
🏢 銀猫の楽園|制作現場は燃えているか? 第2話 静かなカフェと、逆転の社長面接
こんにちは。
『銀猫の楽園』の小さな守り人、
猫耳召喚術師ミリア役の 津雲みりあ です。
面接会場は、ELYSION(エリシオン)というカフェでした。
到着したのは、13:15(面接開始予定時刻の15分後)
しかも、カバンの中には、履歴書がない!
── 勝負は、始まる前に終わってしまった❓
でも、ヒロインは負けません!!
それでは、
『制作現場は燃えているか?』第2話、はじまりです。
☕ お兄ちゃんの神ムーブと、消えた履歴書の行方
私は深呼吸してスマホをちらりと見た。
13:15。面接開始から、もう15分が経っている。
(……ああ……終わった……
ほんとに……終わった……)
胃のあたりがぎゅっと縮む。
そんな私の横で、兄が、ふっと視線を上げた。
「みりあ、何にする❓」
(……え、飲み物……❓ この状況で……❓)
頭が追いつかないまま、私は口をぱくぱくさせた。
「……あ、うん……じゃあ……ミルクココア……」
兄は軽く手をあげて店員さんを呼ぶ。
店員さんはにこやかに近づき、
まるで“いつもの流れ”のように、
兄の前へ温かいアールグレイをそっと置いた。
(……え、なにこれ……
注文してないのに……
“いつもの”ってやつ……❓)
店員さんは私のミルクココアを控えめにメモし、
静かにカウンターへ戻っていく。
兄はアールグレイをひと口飲み、
落ち着いた声で言った。
「面接、十三時三十分からだから。
ちょっと時間あるし、何か飲んで待っていよう
緊張してのどが渇いてるだろ❓」
(……え……あと15分もある❓
じゃあ私、早く来すぎたってこと……❓)
その言葉を聞くまで、椅子の背にもたれかかる余裕すらなく、
私はただテーブルの木目をぼんやり見つめた。
でも、少しずつ呼吸が落ち着いてくると、
ようやく周囲を見回す余裕が出てきた。
落ち着いたジャズが静かに流れ、
どのテーブルも穏やかな空気に包まれている。
ノートパソコンを広げて“作業してます感”を出す人もいない。
カップルもいるけど、チャラい雰囲気はゼロ。
(……なんか、思ってた“面接会場”と違う……)
そんなことを考えていると、
私の前にミルクココアが運ばれてきた。
湯気がふわりと立ちのぼり、甘い香りが胸の奥までしみていく。
ひと口飲むと、
さっきまでの焦りが少しだけ溶けていった。
(……いや、これ……
この店の雰囲気に……
めちゃくちゃ場違いじゃない……❓)
顔がじわっと熱くなる。
でも兄は気にした様子もなく、
“落ち着いた兄”を演じるみたいにアールグレイを口に運んでいる。
(……なんで、面接時間を三十分早く伝えたんだろ……❓)
兄は私を横目で見て、さらりと言った。
「みりあ、絶対ギリギリに起きると思ったから、
少し早い時間を伝えておいた」
(………………は❓❓)
「履歴書はいらないよ。
身元引受人が、ほら──目の前にいるだろ❓」
(………………は❓❓❓❓)
紅茶の香りが、さっきより濃く感じた。
(……お兄ちゃん……
やっぱり……神……✨)
私はミルクココアをもう一口飲んで、
ようやく落ち着いた。
🚪 静かなELYSIONと扉の向こうから来た二人
ミルクココアを飲み干し、
スマホを見ると、ちょうど13:30を回ったところだった。
(……そろそろ、来る……❓
誰が来るんだろ……)
そう思った瞬間だった。
店の奥──
普段はスタッフしか使わないような小さなサービスドアが、
カラン、と小さな音を立てて開いた。
(……え、誰……❓
お客さん……❓
でも服装が……なんか違う……)
さらにおかしいのは──店員さんの態度。
トレイを持っていた店員さんが、
驚くでもなく、慌てるでもなく、
まるで“上司に道を譲る”みたいに
すっと横に避けて軽く会釈した。
(……え、え……❓
なんで店員さん、そんな丁寧なの……❓
この二人、常連さんってレベルじゃなくない……❓)
胸の奥がざわっとした。
(……なんか……おかしい……
この店、普通じゃない……❓)
そこから現れたのは、
ティールからエメラルドへと揺れるワンピースの女性と、
白髪混じりの髪をきちんと撫でつけた老紳士。
女性のワンピースは、森の光みたいに柔らかい色合いで、
歩くたびに布がふわりと揺れる。
その姿はまるで“姫としての入場”を意識しているみたいだった。
老紳士は、深い色のジャケットに
落ち着いたブラウンのニットとネクタイ。
背筋がまっすぐで、
“仙人役を完璧にこなす俳優”のような佇まい。
(……絶対この人が社長だ……
どう見ても“偉い人”のオーラ……)
二人は店の空気に溶け込むように静かに歩いてくる。
兄は二人の姿を見た瞬間、
静かに立ち上がり、私の横の席へ移動した。
(……え、なんで隣に……❓)
遅れて私も慌てて立ち上がり、
おどおどと会釈する。
ティールの女性は、
森の光みたいな柔らかい笑みを浮かべて軽く手を振った。
老紳士は、深い森の奥に住む仙人みたいな穏やかさで会釈した。
そして──
「はじめまして。
株式会社ELYS(エリス)代表、月森 恵里須(つきもり えりす)です」
「同じく、取締役の 黒野 真人 (くろの まひと)と申します」
(………………え❓
逆……!?
え、逆なの……!?)
私の中の“勝手な配役”が、
一瞬で崩れ落ちた。
(……この会社……
なんか……思ってたより……
すごい……)
胸の奥が、
さっきとは違う意味でドキドキしはじめた。
……でもその鼓動が、
“期待”なのか“警告”なのかは、
まだわからなかった。

