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ハイゲインだけでは終わらない。ENGL Invader 150が4チャンネルへ分けたもの

    ENGLという名前から、どのような音を想像するだろうか。
    硬質。
    速い。
    低域が締まっている。
    深く歪ませても輪郭が残る。
    メタル向け。
    低いチューニングでも崩れにくい。
    その印象は、間違いではない。
    ENGLは、現代的なハイゲイン・アンプを考えるうえで重要なメーカーである。
    しかし、それだけでは少し足りない。
    ENGLの面白さは、単に深い歪みを作ったことではない。
    複数の役割を一台へ収める。
    ライブで切り替える。
    外部機材と組み合わせる。
    必要な状態を記憶する。
    大出力でも、音を整理する。
    ハイゲインを、運用できる機材へする。
    その考え方がある。
    ENGL Invader 150は、その方向を理解しやすいアンプである。
    150W。
    オールチューブ。
    4チャンネル。
    MIDI制御。
    大型である。
    ノブも多い。
    最初に見ると、少し身構える。
    しかし、複雑さを見せるために作られたアンプではない。
    一台で異なる音楽的役割を担うために、音を分けた。
    Invader 150は、そのためのアンプである。

    ENGLとは何者か

    ENGLは、ドイツのギターアンプ・メーカーである。
    1980年代からアンプを展開し、真空管アンプへMIDI制御や複数チャンネルを取り入れてきた。
    古い真空管アンプの音を、そのまま復刻する。
    それだけを目指したメーカーではない。
    現代の演奏環境で使う。
    複数の音色を切り替える。
    深い歪みを作る。
    低域を整理する。
    ノイズを管理する。
    外部機材を接続する。
    ライブで再現する。
    そのために必要な機能を、アンプへ組み込む。
    CSLでは、以前にENGL Tube Preamp Type 520を取り上げた。
    Type 520は、ENGLがラック型プリアンプという形式で音色を整理していた時代を示す機材である。
    プリアンプを独立させる。
    外部パワーアンプと組み合わせる。
    システムの一部として扱う。
    Invader 150は、別の方向へ進む。
    複数の音色。
    切替。
    外部機材との連携。
    大出力のパワーアンプ。
    それらを、再び一台のヘッドへまとめる。

    Invader 150は、どのようなアンプか

    今回扱うのは、初代のENGL Invader 150である。
    型番はType E640。
    150Wのオールチューブ・ギターアンプ・ヘッドである。
    4つのチャンネルを持つ。
    各チャンネルには、基本となるGain、Bass、Middle、Treble、Volumeが用意されている。
    さらに、Hi Gain。
    Bright。
    Master A / B。
    Presence。
    Depth Punch。
    FX Loop I / II。
    Noise Gate。
    Amp Mute。
    複数の機能がある。
    背面には、MIDI In、MIDI Thru、ENGL独自のシリアル・コントロール端子、Pre Line Output、Tuner Output、2系統のFXループなどが並ぶ。
    アンプ単体で音を作る。
    足元から切り替える。
    必要に応じて、外部エフェクトを接続する。
    MIDIシステムへ組み込む。
    Invader 150は、アンプというより、演奏システムの中心に近い。

    4チャンネルは、歪み量を4段階に分けただけではない

    4チャンネル。
    数字だけを見ると、わかりやすい。
    クリーン。
    クランチ。
    リズム。
    リード。
    そのように割り当てればよい。
    しかし、Invader 150の意味は、歪み量を順番に増やしたことだけではない。
    チャンネルごとに、音の役割を分ける。
    クリーンを作る。
    軽い歪みを作る。
    低域を整理したリズムを作る。
    単音を前へ出すリードを作る。
    それぞれに、別のイコライザーとVolumeを持たせる。
    Gainだけを動かすのではない。
    音の重心も変える。
    低域の量。
    中域の位置。
    高域の当たり方。
    音量。
    コンプレッション。
    アタック。
    曲の中で必要な役割へ合わせる。
    4チャンネルは、音色の数を増やすためだけのものではない。
    アンプの中に、複数の仕事場を作るための機能である。

    クリーンを、おまけにしない

    ハイゲイン・アンプでは、歪みチャンネルへ注目しやすい。
    どの程度歪むのか。
    低域は締まっているか。
    速いリフで輪郭が残るか。
    単音が伸びるか。
    重要である。
    しかし、ライブで一台のアンプを使うなら、クリーンも必要になる。
    アルペジオ。
    カッティング。
    空間系エフェクト。
    静かなイントロ。
    歪みとの対比。
    クリーンが細い。
    音量差が大きい。
    高域だけが目立つ。
    低域が急に消える。
    それでは、一台で完結しにくい。
    Invader 150は、4チャンネルを持つ。
    クリーンを、歪みへ入る前の待機状態として扱わない。
    独立したチャンネルとして調整する。
    低域。
    中域。
    高域。
    音量。
    別に決める。
    ハイゲイン・アンプだからこそ、クリーンも独立させる意味がある。

