
ジャンプは、100万部を割っても弱くなっていない。
『週刊少年ジャンプ』の紙の部数が、初めて100万部を割りました。2026年4〜6月の平均で98万5,000部。日本雑誌協会が公表している印刷証明付きの部数です。ピークだった1995年には653万部ありました。
ニュースの多くは、これを「紙の時代の終わり」と受け止めました。数字としては、その通りだと思います。
ただ、もう一つ問いを立ててみたいのです。では、ジャンプは弱くなったのでしょうか。

紙が減っても、育てる場所は大きくなった
9月に発表された「次にくるマンガ大賞 2026」のWebマンガ部門を見てみます。1位『おかえり水平線』、2位『ヒトナー』をはじめ、ランクインした20作品中11作品が、少年ジャンプ+の連載作でした。
強さの源泉は、読み切りにあると私は見ています。ジャンプ+は、近年毎年200本以上の読み切りを掲載しています。紙の週刊誌で連載できる枠は、20本前後しかありません。増刊号などを含めたとしても、新人作家に渡せる枠はさらに少ない。でもWebなら、その何倍もの作家に「読者の前に出る機会」を渡せます。
読み切りは、作家と作品を試し、選び抜く仕組みです。読者の反応を見て、連載に進むかを決める。紙の時代から雑誌がやってきたことを、Webでより大きな規模で回しているわけです。

才能は、いちばん集まる場所に向かいます。そこで試され、選ばれ、育っていく。今回の大賞の結果は、その仕組みがWebの上でも回っていることを示しているように見えます。作家が育つ場所としての雑誌は、いまも強く機能しているのだと思います。
もともと紙の雑誌は、雑誌そのもので稼ぐというより、作品を育てて単行本の販売へつなぐ場所でした。減ったのは作品を載せる紙の器で、育てる仕組みは、Webにも広がってむしろ大きくなっている。私はそう捉えています。
雑誌の役割は、作品の育成と販売への接続
私はコミチのCEOとして、出版社の皆さんと一緒にWebマンガメディアを運営しています。その立場から、雑誌の役割を一言で言うなら、こうなります。
雑誌の役割は、作品の育成と販売への接続です。
雑誌が作品を育て、売れる作品かどうかを見極める。そのうえで、紙や電子の書店へとつないでいく。
書店の強みは、たくさんの作品を並べて売ることです。作品の数で、出版社が書店にかなうことはありません。だからこそ、両者の役割は違います。書店と雑誌は競合ではなく、役割分担です。育てる場所と売る場所がそれぞれ機能して、はじめて全体が回る。これが、マンガのエコシステムなのだと思います。
そのうえで、育てる場所の側が大事にしたいものもあります。ここでしか読めないオリジナル作品と、いちばん早く読めることです。この二つがあるから読者は雑誌に通い、その反応の中で作品が育っていきます。

接点を手放したメーカーに起きたこと
家電の世界に、少し似た話があります。
量販店が大きくなるにつれ、自分たちで売り場を持たないメーカーは、お客さんとの接点を失っていきました。接点がないと、誰がどう使っているのかが見えにくくなります。次に何を作るかの手がかりも、少しずつ細っていきます。

売り場が強いこと自体は、良いことです。難しいのは、作り手の側が接点を持たなくなることのほうです。
マンガに置き換えると、こうなります。育てる側が読者との接点を手放すと、何が育っているのかが見えにくくなる。
雑誌であり続ける条件
紙の時代から、編集部はアンケートはがきで読者の反応を見てきました。いまはそこに、読者データが加わっています。
私たちが出版社と一緒に運営しているWebマンガメディアでも、読者データを見ていると、はがきでは見えなかったことが見えてきます。どの話で読む手が止まるのか。ある作品を読み終えた読者が、次にどの作品へ移っていくのか。こうした動きは、読者との接点を持つ場所にしか残りません。
だから、出版社が読者との接点とデータを持ち続けることが、これからの雑誌にとって大事になると考えています。

紙が100万部を割っても、雑誌の役割は、作品の育成と販売への接続です。その役割は変わっていません。広がったのは、それが行われる場所のほうです。
育てる場所を、出版社の皆さんと一緒につくり続ける。それが私たちコミチの仕事です。
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