🍯 午後のお茶会と、甘い香りに隠れた違和感
社長さんが先に席へ向かい、
ふわりとスカートを揺らして腰を下ろした。
「どうぞ、座ってくださいな」
その声は、
午後の光みたいにやわらかかった。
私と兄、そして黒野さんが席に着くと、
店員さんが静かに近づいてきて、
焼き色の美しいフィナンシェが並んだバスケットを置き、
飲み物の準備をはじめた。

(……フィナンシェ……
なんか……高級そう……
こういうの、初めて食べる……)
その横には、
小さなガラスのハニーディスペンサーが人数分
そっと並べられている。
(……この店、こんなサービスがあるんだ……
すご……おしゃれ……)
社長さんが、
私のほうへ視線を向けて微笑んだ。
「みりあさんは、何を飲みますか❓」
「は、HA、……っ」
喉の奥から変な声が漏れた。
自分でもびっくりするくらい情けない音だった。
(……なに今の……!?
落ち着け私……!)
慌てて姿勢を正し、
メニューをちらっと見て、
背伸びした声で言った。
「……あ、アールグレイで……お願いします……」
(……ほんとはもう1回、ミルクココアにしたかったけど……
このお店の雰囲気でそれはちょっと……
無難に、お兄ちゃんの真似……)
社長さんは、
森の光みたいな柔らかい笑みを浮かべてうなずいた。
その笑顔に、胸の奥がじんわり熱くなる。
兄が軽く頭を下げる。
「今日は土曜日なのに、
お時間を作っていただいてありがとうございます」
慌てて私も立ち上がり、
深く頭を下げた。
「す、すみません……!」
社長さんは手をひらりと振った。
「気にしないでいいのよ。
ちょうど資料を見ていたところだから」
そう言ってタブレットを軽く伏せた瞬間、
画面の端に──
猫耳のシルエット がちらっと見えた。
(……猫……❓
会社の資料じゃなくて……
待ち受けが猫のイラスト……❓
かわいい……けど……なんか……見覚え……❓)
胸の奥がざわっとした。
でも店員さんが飲み物を運んできて、
思考が中断された。
社長さんにはハーブティー。
黒野さんには緑茶。
兄にはアールグレイ。
そして私の前にもアールグレイ。
(……お兄ちゃんと同じ……
なんか……ちょっと安心する……)
店員さんが取り分けてくれたフィナンシェは、
しっとりしていて崩れにくい。
社長さんは、
まるで“当然の選択”のように微笑んだ。
「ここのフィナンシェは、とても食べやすいんですよ。
紅茶にもよく合いますしね」
(……食べやすいんだ……
それに……すごくおいしそう……)
黒野さんは、
自分のディスペンサーを手に取り、
フィナンシェにとろりと黄金色の蜂蜜を垂らした。
少しだけ粘度の低い、花の香りがふわりと立つ蜂蜜。

「屋上に私の専用スペースがありましてね
土日は、屋上菜園と養蜂場の手入れができる貴重な日なんですよ」
(……専用スペース……❓
会社の屋上に……❓
へぇ……なんかすごい……)
黒野さんは、
フィナンシェに蜂蜜をかけ終えると、
穏やかな声で続けた。
「屋上で採れたばかりでしてね。
花の香りがよく残っているんです。
蜂たちも、よく働いてくれますよ。
良かったら、どうです❓」
社長さんも兄も、
自然な手つきで蜂蜜をかけて食べ始めた。
(……へぇ……こういう食べ方があるんだ……
なんか……おしゃれ……)
私はおそるおそる蜂蜜をかけて、
フィナンシェをひと口かじった。
(……おいしい……
なんか……やさしい味……)
黒野さんは満足そうにうなずいた。
「蜂たちも、きっと喜びますよ」
(……蜂が……喜ぶ……?
なんか……かわいい……
ほっこりする……)
──このときはまだ知らなかった。
黒野さんの屋上菜園と養蜂場の本当の規模を。
そして、
社長さんのタブレットに映っていた“猫耳の影”が、
みりあの遠い日の黒歴史と深くつながっていることも。

次回は、いよいよ採用面接!
がんばれ、私!!
負けるな、私!!!
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