    クランチは、曖昧な中間地点ではない

    クリーンとハイゲインの間に、軽い歪みがある。
    クランチ。
    少し歪む。
    ピッキングで変わる。
    ギター側のVolumeを戻すと、少し引く。
    強く弾くと、前へ出る。
    一見すると、ハイゲイン・アンプでは脇役に見える。
    しかし、音楽では重要である。
    常に最大ゲインを使うわけではない。
    コードを鳴らす。
    リフを少し荒くする。
    歌の後ろで、存在感を残す。
    クリーンより強く、リードより控える。
    複数チャンネルを持つアンプでは、中間地点も独立して作れる。
    Gainノブを毎回動かさなくてよい。
    必要な状態へ戻れる。
    クランチは、歪み量の途中ではない。
    曲の中で役割を持つ、一つの音色である。

    リズムとリードを分ける意味

    深い歪みも、一種類ではない。
    リズム用の歪み。
    低域を整理する。
    アタックを残す。
    パームミュートを短く切る。
    コードの構成音を潰さない。
    ベースとバスドラムの場所を残す。
    リード用の歪み。
    単音を伸ばす。
    中域を少し前へ出す。
    コンプレッションを増やす。
    音量を上げる。
    フレーズを聞かせる。
    同じGain量でも、必要な設定は違う。
    一つのチャンネルで両方を担当する場合、ブースターや外部EQを使う方法もある。
    それもよい。
    Invader 150では、別のチャンネルとして作れる。
    リズム。
    リード。
    役割を分ける。
    一台のアンプへ、複数の状態を保存する。

    Hi Gainは、単純な追加ゲインではない

    Invader 150には、Hi Gain切替がある。
    歪みを増やす。
    説明すると、それだけに見える。
    しかし、実際には使い方が広い。
    クリーン寄りのチャンネルへ、少し強い反応を加える。
    クランチを、より押し出す。
    リズムの飽和感を増やす。
    リードの伸びを作る。
    チャンネルとHi Gainの組み合わせによって、音色の段階が増える。
    重要なのは、ゲイン量を最大にすることではない。
    必要な反応を選ぶこと。
    歪ませすぎれば、アタックが消える。
    低域が潰れる。
    コードの形が見えにくくなる。
    Invader 150のような多機能アンプでは、深く歪ませられる。
    しかし、深く歪ませられることと、常に深く歪ませることは違う。

    150Wは、音量だけの数字ではない

    150W。
    大きい。
    現在の自宅環境では、持て余す数字にも見える。
    小型アンプ。
    ロードボックス。
    IR。
    モデラー。
    プロファイラー。
    大出力アンプを使わなくても、良い音を作れる。
    それでも、150Wには意味がある。
    大きなヘッドルーム。
    低域の余裕。
    強く弾いたときの安定感。
    深い歪みでも、低音弦を受け止める力。
    大きなキャビネットとの関係。
    音量を上げるためだけではない。
    崩さずに鳴らすための出力でもある。
    低いチューニング。
    速いリフ。
    大きな低域。
    複数の楽器が重なるバンド。
    パワーアンプが簡単には飽和しない。
    プリアンプで作った音を、大きな余裕でキャビネットへ送る。
    150Wという数字は、単なる大音量ではない。
    制御のための余裕でもある。

    Depth Punchが残す低域

    Invader 150には、Depth Punchがある。
    パワーアンプ側の低域の返り方へ関わるコントロールである。
    低域を増やす。
    それだけではない。
    身体へ返る感触。
    パームミュートの押し出し。
    キャビネットの動き。
    低音弦の存在感。
    調整する。
    しかし、上げればよいわけではない。
    低域が多すぎる。
    一人で弾くと気持ちよい。
    しかし、録音では輪郭が見えにくい。
    バンドではベースやバスドラムと重なる。
    Depth Punchは、迫力を足すためだけのノブではない。
    必要な環境へ合わせるためのノブである。
    キャビネット。
    音量。
    部屋。
    チューニング。
    バンド編成。
    条件によって適切な位置は変わる。

