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第2話 クルマは何を発明したのか

    〜移動手段ではなく、週末を発明した〜

    前回、フォードは屠殺場で牛を見ていたのではなく、「流れ」を見ていたという話を書いた。

    その流れを書き換えた結果、自動車は大量生産され、人々の生活圏は大きく広がった。
    しかし最近思う。
    本当に面白いのは、その後なのだ。

    ***

    人々はクルマというパーソナルな移動手段を得たことで
    郊外へ住み始めた。
    広い土地。
    庭付きの家。
    豊かな暮らし。

    ここまでは前回書いた。

    しかし、生活圏が広がると、人々は予想もしなかった行動を始める。

    週末に出かけ始めたのである。

    今の私たちにとっては当たり前だ。
    しかし考えてみてほしい。
    それまでの人々は、そんなに遠くへ行けなかった。

    都市の近くで暮らし。
    都市の近くで働き。
    都市の近くで遊んでいた。

    行動範囲には物理的な限界があった。

    ***

    しかしクルマがある。

    どこへでも行ける。
    家族を乗せられる。
    荷物も積める。
    好きな時間に出発できる。

    すると何が起きるか。

    人々は旅を始める。

    ***

    アメリカにはRoute 66という伝説的な道路がある。
    シカゴからロサンゼルスまで続く大動脈だ。
    今でも「マザーロード」と呼ばれている。
    しかし面白いのは道路そのものではない。
    道路の周りである。

    モーテル。
    ドライブイン。
    ガソリンスタンド。
    ロードサイドダイナー。
    観光地。
    土産物屋。

    人々が動き始めたことで、新しい産業が次々と生まれた。

    フォードは工場の流れを書き換えた。
    しかし結果として、人々の人生の流れまで書き換えてしまったのである。

    ***

    そして、その流れはボクが大好きなBBQ文化にもつながっている。

    庭付きの家。
    週末。
    家族。
    友人。
    クルマで買い出しに行く。
    庭で火を起こす。
    肉を焼く。
    ビールを飲む。
    語り合う。

    ***

    考えてみれば不思議だ。
    BBQは料理というよりライフスタイルである。
    そして、そのライフスタイルを支えているのはクルマなのだ。

    さらに面白いことがある。

    1952年。
    シカゴ郊外で一人の男が金属ブイ(浮き)を真っ二つに切った。
    それが世界初のケトルグリル。
    後のWeberである。

    偶然だろうか。
    ボクはそうは思わない。
    フォードが生んだ郊外文化。
    週末文化。
    庭文化。

    その延長線上にWeberがある。

    ***

    つまり、フォードが発明したのはクルマではない。
    新しい暮らし方だった。

    ***

    最近のAI業界を見ていても似たことを感じる。
    私たちはAIの性能ばかり見ている。
    何点上がった。
    何秒速くなった。
    どのモデルが賢い。

    しかし本当に重要なのはそこだろうか。
    それはまるで、100年前に「どこの鉄道が一番速く駅に着くか」を競い合っているようなものかもしれない。
    しかし、本当に重要なのはそこだろうか。

    フォードの本当の価値は馬力ではなかった。
    その結果として人々が「自らハンドルを握り、どう生きるようになったか」だった。

    では生成AIは何を変えるのだろう。
    仕事の効率だろうか。
    それとも、人々の暮らし方そのものだろうか。

    ***

    フォードは流れを変えた。
    その結果、人々の行動が変わった。

    次に登場するGMは、その行動の先にあるものを見る。
    人はなぜモノを選ぶのか。
    人は何に憧れるのか。
    人はなぜ、まだ使えるクルマを買い替えるのか。

    GMが見ていたのは、流れではなく人間だった。

    その話は次回にしよう。



    [Weber オリジナルケトルプレミアム57cm]
    US仕様のカッパー(銅)色。ボクの使っているものと同じ。
    スペアリブやプルドポークを焼くならコレだ。
    海に浮かべる鉄製のブイを切ってBBQグリルにしたのが始まり。



    #AI #生成AI #ライフスタイル #週末 #モビリティ #Weber #BBQ #Route66 #コトづくり #UXデザイン
    #ビジネス #人間の探索能力

     
     
    未来ソムリエ。未知の未来の可能性を提案し、自分の意志で動き出す人を応援。製造業R&Dで35年。AI×BBQなど、実験から得た一次情報を発信。未来創造ファシリテーター/日本BBQ協会上級インストラクター。アタマで考え、カラダで描き、ハラワタで欲す。それはたぶん、BBQと同じだ。

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