クリーンだけでは終わらない。The Twinという1980年代Fenderの意欲作
Fenderと聞いて、どのような音を思い浮かべるだろうか。
深く、太く、明るいクリーン。
コードを鳴らすと、音が広がる。
強く弾いても崩れにくい。
ペダルを接続しても、受け止める。
Twin Reverb。
Deluxe Reverb。
Super Reverb。
Bassman。
名前を知らなくても、音は聞いたことがある。
「Fenderらしいクリーン」と言えば、多くの人が共通したイメージを持っている。
The Twinには、その音がある。
しかし、それだけではない。
The Twinは、クリーン専用のアンプではない。
ディストーションもよい。
複雑な音作りもできる。
独立2チャンネルとしても使える。
出力も切り替えられる。
Fenderが伝統的なクリーンを捨てずに、1980年代の要求へ本気で向き合ったアンプである。
Twinという名前の重さ
Fender Twinには、長い歴史がある。
大きな出力。
豊かなクリーン。
大きなヘッドルーム。
ステージで使える音量。
コードを鳴らしたときの広がり。
Twin Reverbは、Fenderらしいクリーンの象徴として長く使われてきた。
しかし、時代が進むと、アンプへ求められるものも変わる。
クリーンだけでは足りない。
歪みも必要になる。
チャンネル切替も必要になる。
音量差を管理したい。
外部エフェクトも使いたい。
演奏中に複数の状態を切り替えたい。
Fenderも、その要求と無関係ではいられなかった。
Rivera期の後に続く流れ
1980年代前半、FenderはPaul Riveraが関わったアンプ群を展開した。
伝統的なFenderクリーンを残す。
その一方で、アンプ本体で歪みを作る。
チャンネルを切り替える。
ブーストする。
音色の幅を広げる。
The Twinは、Paul Rivera本人が設計したアンプではない。
ここは区別する必要がある。
しかし、Rivera期以後のFenderが取り組んできた方向から切り離すべきでもない。
クリーンだけに留まらない。
歪みも作る。
音色を切り替える。
出力を管理する。
複雑なサウンドデザインへ進む。
The Twinは、その蓄積の先にある。
The Twinという1980年代後半のアンプ
Fender公式のTwin史では、The Twinは1987年から1994年にかけて展開されたモデルとして整理されている。
赤いノブを持つ個体がよく知られている。
後期には黒いノブの個体もある。
名前はシンプルである。
The Twin。
しかし、中身は単純ではない。
Channel 1。
Channel 2。
チャンネル切替。
独立2チャンネル運用。
両チャンネルの並列運用。
複数のプル式トーン機能。
エフェクトループ。
Power Amp Thru。
High / Low Power切替。
単なる大出力クリーン・アンプではない。
Fenderが、伝統と機能性を一台へまとめようとしたアンプである。
みんなが欲しいFenderのクリーン
The Twinを鳴らす。
クリーンは現代的である。
太い。
そして、いわゆるFenderらしい音がする。
この言い方は曖昧に見えるかもしれない。
しかし、弾くとわかる。
多くの人が、Fenderと聞いて思い浮かべる音がある。
広がり。
太さ。
明るさ。
力強さ。
高いヘッドルーム。
コードを鳴らしたときの説得力。
The Twinには、それがある。
ヴィンテージ・アンプの完全な復刻ではない。
それでも、Fenderのクリーンとして成立している。
クリーンだけでは終わらない
The Twinを、クリーンだけに価値があるアンプとして扱うべきではない。
ディストーション・サウンドもよい。
ここが重要である。
Fenderアンプには、クリーンは素晴らしいが、内蔵ドライブは積極的に使いたくない機材もある。
The Twinは違う。
歪みも、アンプの機能として成立している。
Channel 2でゲインを上げる。
トーンを調整する。
必要なら、ノブを引く。
音の形を変える。
Fenderが、クリーンのメーカーであることを捨てずに、ディストーションへ向き合った結果が見える。
ノブを引く
The Twinの操作で面白いのは、トーン・ノブを回すだけではないことである。
引く。
Treble Boost。
Mid Cut。
Mid Boost。
PresenceのNotch機能。
同じチャンネルの中で、音の設計を変える。
高域を押し出す。
中域を削る。
中域を前へ出す。
輪郭を変える。
単に歪み量を増やすだけではない。
