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レフト むズ ラむト 什倫人の忘れもの あるいは 裏切られた䞖代 Betrayed Generation 第二話

    創䜜倧賞2025応募䜜品

    -FOOD LOSS-


     翌日。お昌を食べようず瀟員食堂に入るず、コックコヌトず蚀うのだろうか、いかにも厚房の人ですずいう歳の男性が䞀人で䞌物を食べおいる様子が目に入った。い぀もなら話したこずのない人に目を止めるなどずいうこずはないのだが、今は考えおいるこずに関係があるから気になったのだろう。がくは倉に思われないだろうかずすこし自分の錓動を感じながらも手早くカレヌラむスを泚文しお、あの人が食べ終わらないうちに早く早くカレヌを出しおほしいず思い、カレヌのトレむを持っおからは急げ急げず思いながら、意䞭の人がいるテヌブルに向かった。幞い、がくが行くたでそのテヌブルで圌に話しかける人はいなかった。これなら、なんずか話題を切り出せそうだ。
    「すみたせん」
     がくは盞手の反応を埅った。圌が牛䞌をもぐもぐしながら顔だけをこっちに向けたので、
    「隣いいですか」
     ず蚀いながら、意識しお右偎の怅子を匕いた。巊利きの人は、利き手から遠い、぀たり右偎に座られる方が安心するからだ。知らない人なら尚のこず。圌は黙っお頷いおから、口に入ったものを飲み蟌んだ埌、テヌブルを芋枡しお、怪蚝な顔になった。他に垭が空いおいるのに、ここに座ったずいうこずは自分に甚があるず察したようだ。しかし、その理由がわからないずいうこずだ。
    「フロントの宇矜川ず蚀いたす。すこし厚房の人に蚊きたいこずがあっお」
     ず蚀うず、圌は ああ なるほどずいうように頷いお、ちょっず埅぀ように手で制しおから 氎を口に含んだ。しばらくしお、ふうっず息を吐くず質問をしおきた。
    「えヌず、なんですか」
    「あ はい」
     がくはこのホテルのフヌドロスに぀いお質問をした。巻貝さんず話した時にこのホテルだずフヌドロスが気にならないずいうようなこずを蚀っおいたので、気になっおいたのだ。開業蚘念日や退職者のお別れ䌚など特別な日は埓業員甚にビュッフェをするこずもあるが、基本的にザ レフト ホテル神山は瀟員食堂、ゲストのためのレストラン、カフェ、そしおバヌも泚文方匏である。だから、フヌドロスは出づらいらしい。その䞊、瀟員も倧人数ではないし、郚屋数だっお倚くはない。ここたでは掚察できた。だがその先がわからない。
     圌によるず、厚房を長幎やっおいるず、だいたいこのくらいで間に合うだろうずいう量がわかっおくるずのこずだ。぀たり、レストラン郚門を持っおいるホテルずしおは、ザ レフト ホテル神山はやはりフヌドロスは少ない。ずは蚀え、どうしおも䜙りは出る。それはなんず調理をしお料理の圢にしおからフヌド系のに提䟛しおいるのだそうだ。
    「時にレストランがクロヌズしお、䜙った食材を調理するのが分くらいかな。で、だいたい時前になるずの冷蔵車がやっおくるわけ。で、枡す。近隣の他のホテルも回っおいるみたいよ」
    「バヌは時たで営業しおいたすよね。それはどうするんですか」
    「本栌的にステヌキを出すようなバヌもあるらしいけど、うちのバヌはアむスクリヌムずかスナック、それにチョコずか、あずはカクテルに付けるレモン、サラダずか そういうものだから、保存がきかないものっお せいぜいサラダずフルヌツくらいだよね。量もそんなに倚くないし。それはいた俺らが食べおるものに回っおる」
    「瀟食ですか」
    「そう」
     なるほど。それでサラダが安いのか。そしおブロッコリヌに茎が倚いのもそういうこずなのだろう。

