
第2話 クルマは何を発明したのか
〜移動手段ではなく、週末を発明した〜
前回、フォードは屠殺場で牛を見ていたのではなく、「流れ」を見ていたという話を書いた。
その流れを書き換えた結果、自動車は大量生産され、人々の生活圏は大きく広がった。
しかし最近思う。
本当に面白いのは、その後なのだ。
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人々はクルマというパーソナルな移動手段を得たことで
郊外へ住み始めた。
広い土地。
庭付きの家。
豊かな暮らし。
ここまでは前回書いた。
しかし、生活圏が広がると、人々は予想もしなかった行動を始める。
週末に出かけ始めたのである。
今の私たちにとっては当たり前だ。
しかし考えてみてほしい。
それまでの人々は、そんなに遠くへ行けなかった。
都市の近くで暮らし。
都市の近くで働き。
都市の近くで遊んでいた。
行動範囲には物理的な限界があった。
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しかしクルマがある。
どこへでも行ける。
家族を乗せられる。
荷物も積める。
好きな時間に出発できる。
すると何が起きるか。
人々は旅を始める。
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アメリカにはRoute 66という伝説的な道路がある。
シカゴからロサンゼルスまで続く大動脈だ。
今でも「マザーロード」と呼ばれている。
しかし面白いのは道路そのものではない。
道路の周りである。
モーテル。
ドライブイン。
ガソリンスタンド。
ロードサイドダイナー。
観光地。
土産物屋。
人々が動き始めたことで、新しい産業が次々と生まれた。
フォードは工場の流れを書き換えた。
しかし結果として、人々の人生の流れまで書き換えてしまったのである。
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そして、その流れはボクが大好きなBBQ文化にもつながっている。
庭付きの家。
週末。
家族。
友人。
クルマで買い出しに行く。
庭で火を起こす。
肉を焼く。
ビールを飲む。
語り合う。
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考えてみれば不思議だ。
BBQは料理というよりライフスタイルである。
そして、そのライフスタイルを支えているのはクルマなのだ。
さらに面白いことがある。
1952年。
シカゴ郊外で一人の男が金属ブイ(浮き)を真っ二つに切った。
それが世界初のケトルグリル。
後のWeberである。
偶然だろうか。
ボクはそうは思わない。
フォードが生んだ郊外文化。
週末文化。
庭文化。
その延長線上にWeberがある。
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つまり、フォードが発明したのはクルマではない。
新しい暮らし方だった。
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最近のAI業界を見ていても似たことを感じる。
私たちはAIの性能ばかり見ている。
何点上がった。
何秒速くなった。
どのモデルが賢い。
しかし本当に重要なのはそこだろうか。
それはまるで、100年前に「どこの鉄道が一番速く駅に着くか」を競い合っているようなものかもしれない。
しかし、本当に重要なのはそこだろうか。
フォードの本当の価値は馬力ではなかった。
その結果として人々が「自らハンドルを握り、どう生きるようになったか」だった。
では生成AIは何を変えるのだろう。
仕事の効率だろうか。
それとも、人々の暮らし方そのものだろうか。
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フォードは流れを変えた。
その結果、人々の行動が変わった。
次に登場するGMは、その行動の先にあるものを見る。
人はなぜモノを選ぶのか。
人は何に憧れるのか。
人はなぜ、まだ使えるクルマを買い替えるのか。
GMが見ていたのは、流れではなく人間だった。
その話は次回にしよう。
[Weber オリジナルケトルプレミアム57cm]
US仕様のカッパー(銅)色。ボクの使っているものと同じ。
スペアリブやプルドポークを焼くならコレだ。
海に浮かべる鉄製のブイを切ってBBQグリルにしたのが始まり。
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