
予土線(高知県・愛媛県・若井〜宇和島)全駅解体・精神崩壊エッセイ――第四弾:宇和島の行き止まりと、抜け殻の帰還
予土線(高知県・愛媛県・若井〜宇和島)全駅解体・精神崩壊エッセイ
――第四弾:宇和島の行き止まりと、抜け殻の帰還
第1章:宇和島 ―― レールが、ほどける場所
気動車は、速度を落としていく。
四万十の蛇行も、トンネルの闇も、渓谷の冷気も、車体の底から少しずつ剥がれ落ちていく。
ホームの先に、車止めがある。
線路は、そこで終わっている。
鉄の塊は、ただ黙ってそこに立っている。
これ以上、西へ行けとは誰も言わない。
エンジンが止まる。
唸りが消えたあとの空気の薄さに、自分の呼吸だけが残る。
私は座席から立ち上がれずにいる。
行き先がないというのは、こんなにも静かなことだったのか。
第2章:ポケットのなかの、圏外の記憶
改札を抜ける。
日差しが、あまりにも明るい。
ポケットが震える。
ひとつ、ふたつ。
やがて震えは途切れなくなり、手のひらのなかで、小さな箱が鳴りつづける。
画面には、知らない間に積もった言葉の雪。
未読、未読、未読。
川の上では、誰も私を呼ばなかった。
水は、返事を求めなかった。
親指が、勝手に動く。
私より先に、私の指が日常へ帰っていく。
終章:緑を胸に、荒野へ
透明すぎた川面。
トンネルの、底のない黒。
どちらも、もう言葉にならない場所へ沈んでいった。
――ガタン、ゴトン。
耳の奥で、まだ車輪が鳴っている。
その下を、四万十の水が流れている。
私は、少しだけ軽くなった足で歩き出す。
抜け殻のまま、それぞれの日常へ。