
【ショート】 順番
―― short story ――
「ねぇ、お母さん。みてみて」
「あとでね」
「あとでっていつ?」
「食器を洗ってから」
母は食器を持って、台所へ向かった。
洗い終わるのを待ち、プリントを持って駆け寄る。
そのとき、母の電話が鳴った。
「ごめんね」
母は電話を始めると、なかなか終わらなかった。
ずっと待っていたのに、電話を切った母は「お風呂に入りなさい」と言った。
私は口をつぐんだ。
一年生の頃は、何度も母の服を引っ張った。
三年生になると、プリントを持って待つようになった。
五年生の頃には、母が忙しそうだと声をかけなくなった。
中学生になってからは、自分の部屋にいる時間が増えた。
扉を閉めれば、誰の顔色もうかがわなくて済んだ。
ある夜、扉を叩く音がした。
「はい」
「ねぇ、ちょっと話さない?」
私は机の上のプリントを裏返した。
「あとでね」
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