
アマノ文筆クラブ 『魔女刈り』
魔女でいられた時間は短かった。
やはり、髪型を真似したくらいじゃ、本当の魔女にはなれそうにない。
このために、結構奇抜な髪型に挑戦したんだけど。
「普通に、戻してもらえます?」
「え?やめちゃうんですか?結構似合ってたのに」
「この髪型が似合うって、褒め言葉じゃないと思いますけど」
「そんなことないですよ。何でも似合っちゃうのは才能だと思います」
「……と、とにかく、もう魔女なんて目指してないので。やっぱり私は普通の OL がいい」
「でも、旦那さんは魔女好きなんでしょ?それで、魔女になってみたいって」
「魔女好きなんじゃなくて、魔女刈りが好きなんだと思います。実際、魔女になれた三日間で私の魔法をねだったのは一回だけ。しかも、『子供の頃の君に会わせて』だって。魔女になった今の私じゃないの?って思いますよね」
「それは……会ってどうしたかったんでしょうね?もしかしたら、魔女になる方法を伝授したのかも……」
「……え?どーゆーことですか?そしたら、今の私は……?」
「魔法、使えるんじゃないですか?」
鏡に映る私の髪型は奇抜で、この髪型にした私を、夫はベタ褒めしてくれた。
私はあんまり乗り気じゃなくて、期間限定を条件に、この髪型でいること、魔女になってみることを了承した。
でも今、思い出した。
子供の頃は、魔法を使えるようになるのが私の夢だったこと。
毎日のように、教室の片隅でファンタジー小説を読み漁っていたこと。
大人になっていつしか、そんな夢見がちの少女ではなくなってしまったこと。
あの頃の私に、「魔女ならないか?」という誘いがあったら?
しかも、あの頃から変わらない、理想のタイプの男性に誘われたりしたら?
夢見る少女はその気になって、魔女になる努力をするんじゃないだろうか。
それが、未来の夫になるとは思いもせずに。
してやられた気がする。
やっぱり夫は魔女好きだったのか。
この、奇抜な髪型も含め、妻である私に心から魔女になって欲しくて、私に仮初めの魔法を使わせて。
でも実は、あの頃も今も、私が本当になりたいのは、魔女じゃなくて魔法少女なんだけどな。
……分かる?この違い。
とりあえず、髪型はこのままにしとくことにした。
家に帰ったら、夫がホントの気持ちを自白する魔法を試してみよう。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。