    PresenceとDepth Punch

    Presenceは、高域側の反応へ関係する。
    Depth Punchは、低域側の返り方へ関係する。
    プリアンプのTrebleやBassとは、少し役割が違う。
    Trebleを動かす。
    歪みの表情も変わる。
    音の輪郭も変わる。
    Presenceを動かす。
    パワーアンプ側で、音の当たり方を調整する。
    Bassを動かす。
    低域の量が変わる。
    Depth Punchを動かす。
    キャビネットから返る低域の感触が変わる。
    完全に独立しているわけではない。
    しかし、役割を分けて考えられる。
    Invader 150は、音を一つのEQだけで作らない。
    前段。
    後段。
    チャンネル。
    キャビネット。
    複数の場所で整える。

    Master A / B

    Invader 150には、Master AとMaster Bがある。
    二つのマスターボリューム。
    ソロで少し前へ出る。
    曲によって音量を変える。
    同じチャンネルのまま、客席へ届く量だけを変える。
    使い方はわかりやすい。
    歪みチャンネルを切り替える。
    その結果、音量も変わる。
    それだけでは調整しにくい場合がある。
    同じ音色のまま、少しだけ前へ出たい。
    そこで、Masterを切り替える。
    新しい音を作るのではない。
    役割を変える。
    ライブでは重要である。

    2系統のFXループ

    Invader 150には、2系統のFXループがある。
    Send。
    Return。
    Balance。
    DryとEffectの混ざり方を調整する。
    外部エフェクトを、歪みの後ろへ入れる。
    ディレイ。
    リバーブ。
    コーラス。
    ラック型エフェクト。
    マルチエフェクター。
    曲によって使い分ける。
    一つのループだけでは足りない場合がある。
    常に使う機材。
    必要な場面だけ使う機材。
    別の設定で使う機材。
    2系統へ分ける。
    そして、MIDIから切り替える。
    Invader 150は、アンプ単体の音だけを考えていない。
    外部機材を含むシステムとして使うことを前提にしている。

    Noise Gateを内蔵する意味

    ハイゲインでは、ノイズも増える。
    Gainを上げる。
    ブースターを使う。
    複数の機材を接続する。
    ライブ会場の電源環境も変わる。
    弾いていないときのノイズが気になる。
    Invader 150にはNoise Gateがある。
    背面でThresholdを調整する。
    深い歪みを使う。
    しかし、演奏していない部分では静かにする。
    実用的である。
    ただし、強くかけすぎると弾き心地も変わる。
    弱く弾いた音が消える。
    余韻が途中で切れる。
    ギター側のVolumeを戻したとき、反応が不自然になる。
    Noise Gateは、音色を良くする魔法ではない。
    必要な範囲で使う。
    Invader 150には、現場で必要になる機能が最初から組み込まれている。

    MIDIは、音をデジタル化しない

    Invader 150は、MIDI制御に対応する。
    MIDIと聞くと、デジタル・アンプを想像するかもしれない。
    しかし、Invader 150は真空管アンプである。
    音そのものをMIDIで送るわけではない。
    MIDIで送るのは、命令である。
    どのチャンネルを使うのか。
    Hi Gainを使うのか。
    FX Loopを切り替えるのか。
    Master A / Bを切り替えるのか。
    Noise Gateを有効にするのか。
    Amp Muteを使うのか。
    必要な状態を、プログラムとして呼び出す。
    一回踏む。
    複数の機能が切り替わる。
    音は真空管回路で作る。
    操作はデジタル制御で整理する。
    ENGLらしい考え方である。

    Z-9という選択肢

    大規模なMIDIシステムを組まない。
    それでも、足元から操作したい。
    そのために、ENGL Z-9という専用フットスイッチがある。
    4チャンネルへアクセスする。
    必要な機能を割り当てる。
    標準的なステレオ・ケーブルで接続する。
    あるいは、MIDIフットボードとして使う。
    多機能アンプは、必ず大規模なラック・システムを必要とするわけではない。
    必要な規模で使える。
    シンプルに使う。
    必要なら、広げる。
    Invader 150には、その余地がある。

    多機能アンプは、複雑なのか

    Invader 150の前面を見る。
    ノブが多い。
    背面を見る。
    端子も多い。
    最初は、複雑に見える。
    しかし、役割を分けると理解しやすい。
    4つの音色を作る。
    Hi Gainで反応を変える。
    Master A / Bで音量を変える。
    PresenceとDepth Punchでパワーアンプ側を整える。
    FX Loopを使う。
    Noise Gateを調整する。
    必要ならMIDIへ保存する。
    すべてを使う必要はない。
    一つのチャンネルだけを使ってもよい。
    足元からチャンネルだけ切り替えてもよい。
    FXループを一つだけ使ってもよい。
    必要になったとき、広げられる。
    機能が多いことと、常に複雑に使うことは同じではない。