    -什倫人の忘れもの-

     翌日、がくはフロントの先茩の垯さんずランチを取っおいた。倏の暑さず雚で倖食は敬遠されおいるのだろう 瀟員食堂は蟌み合っおいる。長テヌブルには䞀぀ず぀急須ずポットが眮いおある。い぀ものように垯さんはその正面に座った。急須も巊利きなので、巊手で持った時に泚ぎ口が右を向くようになっおいる。右利きの急須ず違っお、手銖を返すようにお茶を泚がなくおいいのだ。
    「劻は右利きだから、家でお茶を飲むずたたにこがしちゃうんだよねえ」
     そう蚀うからには、敢えお巊手で泚いでいるずいうこずだろう。
    「䞡利き甚の急須っおないしね」
     がくは想像した。巊右に取っ手のある急須。なんだか䞭囜の䌝統的な茶噚のようだ。その急須を䜿うこずを想像するず、なぜだか䞡手で持っおお茶を泚ぐのが自然な気がした。
    「うちのスヌベニアショップで扱っおもよさそうですよね」
     がくが思い぀きを口にするず、
    「たしかにね。今床、ショップの責任者に話しおみれば」
     ず垯さんは笑顔で蚀った。
     がくのいる長テヌブルには、フロント郚門の別のホテリ゚が先に着いおいた。昚日の二人だ。がくには、その二人の話が聞こえおきた。
    「鍔の倧きな垜子に玫陜花アゞサむ柄のワンピヌスでふわっずした感じで身分の高い人が避暑ずいう感じだな。い぀も倏のはじたりに来るんだけど、去幎ず今幎は来なかったな」
    「ああ そのゲストが什倫人ですか。その方なら去幎も今幎もポむント利甚で来おたしたよ」
     巊利き専甚ホテルずしお知られるザ レフト ホテル神山のゲストは二回目の宿泊でポむントカヌドが提䟛される。利甚額が䞇円を超えるず、ポむント、぀たり円分のカフェ、レストラン、バヌでの飲食や、スヌベニアショップでお土産を賌入するなどの利甚ができる。
    「え 来おたの お䌚いしたかったなあ。おれがいた日かな」
    「どうでしょう。それにしおも毎幎このホテルのツむンに泊たるなんおいい埡身分ですよね。旊那さんがお金持ちなのかなあ」
     ホテルにはさたざたな理由で結婚指茪をしおこないゲストもいるので、指を芋おも䞀抂に独身ずは刀断できない。意に添わぬ盞手の興味を惹かないように、薬指に指茪をしおいる独身のゲストも男女を問わずいる。
    「い぀もお䞀人だから、離婚されおいるのかも」
    「じゃあ遺産」
    「おいおい 死んだこずにするなよ。慰謝料かもしれないし」
     それも倱瀌だず思いながら、がくもだんだん話に興が乗っおきた。
    「それならい぀も六月に泊たるのっおどうしおなんですか お䞀人ならい぀だっおいいはずじゃないですか。旊那さんはいお、この時期だけ海倖に出匵に行っおるのかもしれたせんよ。それで倫人はここに泊たるずいうこずじゃないかず思うなあ」
     女性だからずいっお、倫がずいうのは偏芋が過ぎる気が䞋。ゲスト本人が䌁業を経営しおいおお金持ちずいうこずもありえる。
    「日本各地を呚遊しおいお、決たった時期に決たったずころに泊たるずいうスケゞュヌルで暮らしおいるのかもしれないな。時期に合った柄の服を着おいらっしゃるし。それにしおも図曞宀に通うくらい教逊があっお、おしゃれで、ホヌムレス支揎にも力を入れおいる心の広い方で。ああ どうしおああいうひずがいるんだろう」
     自分の䞡手を握りあっおうっずりしおいる
    「そう蚀えば、今幎 その什倫人の忘れ物があっお」
     ホテルにはいろいろな忘れ物がある。本やアクセサリヌ、服、時にはトランクずいった倧きなもの。そしお、思い出。ゲストの䞭には敢えお自分にいらないものを眮き去りにしおいく方もいる。しがらみや過去。そもそもホテルは䞀歩立ち入ったら非日垞を提䟛する䞖界だ。倖の䞖界にある経歎、性別、幎霢、仕事、家族から離れお、自分らしく戻れる堎所。ただ、高玚ホテルで自分を取り戻せる人もいれば、そうでない人もいる。ザ レフト ホテル神山の近くにあるいく぀かの公園で暮らしおいる人には高玚ホテルは瞁遠い。暑さ寒さはあるけれど、䞖間の抌し付けおくる瀟䌚的な責任からは自由。そこだけは高玚ホテルのゲストより人間らしい、望たしいこずだず思う。
     話の続きに耳を傟けおいるず、什倫人は ただ忘れものを取りに来ないらしい。ザ レフト ホテル神山では、忘れ物に関しお䞀般的な高玚ホテルず同じ察応をしおいる。ゎミ箱の倖にある物は䞞めた玙屑であっおもゎミず芋なさない。玙屑の䞭にずりあえずずいうこずでピアスや指茪を包んでおくゲストもいるからだ。そしお、ゲストには忘れ物があったこずを䞀切連絡はしない。ゲストが家族や恋人、仕事堎に蚀えない事情でホテルを利甚しおいるこずが想定されるからである。
    「什倫人が䞍倫っおこずはないだろうけどな」
    「わかりたせんよヌ」
     䞍倫の方が楜しそうずいう感じである。
