
【エッセイ】時間をかける少女 アマノ文筆クラブ
「時をかける少女」の映画が、かなり前にヒットした。
映画のロケ地である尾道の風景は、坂道の下にきらめく海が見える。
私は自分の生まれ故郷の、今はもうなくなった祖母の家から海水浴場へと続く道が、まさにそんな感じなのだと、少女の頃から勝手に思い込んでいた。
ところがある時、母にその話をすると、「ちょっと違っている」と言われた。
そう言われても、私の中では全然ピンと来ない。
ところがこの夏、うん十年ぶりに出かけてみた。
祖母の家のあった辺りには昔から幼稚園があり、その周辺の景色はなんとなく覚えている。
そこから海、いや、あの頃の海水浴場まで歩いたみたのだが…尾道の風景とは似ても似つかなかった。
私が頭の中で、幼い日の記憶と映画のワンシーン、そしてどこかで見たデジャヴを都合よく混ぜ合わせ、自分だけの理想の風景を作り上げていたらしかった。
「時間をかける少女」は、あまりに時間をかけすぎてしまったせいで、記憶と現実のギャップに苦笑いするしかなかった。
※甘野充さま、どうぞよろしくお願いします。