トーンの形を変える。
現在なら、ペダル、外部EQ、マルチエフェクターで行うことかもしれない。
The Twinは、それをアンプの中へ入れた。
複雑である。
しかし、試す価値がある。
独立2チャンネルとして使う
The Twinの入力構成も興味深い。
通常のチャンネル切替として使える。
しかし、それだけではない。
Channel 1とChannel 2へ別々の楽器を接続し、独立した2チャンネル・アンプとして使うこともできる。
両チャンネルを並列で使うこともできる。
現在のギターアンプでは、あまり一般的ではない。
一台のコンボ。
しかし、単一用途へ閉じない。
複数の楽器。
異なる音色。
並列での音作り。
The Twinは、思った以上に自由である。
出力も切り替える
The Twinは、大きな出力を持つ。
しかし、常に最大出力だけで使う必要はない。
High / Low Power切替がある。
用途に応じて、出力段の動作を変える。
大きなヘッドルームが必要な場面。
音量を抑えたい場面。
より扱いやすい出力で試したい場面。
選べる。
現在では、出力切替を持つ真空管アンプは珍しくない。
しかし、The Twinは1980年代後半に、その要求へ向き合っていた。
単に大きなTwinではない。
使い方を選べるTwinである。
重い
The Twinの欠点は、わかりやすい。
重い。
持ち運ぶ。
階段を上る。
車へ積む。
ステージへ運ぶ。
その時点で、楽ではない。
現在では、小型アンプ、モデラー、プロファイラー、軽量パワーアンプなど、選択肢が増えた。
The Twinの重量は、明確な弱点である。
しかし、音と機能を考えると、それ以外に大きな欠点を見つけにくい。
クリーンは太い。
Fenderらしい。
ディストーションもよい。
音作りの幅もある。
独立2チャンネルでも使える。
出力も切り替えられる。
不人気であることが不思議に感じる。
なぜ評価されにくいのか
The Twinは、ヴィンテージTwin Reverbのような神話性を持たない。
Blackface期の復刻ではない。
軽量でもない。
シンプルでもない。
見た目も、伝統的なFenderアンプとしては少し異質である。
わかりやすい物語を持ちにくい。
しかし、実機を鳴らすと印象が変わる。
クリーンがよい。
ODもよい。
機能も豊富である。
単純なヴィンテージ回帰ではない。
Fenderが、1980年代の要求へ本気で向き合った結果がある。
Fenderが未来へ進もうとしたアンプ
The Twinは、過去のFenderを否定するアンプではない。
伝統的なクリーンがある。
しかし、そこへ留まらない。
歪みを作る。
チャンネルを切り替える。
複数のトーン機能を組み合わせる。
出力を変える。
独立2チャンネルでも使う。
Fenderクリーンを残しながら、別の音へ進む。
The Twinは、Rivera期以後のFenderが積み上げた機能性を、一台へまとめた意欲作に見える。
記録する価値
The Twinを記録する意味は、Fenderクリーンだけを残すことではない。
クリーンも残す。
ODも残す。
複雑なトーン設計も試す。
出力切替による違いも見る。
ヴィンテージTwin Reverbの代用品として扱わない。
The Twinとして残す。
太く、現代的なFenderクリーン。
実用的なディストーション。
複雑なサウンドデザイン。
高いヘッドルーム。
意欲的な機能。
Fender The Twin。
クリーンだけでは終わらない。
1980年代Fenderが未来へ進もうとした痕跡が、一台のアンプとして残っている。
参考資料
Fender公式
「A History of the Fender Twin Amplifier」
https://www.fender.com/articles/behind-the-scenes/pristine-cleans-aggressive-overdrive-the-fender-twin-story
Fender公式
「The Twin Owner's Manual」
https://www.fmicassets.com/Damroot/Original/10001/OM_leg_gtramp_The_Twin.pdf
Fender公式
「Fender Guitar Amplifier Owner's Manuals」
https://support.fender.com/hc/en-us/articles/47450512831259-Fender-Guitar-Amplifier-Owner-s-Manuals