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メキシコの腐女子は90年代から戦ってきた—中南米YAOI受容30年史

    タイBLのブームやwebtoonの急成長など、中南米のBL市場は「いま伸びている」文脈で語られがちです。しかし、この土壌は一朝一夕にできたものではありません。今回は視点を30年前に戻し、中南米のyaoi受容史を大づかみにザックリと振り返ります。

    第1期(1990年代): 海賊版とアニメ放送の時代

    BLがメキシコに到達したのは1990年代とされています(メキシコシティの腐女子空間を扱った学術研究による)。この時代の中南米では、日本アニメがテレビ放送で広く浸透しており、『聖闘士星矢』などの作品が絶大な人気を誇りました。
    公式のBL翻訳はほぼ存在せず、ファンは輸入誌、ファンジン、そして後にはスキャンレーション(ファン翻訳)を通じてジャンルに触れていきます。ファンが自らを「fujoshi」と呼び、「yaoi」という語彙を使い続けてきたのは、この時期に日本のファン文化の言葉がそのまま輸入されたためと考えられます。

    第2期(2000〜2010年代): オンラインコミュニティの成熟

    インターネットの普及とともに、ファンダムはフォーラム、ブログ、YouTubeへ移行します。研究が指摘するとおり、メキシコでは根強いホモフォビアという逆風の中でもファンダムは拡大を続けました。アルゼンチンなど他のスペイン語圏諸国でもファン活動が展開され、ブエノスアイレスにはファンによる壁画が存在するという報告もあります(今度行った時に確認します)。
    この時期のコミュニティが「公式に供給されないなら自分たちで訳し、語る」という自給自足の文化を確立しました。
    私が海外の腐女子たちと交流を始めたのも2000年代前半です。

    第3期(2010年代後半〜現在): 公式化の時代

    状況を一変させたのが、配信と商業出版の波です。Crunchyrollや各種配信でアニメが合法的に見られるようになり、タイBLドラマがYouTube経由で流入。出版では、メキシコのPanini MXやKamite、スペインのMilky Way、Arechiなどが競ってBLをライセンスし、かつて海賊版でしか読めなかった作品に公式スペイン語版が付き始めました。ブラジルでも同様に、ポルトガル語の公式翻訳とイベント経済(Anime Friendsは2026年に23万人動員)が急拡大しています。
    BL以外の一般商業誌に関しては、公式がないから海賊版を読むしかないとは、正直言えないところまでは来ていますし、BLも根気強く色々な作品が翻訳出版されています。とはいえ、やはり性表現がドギツイものは翻訳出版されないケースもあります。

    30年史から見える教訓

    中南米のBL市場の「急成長」は、実際には30年かけて育ったファンダムの上に、公式供給がようやく追いついた現象です。
    だからこそ回転が速い。「市場がないから翻訳しない」のではなく「翻訳がなかったから市場が見えなかった」—この順序の逆転こそが、いま中南米で起きていることの本質だと考えています。

    出典:

    ※時代区分は当ブログによる整理です。90年代のアニメ放送状況・スキャンレーション文化の記述は一般的な通説に基づき、個別の出典は付していません。

     
     
    アジアと中南米を飛び回り、日本のコンテンツと海外を繋いでいます。オタク文化がどのように国境を越えて広がるか、各国の腐女子のコミュニティーから情報収集&分析、現地で出会った人や仕事の裏側・キャリアについても書いています。 Contents Construction合同会社代表

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