
ちゃんと文芸部 『口は災いのモットー』
「この会話、盗聴されてるかもしれないぞ」
「なんでそう思うんだ?」
「実はさ、宝くじ、当たったんだよ」
「マジか!いくら?」
「五億」
「ご、五億?」
「そう。だからさ、俺の動向を探ってる奴もいるんじゃないかと思ってさ」
「だけど、盗聴してどうすんだよ。お金は銀行に預けてるんだろ?会話を聞いたって……」
「金はここにある。家の中に」
「なんだって?」
「だから盗聴を疑ってるんだよ。俺がうっかり隠し場所を漏らすかもしれないだろ」
「いや、漏らすなよ。てゆーか、盗聴器探せよ。てゆーか、銀行に預けろよ」
「それは俺の勝手じゃん。とにかく、盗聴されてるかもしれないから、お前の電話番号とか迂闊に言うんじゃねーぞ」
「そんなんどーでも……五億に比べたら……」
「バカヤロ。お前の電話番号を知られるだろ、そしてある日、お前に電話がかかってくる。で、医療従事者を名乗る相手が、友達である俺が事故にあって重傷だと告げるんだよ。さらに、緊急手術が必要だから、大金を用意しろと。そんでそいつがさ、俺の許可は取ったから、俺の部屋に侵入してタンスの金を持ってくるよう言うわけだよ。お前は親友のピンチだと真に受けて、この部屋のガラスを割って侵入し、タンスの金を部屋から持ち出す。それを相手に渡しちまって、俺の金は泡のように消える、と。どーしてくれんだよ」
「いやいや……なんでお前の親じゃなくて俺に電話が……お前の許可が取れたってガラス割って入ったりしないし……てゆーか、なんでお金のありか言っちゃうんだよ。盗聴されてたらもうアウトじゃん。そいつがガラス割って入ってくるよ」
「あ……終わった」
「待てって。まずはさ、ホントに盗聴器があるのか調べなよ。そんでもし見つかったら、お金を銀行に預けるなり、お前の部屋のセキュリティを強化するなりすればいいじゃん」
「……なるほど。確かにそうだな。ありがとう。やっぱり、持つべきものは親友だよ。すごく安心した」
「なんかさ、お前最近、やたらと周りを警戒してたからさ、なんかあるんじゃないかと思ってたんだよ。そーゆーことだったんだな。用心しろよ」
「さてと、あいつも安心したみたいだし、仕掛けた盗聴器も回収できたし、帰るとするか。それにしても、盗聴器では何も得られなかった情報が、あいつの口から直接聞けるとは思わなかったな。まあ、これで盗聴器が見つからなければ、あいつは金をタンスの中に隠したままで、今度遊びに行った時でもきっとそこにある。タンスの中だ。一気に全部いただくか、サラミ的に少しずつ奪うか、考えないとな。……ホント、あいつと親友で良かったよ」
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。