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月曜日の私、金曜日の自分が残した仕事と対面する

    「あと少し!」

    月曜の朝、モニターのふちに貼られた黄色い付箋が、
    出社したばかりの私を励ましていました。

    字が、私です。
    この感嘆符にも見覚えがある。帰りたいときの筆圧です。

    こんにちは。ChocobraのSNS担当、
    自分から届いた仕事を受取拒否したい女、ゆうこです。

    金曜の夕方、この付箋を書いた人は、もういません。
    正確には、3回寝て、今ここに座っています。
    でも話し合いができる気がしない。

    あちらは週末を背負っていた。
    こちらは月曜を背負っている。
    交渉の条件が違いすぎます。

    📂 「あと少し」の内訳が、どこにもない

    ラボの机でパソコンを開き、SNS投稿案のファイルを出しました。
    今週分の案を3つ、午前中に確認してもらう予定です。

    1案目、書いてある。
    2案目、書いてある。
    3案目。

    「ここ、いい感じに」

    見出し欄にそれだけありました。
    その下は、白い。

    金曜の私へ。
    いい感じは、私も希望しています。

    カーソルを下へ動かしても、隠れた続きはありません。
    文書の最後まで白い。スクロールするほど、のびのびした未完成です。

    私は黄色い付箋を剥がし、裏返しました。
    途中まで考えた内容が書いてあるかもしれない。

    裏には、笑った顔が描いてありました。

    応援を両面にするな。
    片面は業務に使ってほしかった。

    隣でノートを開いていた師匠が、付箋を見つめる私に気づきました。

    引き継ぎ相手と、連絡が取れないの?