    Invader IIとは分けて考える

    Invaderには、後継機としてInvader IIがある。
    Invader IIでは、Sound機能や追加の音色調整が整理され、さらに広いボイシングを扱えるようになった。
    しかし、今回扱っているのは初代Invader 150である。
    Type E640。
    初代には、初代の意味がある。
    4チャンネル。
    Hi Gain。
    Bright。
    Master A / B。
    Presence。
    Depth Punch。
    2系統FXループ。
    Noise Gate。
    MIDI制御。
    複雑に見える。
    しかし、考え方は明確である。
    複数の役割を、一台へまとめる。
    それぞれを、ライブで使える形へ整理する。
    後継機があるから、初代が未完成だったという話ではない。
    初代が何を目指したのか。
    そこを見る。

    Type 520からInvader 150へ

    ENGL Type 520は、ラック型プリアンプである。
    プリアンプを独立させる。
    パワーアンプと組み合わせる。
    ラック・システムの一部として使う。
    Invader 150では、それらをヘッドへ戻す。
    プリアンプ。
    パワーアンプ。
    切替。
    外部エフェクト。
    MIDI。
    一台へまとめる。
    ラック・システムの思想が消えたわけではない。
    ヘッドの中へ統合された。
    ENGLは、古い形式へ戻ったのではない。
    ラック時代に得た運用性を、アンプヘッドへ持ち込んだ。

    CSLで記録する意味

    Invader 150を記録する意味は、単にENGLのハイゲインを残すことではない。
    もちろん、深い歪みには価値がある。
    低域。
    輪郭。
    速い反応。
    リードの伸び。
    150Wの余裕。
    しかし、それだけでは足りない。
    4つのチャンネル。
    Hi Gain。
    Master A / B。
    Presence。
    Depth Punch。
    FX Loop。
    Noise Gate。
    条件を変える。
    同じアンプでも、役割が変わる。
    クリーン。
    クランチ。
    リズム。
    リード。
    一つの音へ絞りすぎない方がよい。
    一方で、数を増やしすぎても使いにくい。
    何が違うのか。
    どの場面で使うのか。
    どの設定を残すのか。
    整理する必要がある。
    Invader 150は、プロファイル収録でも選択の設計が重要になるアンプである。

    ハイゲインだけでは終わらない

    ENGL Invader 150は、ハイゲイン・アンプである。
    深く歪ませられる。
    大出力である。
    低域も強い。
    しかし、それだけではない。
    クリーン。
    クランチ。
    リズム。
    リード。
    音量切替。
    外部エフェクト。
    ノイズ管理。
    MIDI制御。
    一台で担う。
    150Wは、音量のためだけではない。
    4チャンネルは、種類を増やすためだけではない。
    MIDIは、デジタル化のためではない。
    必要な音へ戻る。
    演奏中に切り替える。
    大きな歪みを、使える形へ整理する。
    Invader 150が作ったのは、単なるハイゲインではない。
    複数の役割を、現場で扱える状態へ分けたアンプである。


    関連記事

    Chuuni Sound Lab
    「ENGLは、どこでENGLになったのか。E520というラック・プリアンプ」
    ※公開済み記事のURLを追記
    Chuuni Sound Lab
    「操作が多いアンプは、本当に複雑なのか。多機能化が増やしたのは、迷いではなく再現性だった」
    ※公開後にURLを追記
    Chuuni Sound Lab
    「多機能ヘッドは、なぜ必要になったのか。Laney VH-100Rという90年代の回答」
    https://note.com/chuuni_sound_lab/n/n89418d25fb24
    Chuuni Sound Lab
    「過去を掘り返さず、未来を作る。Diezel Herbertという現代ロックアンプの完成形」
    https://note.com/chuuni_sound_lab/n/ncca34363ee58


    参考資料

    ENGL
    「Invader 150 Type E640 Operator’s Manual」
    https://www.zikinf.com/manuels/engl-invader-150-manuel-utilisateur-en-45229.pdf
    ENGL
    「Invader II E642 II Operator’s Manual」
    https://www.engl-amps.com/wp-content/uploads/2021/12/om_e642ii.pdf
    ENGL USA
    「Owner’s Manuals」
    https://www.engl-usa.com/pages/owners-manuals
    ENGL
    「ENGL Amplification」
    https://www.engl-amps.com/

     
     
    Chuuni Sound Lab(CSL)は、ギターアンプや周辺機材を実機で検証し、歴史の脇道に残された音をKemperプロファイルとして記録・販売するプロジェクトです。

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