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【風まかせ文芸部】『夏の終着点』【ファンタジー】

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    ようこそ、皆さま!セイウチです。

    波打ち際に、少しひんやりとしたガラス瓶が届いていました。

    僕が栓を抜くと、中からふっと一籠りの夏の名残と、線路の音がこぼれ出してきたんです。

    アナタの元へも、季節が切り替わる特別な音をお届けしますね。


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    リッカ駅から走り出したナツカワ号の車内には、どこか遠い日の記憶のような、緩やかな時間が流れていた。

    ​ボックス席で向かい合ったのは、白いノースリーブのワンピースを着た女性だった。
    彼女の周りだけ、冷えた水のような風が吹いている。
    言葉を交わすのに、時間はかからなかった。

    ​「この前、あまりの暑さに嫌気がさして、私だけ涼しい場所へ隠れてしまったんです。そうしたら、姉妹たちにとても怒られてしまって」
    「ああ、だから今年の夏は、あんなにも眩しくて暑かったんですね」

    ​私がそう答えると、彼女は少し悪戯っぽく「ふふ」と笑った。

    ​窓の外を流れる雲の形が変わっていく。
    秋の夜長や、冬の静けさ、春の陽気――巡る季節の思い出話を咲かせている間にも、列車はショウマン、ボウシュ、ゲシ、ショウショ、タイショと、記憶の節目のような駅を静かに通り過ぎていった。

    ​やがて、遠くからセピア色の車内アナウンスが響く。

    ​『終着、リッシュウ。リッシュウです。お出口は左側。お降りの方は、お忘れ物のないようお気をつけください』

    ​開いた扉から吹き込んでくる風には、もうかすかに秋の匂いが混ざっていた。
    立ち上がってホームへ降り立った私を、彼女は座席に座ったまま、寂しげな目で見つめている。

    ​「ここでお別れですね」
    「また来年、会えますよ」
    「きっとですよ……?」

    ​すこし不安そうに首をかしげる彼女に、私はホームの白線の内側から、静かに微笑みかけた。

    ​「もちろんです。あと数十年は、何度も会うことになりますよ――夏さん」

    ​一瞬だけぽかんとしたあと、彼女はすべてを理解したように、この夏一番の眩しい笑顔を見せた。

    ​動き出したナツカワ号が、夕暮れの奥へと小さくなっていく。
    一礼して夏の背中に別れを告げた私は、くるりと振り返り、向かい側のホームで静かに発車を待つアキグチ号へと乗り換えた。

    ​西日の差し込む車内には、薄紅色のカーディガンを羽織った女性が一人、本をめくっていた。

    ​
    「こんにちは、秋さん」

    ​


    (了)
    ※この物語はフィクションです。
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    最後まで読んでいただいてありがとうございます!


    ​季節の境目を感じる瞬間の、どこか切なくも少し澄んだ空気感を形にしたいという思いから生まれた物語です。

    ​猛暑が過ぎ去る寂しさと、次に訪れる秋の静けさへの予感。

    読者の皆様の心に、ふっと心地よい秋風のような余韻が残れば幸いです。


    ※追記
    先日間違えて誤投稿してしまいました。
    スキをくれた方、申し訳ございませんm(_ _)m


    【i】さん今回も素敵な企画をありがとうございます!


    毎週火曜日に自分の作品を投稿、企画に参加させていただく時は不確定的に投稿しています!


    気に入った方は是非スキやフォロー、シェアしてもらえると嬉しいです。



    ↓今回参加させていただいた企画


    ↓前回の作品


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    現在連載中❗『世界でいちばん遠回りな呪いの殺し方』 〜10年かけて俺を殺すはずの黒羽さんが、婚姻届を出してくるまで〜
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    寄せては返す波打ち際で、流れ着いたボトルメッセージを拾い集めるセイウチです。 ​ここに並ぶショートショートや日記は、すべて海が運んできた「誰かの漂流物」。 いつかあなたの心に届く言葉が見つかりますように。 ゆっくりしていってください。

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