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【拝啓文芸部】『昨日の私へ』【現代ドラマ】

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    ようこそ、皆さま!セイウチです。

    今日も波打ち際を散歩していたら、少し変わった瓶が流れ着いていました。

    中に入っていたのは、見慣れた筆跡で書かれた手紙と、誰かの記憶の欠片。

    アナタの元へ届ける前に、僕も温かいコーヒーを一杯淹れて読ませてもらいました。

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    毎朝、目を覚ますと机の上にそれが置いてある。
    差出人の欄にも、宛先の欄にも、私の名前が書かれた一通の封筒。
    「昨日の私へ」とだけ添えられた文字は、見慣れた私自身の筆跡だった。

    ​もちろん、書いた覚えも送った覚えもない。
    不可解さに首をかしげながら封を切ると、中には数枚の手紙が入っていた。
    最初の数枚には、まるで日記のように「今日起きたこと」や「私を取り巻く環境」が細かく綴られている。
    そして最後の一枚を開いたとき、そこに書かれていた文章に目が留まった。

    ​『拝啓、親愛なる昨日の私へ。
    この手紙が届いたということは、あなたから見て「明日の私」から無事に届いたのだと思います。さて、昨日の私に、3つだけお願いがあります。
    ​1つ目。今日あった出来事を、覚えている限りすべて紙に書いてください。
    2つ目。あなたから見て「昨日の私」に向けた手紙として、それを書いてほしいのです。
    3つ目。書き終えた手紙とこの手紙を合わせて、午前0時までに、お母さんかお父さんに預けてください。
    ​理由は説明されても分からないと思います。実は、私自身もよく分かっていません。私も「明日の私」から届いた手紙に従って、とにかく必死で書いています。
    ​昨日の私へ。どうか、よろしくお願いします。
    敬具 明日の私より』

    ​文字は殴り書きのように乱れ、かなりの焦りと緊迫感が伝わってくる。
    けれど、どう見ても自分の字だった。

    ​「『明日の私』から『昨日の私』へ、ねぇ……」

    ​なんだか妙な言い回しだな、と私は思わずくすりと笑ってしまった。

    ​その日一日を過ごした私は、夜になると机に向かった。
    突飛な内容のわりに断る気にもなれず、言われた通りに今日一日を思い返しながら、丁寧にお願いに応える手紙を書き進める。

    ​書き終えた手紙を封筒にまとめ、リビングへ向かった。
    ソファに座っていたお母さんに「これ、頼まれたやつ」と手紙を手渡すと、母は優しく微笑んだ。
    「ありがとう」と受け取る母に背を向け、自室のベッドに横たわる。

    ​あの手紙は一体なんだったんだろう。
    明日、お母さんに聞いてみようかな。
    重くなる瞼を閉じながら、私は深く息を吐いた。

    ​「ま、明日考えればいいか……」

    ​◇

    ​「……ん」

    ​光の眩しさに目を覚ます。
    体を起こして辺りを見回した。
    視界に飛び込んできたのは、見覚えのない白い天井と、見たこともない家具の配置だった。

    ​(ここは一体、どこなんだろう……)

    ​混乱する頭を抱えようとしたとき、コンコン、と部屋のドアが静かに鳴った。
    ガチャリとドアが開き、エプロン姿の女性が柔らかい笑顔を浮かべて入ってくる。

    ​「おはよう」

    ​包み込むような優しい声だった。
    けれど、私の心には冷たい恐怖が走る。

    ​「あの……あなたは、誰ですか?」

    ​女性は一瞬だけ寂しそうに目を伏せ、それからいつものことのように温かく微笑んだ。




    (了)
    ※この物語はフィクションです。
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    最後まで読んでいただきありがとうございます!



    朝起きると届いている不思議な手紙。
    そこから始まるちょっと奇妙な物語を書きました。

    毎日記憶がリセットされてしまう主人公と、それを優しく受け止め続けるお母さんの姿が、少しでも皆様の心に残れば嬉しいです。



    【Mr.Q】さん、素敵な企画をありがとうございました!



    毎週火曜日に自分の作品を投稿、企画に参加させていただく時は不確定的に投稿しています!



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    寄せては返す波打ち際で、流れ着いたボトルメッセージを拾い集めるセイウチです。 ​ここに並ぶショートショートや日記は、すべて海が運んできた「誰かの漂流物」。 いつかあなたの心に届く言葉が見つかりますように。 ゆっくりしていってください。

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