
【拝啓文芸部】『信じていた嘘』【ブラックユーモア】
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ようこそ、皆さま! セイウチです。
今日拾い上げたボトルメッセージには、少し苦くて、でもどこか人懐っこい「嘘」の匂いが染みついていました。
人を信じることの愚かさと、それを利用する人間のちょっとした賢さ。
ボトルの中で眠っていた誰かの記憶を、そっと開いてみましょう。
コーヒーの準備はよろしいですか?
それでは、波の届けてくれたショートショートをお贈りします。
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どこもかしこも、穴だらけの町だった。
道端にも、民家の庭先にも、山肌にも。
町中の地面という地面に、ぽっかりと黒い口が開いている。
かつて山師(やまし)として名を馳せた剛蔵(ごうぞう)なる男が、「この山には、まだまだ金が眠っているぞ!」と叫んだのがすべての始まりだった。
一攫千金を夢見る男たちが全国から押し寄せ、掘っ立て小屋が建ち並び、いつしかそこはひとつの町になった。
今日も今日とて、朝から晩までカツン、カツンとつるはしの音が響き渡っている。
そんなある日のこと。
町長のもとに一通の手紙が届いた。
差出人は、姿を消していたあの剛蔵である。
町長が震える手で封を切り、広場に集まった町民の前でその内容を読み上げた。
『あんな言葉を真に受けて、バカな奴らだ。この山に金があると言ったのは全部嘘だ。せいぜい無駄骨を折るがいい』
嘲笑に満ちた手紙であった。
「騙されたんだ!」
「あの野郎、俺たちを嘲笑っていやがったのか!」
怒号と罵声が吹き荒れた。
人々は怒りに震え、長年信じていた夢が一瞬にして瓦解したことを知った。
一人、また一人と荷物をまとめ、町を去っていった。
つるはしの音は止み、栄えていた町はあっという間に誰もいない廃墟へと変わった。
だが、静まり返った町に、たった一人だけ戻ってきた男がいた。
——剛蔵である。
剛蔵はニヤリと下劣な笑みを浮かべると、誰もいなくなった穴ぐらへと入っていった。
町民たちが血眼になって掘り進め、あと一歩のところで投げ出した坑道の最奥。
剛蔵がつるはしを振り下ろすと、カツン、と乾いた音が響く。
崩れ落ちた岩の隙間から現れたのは、ギラギラと眩しく輝く本物の金の脈だった。
「ひひっ、ご苦労なこった。固い岩盤を掘り進めるのは骨が折れるからな……」
剛蔵は他人の労働力をタダで使い、一番美味しい「アタリ」の直前まで掘らせていたのだ。
一人で悠々と金を掘り出し、懐を存分に温めた剛蔵は、ある程度掘り尽くすと、ふたたび満足そうに笑った。
数ヶ月後、隣町の酒場で剛蔵は大声でこう触れ回っていた。
「おい聞いたか? あの山にはな、まだまだ山分けできるほどの金が眠っているそうだぞ!」
話を聞いた男たちが、目を輝かせて新しいつるはしを買いに走る。
剛蔵は去っていく男たちの背中を見送りながら、次の手紙をいつ出そうかと、懐の中でペンを転がすのだった。
(了)
※この物語はフィクションです。
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最後まで読んでいただきありがとうございます❗😭✨
人を本当に動かすのは「嘘」か「真実」か、あるいは「欲」なのか……。
誰も損をしていないようで見事に踊らされている、人間の愚かさと剛蔵のしたたかさを描いてみました。
もしもあなたの家の近くに怪しい穴があったら、誰かが書いた手紙に気をつけてくださいね。
【Mr.Q】さん、素敵な企画をありがとうございました!
毎週火曜日に自分の作品を投稿、企画に参加させていただく時は不確定的に投稿しています!
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