
リビングラボが向く場面と、向かない場面
「リビングラボって、実証実験と何が違うんですか」
共創の場づくりを考える大学や自治体の方から、この問いは出てきやすい。もう一つ、「うちの施設でもできますか」という問いも、あわせて出てくる。
リビングラボは、提供者と生活者が、生活者の実生活に近い場で、仮説を探したり、解決策を試したりする仕組みだ。実証実験との違いは、仮説を「試す」か、「探す」かにある。実証実験は、企業や研究機関が持ち込んだ仮説を検証する。リビングラボは、仮説そのものを、生活者と一緒に見つけにいく。
たとえば神奈川県鎌倉市の今泉台では、2017年から、住民、東京大学、企業、鎌倉市が組んで、テレワークのまちづくりや、長寿社会の働き方を考えてきた。完成品を持ち込むのではなく、暮らしの中の課題から始める形だ。
向くのは、正解が現場にしかない問いだ。高齢期の暮らしや、地域の困りごとのように、暮らす人にしか分からないテーマ。時間をかけて信頼を築きながら進めたい場面にも合う。
向かないのは、短期間で成果が必要な場面、機密性の高い開発、参加してくれる住民を確保しにくい地域だ。すでに完成した製品の反応を見たいだけなら、実証実験のほうが早い。
「うちの施設でもできますか」という問いには、設備の前に、その場所の本来の目的と重なるかを確かめる。地域や施設の目的と合っていないと、続かないと言われている。費用も、従来の開発より高くなりやすいと指摘されている。欧州では公的な資金が中心で、日本では資金の仕組みがまだ育っていない。
続けるには、参加する人が「また来る理由」を持てることが要る。意見が形になって返ってくると、次の意見は具体的になる。声を出しても何も変わらないと感じたら、人は静かに離れていく。参加の動機づけは、この分野の大きな課題として挙げられている。
「実証実験と何が違うか」という最初の問いに戻ると、答えは、仮説を試すのか、探すのかだった。自分たちの取り組みがどちらに近いか、一度整理してみたい方は、まず話を聞かせてほしい。
山田克基(こにー)
PRアドバイザー・コミュニティデザイナー・ワークショップデザイナー
京都を拠点に、企業・自治体・NPO・スタートアップの「きっかけ創り」に伴走しています。
🔗 燈スタジオ:https://akaristudio.jp
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