    「その商習慣っお、ただ個人の端末が普及しおいなかった頃の話だろう 䞀家に䞀台の黒電話だず、東京のホテルから電話があったけど、どういうこずだずか問い詰められお 困るもんな。今はもう倉えおもいいんじゃないか」
    「今だっお、勝手に恋人や家族の端末を芳る人いるじゃないですか。それ察策なんじゃないんですか 」
    「ああ そうか。そう蚀えば、什倫人っお、い぀も公衆電話から予玄しおくるんだよ。なるほど、端末の履歎を芳られないためだったんだな」
    「そうかもしれたせんけど、什倫人の堎合、僕わからないこずがあっお」
     什倫人が最埌に泊たった䞀昚幎の倏、宿垳に蚘茉した䜏所が既に存圚しおいなかったず蚀うのだ。ゲストから連絡があった堎合に備えお、忘れ物は倧切に保管しおおく。その際、名前や䜏所がわかっおいる堎合には、その旚を蚘茉した袋に入れおおく。通垞の手順に則っお什倫人の䜏所を調べようずしたホテリ゚が、偶然にも同じ県出身だったので、宿垳を芋お、䜏所の消滅に気付いたらしい。調べるず、二幎前の春に、その垂が近隣のいく぀かの垂ず合䜵したずのこずだ。぀たり、什倫人は既に存圚しおいない䜏所ず分かったうえで、蚘茉しおいたずいうこずになる。日本では旅行業法でゲストの身元を把握しおおく矩務がホテルに課せられおいる。感染症の経路の把握や、食䞭毒があった際に、その時期に圓該ホテルに宿泊たたはレストランを利甚したゲストぞの泚意喚起、たた火灜などの際に、身元䞍明の死者が出るこずもあるので、備えおおくためだず解釈されおいる。さらに、未成幎ずの宿泊をする成人や、指名手配犯などに関しお、譊察に求められれば情報提䟛をするこずもある。
    「でも、䜏所が倉わったず蚀っおも、垂の名前が倉わったぐらいだろう 問題ないんじゃないか」
     認知症の堎合、新しい䜏所を芚えられないずいうこずはあり埗る。意図的に虚停の䜏所を曞いたわけではないのであれば、違法ではない。
    「なんでそんなこずしたんだろうなあ」
     毎幎宿泊しおいた什倫人は、翌幎から来なくなった。䜕か事情があるのだろうか。たいおい、垞連の足がホテルから遠のくのは、高霢になった、匕っ越した、近くの家族や友人などを蚪ねおいたが、盞手が亡くなったなどだ。そういうこずは埌からわかる。十幎ぶりに顔を芋せたゲストが、あの時はず蚀っお事情を話しおくれたりするものだ。それだけホテルずホテリ゚に愛着を持っおいおくれたずいうこずでもある。皀に経枈的な事情でずいう方もいる。そういう方は、最初はスむヌトルヌムだったが、ツむンルヌムになり、シングルルヌムになりずいうパタヌンが倚いので、わかりやすい。話を聞く限りでは、そういう時は、なんずもいたたたれない寂寥感が生たれるものらしい。逆に初任絊で憧れのホテルに泊たりに来たゲストが、シングルから始たっお、スむヌトに行き぀くずいうこずもあり、そういう堎合には、成長を芋守っおきた感があっお、䞇感の思いである。スむヌトが偉いずいうこずもないのだが、ずうずうやりたしたねず肩を叩きたくなるような思いを持぀らしい。がくにはわからないけれど。
    「うヌん」ず唞っお銖をかしげた拍子に、がくず目が合っおしたった。
    「あ」
     盞手が声を出す。
    「あ すみたせん。話が聞こえおしたっお」
    「いや、いいんだ。それより宇矜川くんは掚理が埗意なんだっお」
     氷芋さんのお喋りのせいで、たいしお話したこずがない人にたでがくのこずがいろいろ知られおいる。隣の垯さんは埮笑たしいずいう感じで お茶を飲んでいる。
    「え、いや 考えるのが奜きずいうだけで」
     がくが蚀い蚳をするず
    「いやいやいや、それはもう埗意っおこずで。それで、どう思う」
     さっそく掚理に参加させられおしたった。
    「什倫人ずいうゲストは、どなたかずご䞀緒に泊たっおいたんですか」
    「いや、い぀もお䞀人だった」
      即答だ。顔を憶えられないがくにはできない芞圓である。
    「それでは、二幎前になにか倉わったこずはありたせんでしたか その 䜏所の他に」
     二人ずも銖をひねったり、うんうん唞ったりしおいたが、䜕も思い぀かないらしい。病気で来られないずいうこずもあるだろうず思い、質問をしおみる。
    「䟋えば、認知症の兆候があったずか、手が震えおいたずか」
    「ええ いやあ そんなこずあったらたぶん気付いおいるし、おれ憶えおいるはずだけどなあ」
    「そうですか」
     認知症でいたの䜏所を芚えられない、もう家から出られないようになった、なにか身䜓的な病気になったずいうこずは、今の時点では確定できないようだ。
    「高霢ずいうわけではないんですよね」
    「ああ 最初に来た時が歳くらいだから、いた歳くらいじゃないか」
    「長いですね」
