
第33回 制度のその先へ。地域や社会にできることは?
体調を崩したとき、病院まで送ってもらう。
買い物のついでに、重たいものを買ってきてもらう。
私たちの暮らしには、家族や友人、近所の人など、誰かの小さな手助けに支えられていることがたくさんあります。
けれども、その手助けを頼める人が、誰にでもいるわけではありません。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、介護を必要とする人がいる世帯のうち、単独世帯は2001年の15.7%から2025年には33.2%に増え、三世代世帯は32.5%から9.0%に減っています。
約四半世紀で、世帯の形は大きく変わりました。
また、2022年の同調査をもとに計算すると、買い物71.7%、洗濯73.0%、掃除63.2%が「主な介護者のみ」によって担われていました。
※「主な介護者」には家族・親族以外も含まれます。割合は第86表をもとに独自に計算したものです。
詳しくは、2022年国民生活基礎調査・第86表をご覧ください。
家族がいることと、家族に頼れることは同じではありません。
では、頼れる人がいないとき、日々の暮らしをどう支えていけばよいのでしょうか。
介護保険や障害福祉サービスは、生活を支える大切な仕組み。
ただし、利用条件や支援できる内容には決まりがある。
ケアマネジャーとして関わる中で、サービスを組み合わせるだけでは、本人の望む暮らしを支えきれないと感じることがありました。
近所の人との付き合い、長年続けてきた習慣、友人に会いに行くこと。
本人の生活は、サービスを利用している時間だけで成り立っているわけではありません。
「この制度ではできません」
そう説明しなければならないこともあります。
でも、制度でできないからといって、本人の希望まで諦める必要はないと思うのです。
制度で何ができるかだけでなく、本人が何をしたいのか。
そこから考えたいと思います。
困ったときに相談できる窓口はあります。
けれども、自分で困りごとを整理し、相談先を探し、必要な制度につながれる人ばかりではありません。
何に困っているのか、うまく言葉にできない。
家族や周囲に遠慮して、助けてほしいと言えない。
そんなとき、日頃の何気ない関わりが、支援につながるきっかけになることもあります。
いつも顔を合わせる人の変化に気づく。
「最近どう?」と声をかけてみる。
困っていることがあれば、本人の気持ちを確かめながら、必要な相談先につなぐ。
それは専門職だけでなく、地域で暮らす私たちにもできることです。
ただし、気づいたからといって、勝手に支援を進めてよいわけではありません。
本人が何を望み、どんな関わりを受け入れたいと思っているのか。
一緒に確かめることを大切にしたいと思います。
AI時代だからこそ人と人が関わることを諦めない。でも相手の人生を乗っとらない。
入院するときにも、同じような課題があります。
医療や看護は病院が担いますが、入院に必要なものを届けたり、退院後の生活を一緒に考えたりすることは、家族や身近な人が担っている場合があります。
身元保証人などがいないことだけを理由に、必要な入院医療を断ることは認められていません。
それでも、頼れる人がいない場合、入院中や退院後の暮らしを誰と考えていくのかという課題は残ります。
2026年10月6日には、NHK「クローズアップ現代」で「身寄りがないとお断り!?単身者の医療がピンチ」が放送されました。
この問題は、次回もう少し詳しく考えたいと思います。
制度にも、家族にも、専門職にも、できることの限界があります。
だからこそ、誰か一人が抱え込むのではなく、地域にある人や仕組みがつながることが必要なのだと思います。
困っていることに気づく人がいる。
安心して話せる相手がいる。
制度ではできないことも、別の方法を一緒に考えてくれる人がいる。
そんな関わりが、本人の選択肢を増やしていくのではないでしょうか。
頼れる家族がいなくても、住み慣れた地域で暮らし続けたい。
その希望を支えるために、私たちの地域には何ができるのでしょうか。
次回は 第34回「身寄りのない人の暮らしを誰が支える?」です