かのそばに置かれていた時間。
たとえ今は静かに眠っていても、
そこに積み重なった年月まで
なくなったわけではない。
木から生まれた楽器は、
音を奏でながら、
触れた人の時間も
一緒に抱えているのかもしれない。
そう思うと、
ケースの中で眠っているギターが、
少し違って見えてきた。
物は、ただの物ではない。
使った時間や、
思い出や、
そこに関わった人の手の温度まで、
静かに抱えているものなのかもしれない。
いつかまた、
あのギターに触れてみよう。
そんなことを思いながら、
この曲を創った。

🎵 楽曲「年月を抱いて」
https://drive.google.com/file/d/1R7NYP7TfPDmbL88N630FFGb-3YtJDC1H/view?usp=drive_link
Lyrics|歌詞
森の奥で木は空を見ていた
雨の匂いと鳥の声を抱いた
伐られた朝に年輪を閉じて
知らない部屋へ運ばれていった
削られた肌に光が宿り
細い弦が六本 張られた日
まだ何も知らない胸の奥で
指先を待つ静けさがあった
鳴らされるたび 僕は時を知る
ひとつの響きが部屋を渡っていく
触れた指の温度も 去っていく背中も
木と弦のあいだに残っている
強く押された跡 小さな傷
何度も拭かれた艶やかな肩
窓辺に置かれた長い年月
季節の数だけ音色を覚えた
弦が切れた夜 眠れずにいた
沈黙の重さを初めて知った
新しい弦が結ばれた朝
また遠い庭へ声を返した
鳴らされるたび 僕は時を知る
ひとつの響きが誰かを包んでいく
触れた指の癖も こぼれたため息も
木と弦のあいだに残っている
森を離れても 土の記憶は消えない
最後の一音が静かにほどける
僕はここにいる
年月を抱いて