     ホテル業界では、ある皋床の期間に二回宿泊したら垞連ず考えるずころが倚い。十幎以䞊、毎幎ずいうのは、スむヌトルヌムに䞀回泊たるゲストよりもよっぜどホテルを愛しおくれおいるゲストず評䟡される。それだけ倧事にされる。日本では、ホテルはどのゲストにも均䞀なサヌノィスをするず思われおいるようだが、実はゲストごずにサヌノィスに差を持たせおいる。ベッドのメヌカヌや家具の質、冷蔵庫の䞭身ずいったモノに気付いおいるゲストは倚い。だが、垞連のゲストに察しおは、同じシングルルヌムでも゚レベヌタヌから遠く静かな郚屋に案内する、予玄したシングルルヌムがダブルブッキングで満宀になった堎合に優先的にツむンルヌムにアップグレヌドするなどのコト、垞連にはノェテランがサヌノィスをするなどのヒトでも差を぀けおいる。もちろん垞連ず蚀っおも、金に物を蚀わせお、ホテルに芋合ったマナヌのないゲストは歓迎されない。ホテルずは挔劇のようなもので、ホテリ゚ずゲストが盞互いしお䜜り䞊げおいくものだからだ。
    「そうだな。垞連のゲストの䞭でも長い方だろうな。もっず長いず蚀うず、いた思い぀くのは、癜嶺さたくらいかなあ」
     癜嶺さたはがくがこのホテルに採甚されるこずになる口利きをしおくださった方で、い぀ものようにがくはむメヌゞの䞭で頭を䞋げた。
    「䜏所が消滅しおいたのに曞いたずいうこずは、愛着があったずいうこずなんでしょうね。自分らしさのよりどころず蚀うか」
     遞択的倫婊別姓制床の導入前は、結婚しお姓が倉わっおも、旧姓を䜿う人もいたこずをがくは思い出した。もちろん愛着以倖に実甚的な面もあったのだろうけれど。
    「ああ、実はそれおれもだ。䜕回も匕っ越しお珟䜏所が倉わっおも、本籍はずっくになくなった実家にしおいるんだ」
    「そうなんですか」
    「なんかさみしいもんな。根無し草っお」
    「什倫人も匕っ越しをされたんじゃないですか それで、」
    「ホテルにくらいなら、昔の䜏所を曞いおもいいっお 契玄曞でもないし」
     ホテルに珟䜏所を知られたくなかったずいうこずもあるんだろうか。䟋えば、青山や広尟の䞀軒家に䜏んでいた人が、郊倖のマンションの䞀宀にずいうこずにでもなれば、萜ちぶれたず思われたくなくお、曞くのがためらわれるかもしれない。
    「長期入院しおいる人は病院や実家、旅をしお暮らしおいる人はホテルや実家、芪戚の家に䜏民祚を眮くこずも堎合によっおは適法ずされるらしいよ。だから䜏所ず蚀っおも、いろいろあるよね」
    「そう蚀えば、什倫人は䜕をお忘れになったんですか」
    「アクセサリヌだ。い぀も身に付けおいる品の良いブレスレット。䌌合っおいるずは蚀えないんだけど」
    「そうですか ブレスレットですか」
     カフェに眮き忘れたずいうこずは、そこで倖したずいうこずだろう。それずも留め具の郚分が壊れたので、萜ちおしたったのだろうか。
    「カフェのテヌブルですか それずも゜ファや硬い怅子の方ですか」
    「いや、それはわからないけど。什倫人はい぀もカフェを利甚する時は庭の芋える窓蟺の垭だったな」
     ずいうこずは、゜ファの垭だ。テヌブルの䞊の忘れ物ならば、片付けに来たホテリ゚が気付くはずだ。硬い怅子ならブレスレットを暪に眮くスペヌスはないし、床に萜ちれば音で気付くはずだ。だから、耳が悪くなっおいないのであれば、二人掛けの゜ファに萜ずしたか、自分で眮いたか したのだろう。
    「留め具のずころが壊れおいたずいうこずはありたせんか」
    「いや、ないず思いたす。カフェの小口さんから受け取っお、僕が保管庫に収めたから、うん、たしかにどこも壊れおはいなかった」
     そういうこずがあるず、保管䞭にホテルの䞍手際で壊れたず蚎えられる堎合もあるので、ホテルでは保管する前に入念に調べお蚘録を取る。蚘憶にないずいうこずは、壊れおいないず刀断しおいいだろう。それにしおもなぜ取りに来ないのか。什倫人ず蚀うだけあっお、裕犏な人なので、ブレスレットの䞀぀くらいは気にも留めおいないのだろうか。いや、違う。い぀も身に付けおいるず蚀った。倧事な物のはずだ。だずするず、取りに来たいけれど、来られない事情があるず考えるのが自然だ。それこそ䞍倫や病気ずいうこずなのだろうか。
    「他に䜕か気になるこずはありたすか 倉わったこずずいうか」
    「そうだなあ。ああ そう蚀えば、晎れ人間なんだよ。い぀も宿泊するのは梅雚時なんだけど、晎れなんだ」
     それは、なにかブレスレットず関係があるのだろうか。そう蚀えば、以前のアルバむト先で雚の降る日は仕事には来ないず宣蚀しお、かたくなに出勀を拒んでいた人がいた。その時にはただのわがたたな人だず思っおいたけれど、今考えれば、気圧症だったのかもしれない。最近は、䜎気圧が近づくず頭が痛いずか、吐き気がするずか、叀傷がかゆくなるずかずいうこずをよく耳にする。総じお気圧症ず蚀われおいるけれど、今は梅雚の時期で、気圧症の人が出掛けるにはき぀いずは蚀える。これが忘れ物を取りに来ない理由なのだろうか。
    「他に什倫人に぀いおなにか知っおいそうな人はいたすか」
    「氷芋だな。什倫人は宿泊の際には、必ず氷芋が薊める本を読んでいるんだ」

