
遠回しさん/慎重くん【7】告白
【あらすじ】
書店のアルバイト仲間、綾瀬と狭山。本の貸し借りや、狭山が書いた小説を読んだりというなかで、綾瀬は狭山が気になっていく。
綾瀬が棚を整理していると、隣に狭山が来る。
でも、口を開くまで、かなり間があった。
「綾瀬さん、あのさ……」
「どうしたの?」
「おれ、来月で辞めるんだ。」
「……え?」
作業の手が止まった。
「……引っ越すことになって。」
「遠いの?」
「うん、まあ。」
「そっか……」
綾瀬は棚に視線を戻す。
胸の奥が、少しもやっとした。
数日後。
綾瀬が通う大学の食堂。
綾瀬は、友人と向かい合って座っている。
テーブルには、湊かなえの『告白』。
どんでん返しが読みたいという、友人のリクエストで持ってきた。
綾瀬の曇った表情を気にして、友人が声をかける。
「どした?」
「え?」
「だから、どしたのよ。」
「前話したでしょ。狭山くんって、同じアルバイトのひと。」
「うん、いってたね。」
「……辞めちゃうんだって。」
悲劇のワンシーンのような空気に、友人は心のなかでツッコミを入れる。
(いや、バイト辞めるだけなんかい!)
それはおくびにも出さず、眉間にシワを寄せて答える。
「えっ、そうなんだ。」
「うん……」
「でもさ。」
「え?」
「連絡すればいいじゃん。バイト辞めても。」
「えっ?」
友人の口もとから、笑みがこぼれる。
「いやいや、LINEとか、ふつうに。」
「知らないもん……」
「本の貸し借りまでしてて?」
「だって、チャンスがなくって……」
「じゃあ、辞める前に、連絡先聞いてみたら?」
「……連絡先?」
「うん。LINEだったら聞きやすくない?」
「……聞けるかな。」
ひとりの帰り道。
(どう聞いたら、変じゃないかな)
知らずのうちに、片手をギュッと握っていた。
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