    「取れません。金曜の私なので」

    ずいぶん身近なところで途絶えているね。

    「しかも向こうは、全部分かった顔で帰ってるんです」

    師匠へ付箋の表を見せ、裏も見せました。
    師匠は顔の絵を少し長く見てから、私へ視線を戻します。

    この顔を描く時間は、あったんだね。

    「今の私がいちばん聞きたくなかった事実です」

    金曜の夕方を思い出しました。

    3案目に使う写真が2枚あって、どちらにするか決められなかった。
    ここまで書けば、月曜の私は分かるだろうと思ったんです。

    何を根拠に。
    月曜の私は、今朝の傘も忘れました。

    机のクリアファイルから、候補写真を印刷した紙を出しました。
    端には小さく「寄り/引き」とあります。

    そうでした。見せたいのは商品の大きさなのか、使う場面なのか。
    そこから決まっていなかった。

    「師匠。あと少しって、文字数のことでした。決めることは残ってました」

    金曜のゆうこには、途中の景色が見えていたんだろうね。
    月曜のゆうこには、その景色が届いていない。

    「景色じゃなくて、仕事だけ配送されました」

    笑顔も付いてきた。

    「そこは着払いで返したいです」

    師匠が小さく笑いました。
    私は付箋を表に戻して渡します。

    師匠は机の端にあった小さなホワイトボードを、2人の間に寝かせました。
    黄色い付箋を貼り、脇のペンを取ります。

    「帰るのをやめればよかったんですかね」

    帰っていいよ。あの時間、ゆうこは同じ写真を何度も開いていたし。
    月曜まで休んだら、写真の好みが決まるとは限らなかっただけ。

    「休み明けの私を、ちょっと買いかぶりました」

    元気になった自分と、全部覚えている自分は別だから。

    元気のほうも、まだ到着待ちです。
    でも金曜の私がサボって笑顔を描いていたわけではないことは、思い出しました。

    疲れていた。帰りたかった。
    それは分かる。
    分かるけど、この顔の口角は高すぎる。

    🖊️ 師匠の仕事だけ、囲み線の外にいる

    師匠は自分のノートから青い付箋を剥がし、
    黄色い付箋の少し上に貼りました。

    青いほうには「検討中」。
    企画の名前を2つまで絞ったところで、金曜から止まっているそうです。

    「師匠にもあるんですね。月曜行きの荷物」

    こちらは、候補を比較しているところ。

    師匠は黄色い付箋の下に「持ち越し」と書き、四角で囲み始めました。
    左から上へ、ペンが動きます。

    そのまま引けば、青い付箋も枠に入る。
    と思ったところで、上の線だけ、すっと低くなりました。

    黄色は中。青は外。

    「師匠のだけ、税関を通らずに月曜へ来ましたね」

    師匠が、四角を右下で閉じました。
    ペンのふたを閉める手が、やけに丁寧です。

    止まっている理由が違うから、分けようと思って。

    「私も写真を比較してたんですけど」

    師匠は青い付箋を見ました。
    次に、私が出した候補写真を見ました。

    「『検討中』って書くと、週末も働いていた感じがしますね」

    ……仕事が進んだわけではないね。

    師匠がペンを置き、青い付箋を剥がしました。
    今度は、四角の中へ貼ります。

    これも、今日の私が決めることだった。

    「ようこそ。月曜日へ」

    ずっといたよ。

    「枠の外から視察されているのかと思いました」

    師匠が笑いました。
    私はその顔を見て、少し肩の力が抜けました。

    月曜をうまく運営している人に、私だけ怒られているわけじゃない。
    隣にも、金曜から届いた荷物がある。
    しかも少し、いい名前が付いている。

    「私も次から『構想中』って書こうかな」

    名前を替えても、中身はそのまま届くよ。
    小鼻の脇のくぼみに残った皮脂やメイクも、翌朝になれば別のものになるわけではないし。

    「週明けの仕事に、毛穴まで合流させないでください」

    朝の担当が、後から困ることはある。

    「担当って言えば、まだ仕事の話に戻れると思ってます?」

    師匠は四角の中の付箋を、指で軽く押さえました。
    説明を追加する代わりに、黄色いほうを剥がして私へ返します。

    写真、今はどちらを使いたい?

    私は受け取った付箋を机に置き、印刷した2枚を見比べました。

    今週の投稿で見せたいのは、手に持ったときの大きさ。
    それなら、引いた写真のほうが伝わりそうです。

    パソコンの3案目へ戻り、写真を入れました。
    「ここ、いい感じに」を消し、見出しを打ちます。

    少なくとも、今度は商品のことが書いてあります。
    画面が急に、仕事をしている人の画面になりました。

    「金曜の私、ここまで考えてたかもしれません」

    そうかもしれないね。

    「でも、笑顔からは読み取れなかったです」

    師匠は青い付箋をボードから剥がし、自分のノートへ戻しました。
    ペンのふたを開け、候補の名前の横に何か書き足しています。

    「今、そちらも動きました?」

    うん。名前を選ぶ前に、誰に伝える企画かを書いていた。

    「私の笑顔から、そこまで学べるとは」

    笑顔からではないよ。

    即答でした。
    手柄の配送先を、間違えかけました。

    私は本文を書き足し、3案目をひとまず確認してもらえる形まで進めました。

    終わったわけではありません。でも、白いままではなくなりました。

    🗂まとめ|金曜日の私を、完全には悪者にできない

    午前の確認まで少し時間があったので、
    新しい付箋に「3案目、写真のサイズ表記を確認」と書きました。

    「あと少し!」より地味です。
    でも、次に見る私が何をすればいいかは分かる。

    古い黄色い付箋は、丸めて捨てようとして、やめました。
    裏の顔を見ると、金曜の私も私なりに、月曜を応援していたらしい。

    応援の方法だけ、だいぶ雑だった。

    新しいメモをモニターのふちに貼り、古い付箋はノートの後ろへ移しました。
    笑顔には、いったん広報へ回ってもらいます。

    🎤ゆうこのひとことメモ

    金曜の私へ。
    仕事を残すなら、お菓子も残してください。

    机の引き出しを開けたら、そっちは空でした。
    食べる判断だけは、先送りしなかったんですね。

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    24時間毛穴のことを考えてしまう研究員のちふゆと、「なんでそうなるのか」が気になって仕方ないSNS担当ゆうこが、Chocobraラボでいろんなものを観察しています。 日常の違和感も、成分の不思議も、いったんラボに持ち帰ります。ゆうこの観察にはまる人、増えてます。

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