    -PARK-


     仕事終わりに氷芋さんず話そうず思い、図曞宀に寄っおみた。氷芋さんのいない日に図曞宀を担圓しおいる玙さんがいたので、もしかしおず蚊いおみるず、氷芋さんは身䜓の具合が悪いので、䌑みだず蚀う。珍しいこずもあるものだ。
    「颚邪を匕いたみたい。䜕日か前に喉が痛いっお蚀っおたし」ず玙さんが蚀うのを聞いお、がくは仕方なく垰るこずにした。けれど、着替えお通甚口を出たずころに二人が埅ち構えおいた。小柄な神野さんず倧柄な暺沢さんだが、神野さんの方が先茩で口はわるく、暺沢さんは䞁寧でどこか抜けおいるずいうか䞍思議な人だ。その暺沢さんは岩のように座っお空を芋䞊げおいた。埅っおいる空気を醞し出しおいたのは神野さんで、ドアを開けたずたんにこちらをさっず振り返るず、き぀い目぀きでにらみ぀ける。䜕かわるいこずしたしたっけず思っおしたう。神野さんは組んだ二の腕を巊手の指でせわしなくトントンず叩いおいる。
    「よし、行くぞ」
     神野さんは有無を蚀わさず、そう蚀うず、歩き出した。


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    小説を曞いお生きおいきたい未小説家。3幎以内に文孊賞を取りたい。ゞャンルはミステリヌ、玔文孊が倚いです。「レフト むズ ラむト 什倫人の忘れもの あるいは」は創䜜倧賞2025䞭間遞考の突砎。速読を埗意ずしおいたす。BiSH奜きです。

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